2007年07月22日

ゴースト・ハウス 39点(100点満点中)

大好きなのはヒマワリの種
公式サイト

サム・ライミ主催の製作スタジオにて、アジアンホラー『the EYE』のパン兄弟が手がけた、幽霊屋敷ホラー映画

原題は『The Messengers』だが、邦題にはスタジオ名がそのまんま使われているのはどういう意図だろうか。確かにわかりやすいが普通すぎて芸がないその邦題が、内容的にも芸のない本作の有りようを的確に表しているのが皮肉。(ワザとなら大したもんだ)

ストーリーは古典的幽霊屋敷ホラーの定番を忠実に守り、表現には『リング』や『呪怨』の近代和製ホラーの影響というか模倣が色濃く見て取れ、何も考えず観ていればとりあえず飽きる事はないのかもしれない。

だがまず、ストーリー的には大いに矛盾と手抜きが散在し、製作者も作中の"呪い"も共に、結局のところ何をどうしたかったのかがよくわからないもので、決して褒められた脚本ではない。

物語において最も重要となる、現われる幽霊の、後に明らかになる目的と、実際に取っている行動が全く一致しない事が、ストーリー面でのまず最大の難点。

これでは謎が明らかになった時に、「そうだったのか!」と驚き納得し恐怖するどころか、「おいおいだったら今まで何してたんだよ!」と突っ込んでしまうばかりで、作り手の狙いとは真逆の感情しか生まれず、謎解きの面白ささえ否定してしまっている。これは"不条理な恐さ"とは全く異なり、単に何も考えていないだけにすぎない事は言うまでもない。

また、最初からずっと引っ張られ続けているヒロインの謎に、物語の主軸と大きく関わるだけの意味付けがなされていない事も問題。弟にこだわる理由付けでしかなく、友人との写真を何度も見ていた事は結局関係ない。ロケットが開いて写真が出る事とも関係なく、そもそも何故開かなかったのか、何故開いたのかすら意味が全くなく、単に話の都合でしかない。意味ありげな描写にアレコレと恐ろしい予想を巡らせていた観客は拍子抜けである。

ヒマワリの種を撒いてから育つまでの期間がバッサリとカットされているが、その間に超常現象があったのかなかったのかもわからないし、人間関係にどの程度進展があったのかなかったのかもわからない。というか時間が経った様に感じられず、これまた話の都合で収穫期まで時間を飛ばしたかっただけに過ぎない。

作中における銀行マンの位置づけも中途半端だし、何故地下室が沼になるのかもわからない。父親がどの程度の怪我なのかもわからない。そもそも幽霊が見える人と見えない人の違いすら明確でない、と、情報、描写不足だらけで何が何やらである。ハッピーエンドの様相を呈されてしまうラストシーンには呆然とするばかりだ。

だが、たとえストーリーが適当でも、ホラー映画はとにかく怖がらせてくれさえすれば、とりあえずの楽しみは得られるし、その怖がらせ方が優れていれば、それだけで名作と評価される可能性もあり得るのだ。

スプーンに映る顔など、いい雰囲気を出せていると感じられる部分もところどころにありはしたが、やはり本作の恐怖表現の数々は、これまでのホラー映画の表現、展開の範疇を超えるものは無く、むしろ"どこかで見た様な"表現に終始するどころか、大きい音で無理矢理驚かせようとしているばかりの構成には、そのうち「いい加減うるせー!」と怒りの感情すら湧いてくる始末で、これは当然作り手の想定している"不快感"とは全く異なる感情であり、出来のいいホラーとは言い難い。

コマ落としで動く幽霊、天井をクモの様に這い回る幽霊、全身白塗りで実体化している幽霊、"女性と子供"の幽霊、壁のシミから浮き上がる幽霊、と、明らかに『呪怨』などの和製ホラーそのまんまの幽霊表現には、恐怖ではなく失笑が起こってしまう。

薄暗い廊下に立ちつくす幼児、の画面は『リング』と同一であり、発狂したオッサンがドアをぶち破るのは『シャイニング』まんまだ。他にもそうした表現、展開が目白押しで、まるでマニアック度判定テストの様相を呈している。

いい加減なストーリー、模倣ばかりの映像、うるさいだけの音、と、ダメなホラー映画の典型でも、それなりにしっかり作り込んでしまうと、それなりには観ていられるものになる、というサンプル的作品としては、作られた価値はあるのかもしれない。

ホラー初心者なら怖がれると思うが、面白いホラーは他にいくらでもあるので、とにかくホラーなら何でもチェックする、というレベルのマニア以外は特に観なくてもいいだろう。自己責任で。


tsubuanco at 16:32│Comments(0)TrackBack(9)clip!映画 

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