2007年07月10日

Genius Party - ジーニアス・パーティ 64点(100点満点中)

おじさんたちが腕組んで 一生懸命考えて
公式サイト

日本のアニメーション現場で活躍する7人のクリエイターを監督に迎え、制約ゼロという逆に難しい条件で自由に作らせた短編を揃えたオムニバス映画。

統一感も何も無くクオリティの差も激しい、それぞれが好き勝手に作った作品が羅列されるので、アニメーション好き(アニメオタクとは少し異なる)ならばとりあえず必見の一本ではある。以下各話ごとに。

『オープニング』
『ポポロクロイス物語』のキャラクターデザインで知られる原画マン、福島敦子による序章だが、オープニングなだけに時間は最も短く、その中でキャラクターのビジュアルと動きをしっかり印象づけ、それによって紡がれる"終わりなき世界"を表現しきったのは評価出来るが、これでしか見られない、という強力なオリジナリティに欠けるのが難点か。

『上海大竜』
マクロスからアクエリオンまで、変形合体ロボットアクションと青臭いドラマの両立を得意とする河森正治が監督だけに、単なるメカアクション、パロディに留まらず、良い意味と悪い意味の両方に"幼児性"を強調した作劇と描写が強く前面に押し出されているのが特徴。

鼻水の汚さや泣き声のウルサさに象徴される負の部分をあえてしっかりと描き、予定調和やカタルシスのみに終わらせない意地の悪さが良い。

『デスティックフォー』
通常のセルアニメ風映像ではなく、絵画、イラストをCGにて動かす手法がとられているのは、押井守やジブリ作品などで背景、美術監督を努めてきた木村真二が監督だからこそ。

ティム・バートンと日野日出志の中庸の様なキャラクターデザインにオリジナリティはないが、作品カラーもキャラクターもストーリーもパロディを基調としているのだから、それは問題ではない筈だ。

子供の冒険もの、超人ものなどのお約束を利用したネタの配置と、それをテンポよく繋げていく展開は心地よく、キモカワイイ絵面と相まって楽しい世界を作り出しており飽きない。

オチが松本人志コント風なのは、高須光聖が脚本を執筆しているからだ、とエンドクレジットで確認して更に笑えるオマケもあり。

『ドアチャイム』
不条理漫画を得意とするカルト漫画家、福山庸治がアニメ初監督を務める一品。

絵柄も内容も、いつもの福山庸治そのものといった趣で終始進められるが、やはり今あえてこの絵とこの話の作品を新作として見せられるだけの意義は感じられず、逆に80年代のOVA黎明期に作られた作品を観ている様な気になるのは意図的なものかどうか。

とにもかくにも福山庸治を知らなければ楽しむ事は難しいだろう。

『LIMIT CYCLE』
『アニマトリックス』の一編を担当した二村秀樹による本編だが、確かに映像的な作り込みにおける作業量は大変に感じるが、それをただダラダラと垂れ流すだけでは楽しめず、結局似た様な映像が延々と続いているだけ、との印象しか持たれない結果に。

主人公(?)の独白が延々と続くストーリー(?)にしても同様、特に中身のある事を言っているわけではないので興味は持てず、映像の空虚さと相まってひたすらに退屈な時間となってしまっている。

この手法を行うには、これでも時間的に長過ぎる、という観客の体感性を考慮しなかったのが敗因だろう。CM程度の尺なら面白く感じるのだろうが。

『夢みるキカイ』
シンエイ動画作品で活躍し、『マインド・ゲーム』の監督でもある湯浅政明によるこの一編が、全7話中では最もオリジナリティを感じられるものに。

まず最初に実写映像を見せておいて、そこからディフォルメの極地の様な簡略化されたマンガ絵で物語を展開する事で、虚構性と現実との地続き感を両立させる仕掛けは巧い。(が、最初に実写があった事など、ほとんどの観客はおしまいの方には忘れてるだろうが)

赤ん坊の冒険、というありがちなネタを用いて、現実を歪めた怪生物を様々に登場させ、"進行"そのものを展開として見続けさせるセンスは素晴らしい。

捕食と成長、死と誕生などのテーマもその中にしっかり盛り込まれているのだが、それはさして重要でもなく、やはりキャラクターの動きにこそ魅力があり、それが出来るのは非凡なる才能があってこそだ。

『BABY BLUE』
『カウボーイビバップ』『サムライチャンプルー』など、外人受けする"ANIME"の監督である渡辺信一郎が作ったのが、新海誠あたりを彷彿とさせる文字通り青臭い青春ドラマだった事がまず意外。

ディフォルメしないキャラクターデザインなため、動画的なクオリティでは少し苦しく感じてしまう面もあるが、画面構成とアクション、照明効果の使い方はやはり上手く、特に大したことが起こらない予定調和な物語でも、最後まで飽きずに観ていられるのは流石。

キャスティングまで含め、あえてベタな作風とした事はおそらく、最近もてはやされがちな当該ジャンルに対する挑戦、あるいは諧謔的な意図があると推測され、そうした視点で臨めばまた新しい面白さを見出せる筈だ。


以上7本で構成される本作、天才を堂々と謳いあげるタイトルは流石に気恥ずかしいが、最初にも書いたがアニメーション好きなら要チェックであり、そうでなくとも、興味があれば観て損したと思う事はまず無い筈だ。機会があれば。


tsubuanco at 17:41│Comments(2)TrackBack(0)clip!映画 

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この記事へのコメント

1. Posted by カ薬   2007年08月03日 21:34
私も、湯浅さんの短篇がこの作品中でとても楽しめました。
クレしん雲黒斉のラストやヘンダーランドの追いかけっこなどを見てると、この人の作画や演出は人を楽しませることができてるなぁ、と思ってしまいます。


ところでつぶあんこさんのアニメオタクとアニメーション好きの線引きとは如何なるものなんでしょう…
2. Posted by つぶあんこ   2007年08月07日 21:50
両方兼ねている人もいますし、明確な線引きは無いですけど、大体のニュアンスで感じ取っていただければ幸いです。

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