2007年08月09日

プロヴァンスの贈りもの 54点(100点満点中)

水のないプール
公式サイト

小説『南仏プロヴァンスの12か月』シリーズで知られるピーター・メイルと、プロヴァンス在住の映画監督リドリー・スコットの共同原作による、プロヴァンスを舞台としたヒューマンドラマ。

主演は『グラディエイター』に続きリドリー・スコット作品の主役を張るラッセル・クロウ。同じ監督、同じ俳優でここまでカラーの違った作品を見せられるにつけ、両者の引き出しの多さに感心させらされる。

異なる世界の住人が出会い衝突してドラマを生む、というタイプの作品を多く作っているリドリー・スコットだが、本作においても同様に、イギリス在住の敏腕トレーダーがプロヴァンスの農園地帯で現地の女性と出会う、という大筋で物語が進められ、文化の違いおよび人間としての立ち位置の違いなど、あらゆる人間関係に設定された差異によってストーリーが展開していく事となる。

と言っても、一応ヒロイン的役割である現地女性(マリオン・コティヤール)との恋愛劇は、実は本作のメインとはならず、あくまでも主人公の心情や生き方に変化を起こさせるための一要因として、他の事物と並列に扱われているので、予告編の印象で受けるラブロマンスコメディを期待すると、少し拍子抜けに感じるかもしれない。

重点が置かれるのは、人間のクズ的金の亡者だった主人公が、プロヴァンスの風物や住人、あるいはそこで過ごした過去の追想などに少しずつ影響され、人生に本当に大切なものを見出していく、という展開の方であるが、そちらにしても、あらゆる要素がてんでバラバラに進んでどれも中途半端な描写に留まり、ドラマとしてよく練られたストーリーとは言い難い。

農園の管理人との軋轢も、隠し事の権利配分も、売却しようとしていた顛末も、一体どう片付けていくのか、と観客が興味を抱いている事がどれもウヤムヤに適当に丸く収められてしまい、何か起こりそうに思えた従妹と友人のちょいエロシーンも結局どうにもならないと、あまりに適当すぎる。幻のワインも結局何の展開にもならない。

そもそも、何も生み出さない賎業で金を稼いだ大金持ちが心も満たされて幸せになる話など、面白がれと言う方に無理があるのだ。

が、そんな適当さこそが実はプロヴァンスという地域のお国柄、魅力であり、そこに人は"癒し"を感じるのだ、と言わんばかりに自信たっぷりに突きつけられる本作、そうした空気に観客は取り込まれてしまい、観ている間はその曖昧さ、いい加減さこそがむしろいい塩梅の味となり、ヌルくマッタリした楽しみを得られてしまうのだから侮れない。

これはやはりリドリー・スコット一流の演出、構成力によるものであり、ラッセル・クロウをはじめとする名優達の魅力、およびプロヴァンスの風景が持つ魅力を充分に引き出せているからに他ならない。

主人公と友人が、まず序盤で女性の胸の谷間に釘付けとなる描写を用意しておき、続いて中盤では主人公がヒロインの尻に釘付けとなり、後半では友人が従妹の尻に釘付けとなる、と、ちょっとした小ネタが構成の中に組み込まれている面白さなど、細かい部分で笑わされたり納得させられる部分も多く、観ていて飽きる事はまずない筈だ。

とは言え、サーチライトではなく20世紀FOXレーベルで製作されながら本国で大コケし、日本ではFOXジャパンが配給から手を引いてしまう程の惨憺たる評判となってしまうのも仕方ないと頷ける、監督や役者の名前から期待されるだけの仕上がりには至っていないのも事実。レンタル待ちで充分か。自己責任で。



tsubuanco at 17:43│Comments(0)TrackBack(6)clip!映画 

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