2007年07月03日

腑抜けども、悲しみの愛を見せろ 77点(100点満点中)

サトエリはキューティーハニーではなく、けっこう仮面をやるべき
公式サイト

本谷有希子による戯曲を元に書かれた小説を原作として映画化。要するに舞台劇の映画化と考えた方がわかりやすい。

特に屋内シーンにおける人物の出と入りなど、元が舞台である事がありありとわかる構成、展開、映像が各所に見られる事が、本作のまず端緒としての特徴だろう。

茶の間における、兄夫婦を中心とした掛け合いと、そこに出入りする姉妹の寸劇は、まさに舞台のそれであるし、そこに限らず、密閉された室内でシチュエーションを展開させ、扉やフスマの開閉によって境界と空間を表現し、更なる展開へと持ち込む手法が多用され、映画的なカット割りを用いながらも、舞台劇を鑑賞している様な気にさせられてしまう事となる。

妹が自室のカーテンを明け、光が差し込むとそこに姉の姿が浮かび上がるカットなどは白眉で、陽の光をスポットライトに見立てた舞台的な演出として強烈な印象を与え、姉の登場のインパクトを更に強調しており興味深い。

そうした映像、舞台構成によって展開する物語は、サイコキャラクターコメディとでも称すべき、これまた小劇団の演目としては定番のジャンルではあるが、それを映画、ドラマでよく見る俳優、タレントに演じさせ、映画として作ってしまった事に、本作の存在意義があるのだろう。

一応の主人公的存在である妹役の佐津川愛美は、これまでのドラマなどで見るよりも最も特異なキャラクターを演じ、どんどん印象が変わっていき物語を支配していく様は、類型的な腐女子キャラに留まらない、独自のメンヘルキャラとして確立しており面白い。

佐藤江梨子演じる姉は、バカで無能なくせに自意識だけは異常に高く、首から下だけに価値がある勘違いブス、という、本当に佐藤江梨子そのまんまの役を当てられているのはサトエリに対する悪意以外の何ものでもないが、それを拒否せずに"演じて"いる里枝理は、やはり自分の"面白さ"を自覚していないのだろうとつくづく思わされ、別の意味でも最高に面白い存在である。

予告編などではほとんど目立たず、本編においてダークホース的な暴走を見せて観客を驚かせ楽しませている、永作博美演じる兄嫁は、まず設定面において、極めて自然かつ歪んだ、つかみどころの全くないサイコキャラとして作り込まれている事がまず素晴らしく、それを歳をとるごとに若返っている魔女である永作が、その秘めた"おかしさ"を最大限に利用しつつ深い理解でキャラクターを演じている、その融合具合が秀逸。

これら、特に姉と兄嫁などは、最初からこの人に演じさせるために作ったキャラクターなのではと思わせるほどのハマり役であり、とても映画リメイクであるとは信じられないもの。それだけでも充分に面白いのだ。(姉より兄嫁の方がネタになるだろ、というツッコミも生まれるが)

ただ、ストーリー展開的に、伏線と収束があまりに丁寧過ぎるため、ナイフやバイトなど、オチが先読み出来てしまいそのまんまその通りに展開してしまうなど、拍子抜けに感じてしまう部分がある事も確か。

また、サトエリは体しか価値が無いくせに脱ぐべき時に脱がず往生際の悪さを見せ、本当に勘違い女だと痛感させられガッカリする。

と、気になる点もあるにはあるが、全体的な完成度は高く、観て損したと思う事はまず無い筈だ。機会があれば是非。



tsubuanco at 16:40│Comments(2)TrackBack(17)clip!映画 

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【腑抜けども、悲しみの愛を見せろ】2007/07/07年公開製作国:日本 監督:吉田大八原作:本谷有希子『腑抜けども、悲しみの愛を見せろ』(講談社刊)出演:佐藤江梨子、佐津川愛美、永作博美、永瀬正敏、山本浩司 和合澄伽は見てるこちらも恥ずかしい・・・ぞ。

この記事へのコメント

1. Posted by 咲太郎   2007年07月31日 18:11
澄伽役は舞台版の森尾 舞さんの方が色っぽさとエロスでは勝ちですね。
永作さん、確かに魔女ですね。
兄嫁はオーディションの審査員のひとり、吉本菜穂子さんが演じていましたが
彼女も良かったですよ。
うん、映画、面白かったっす。
2. Posted by つぶあんこ   2007年08月01日 17:44
サトエリの方が"勘違い女"ぽくてリアルではあります。

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