2007年08月20日

遠くの空に消えた 9点(100点満点中)07-230

腰を下ろせば牛のフン
公式サイト

『世界の中心で、愛を叫ぶ』のヒットで一躍メジャーとなった、行定勲監督による最新作。今回は原作無しのオリジナル作品として、脚本も行定勲自身が手がけている。

すなわち、まずベストセラー原作の名前ありきでヒットした『世界の〜』等とは異なり、行定勲のクリエイターとしての能力、資質が本当に試される作品であり、当人としても作家性を存分に発揮出来るまたとない好機と言えるのだ。

だが、と言うか、やはりと言うか、本作、行定勲の備える作家としての能力の低さ、センス、資質の無さがありありと露呈した、どうにも評価し難いものに仕上がってしまっており、何とも困らされる。

予告編を観る限りでは、少し前の時代の、自然の多い田舎を舞台とし、子供達の出会いとちょっとした冒険と、そこで起こる小さな奇跡と小さな感動、そして成長、といったジュブナイル作品の王道的な物語が、ノスタルジックに叙情的に展開する、子供を中心とした家族向け映画、といった印象を受け、ダイジェスト的に見せられる"それっぽい"シチュエーションの断片には、少なからずの期待を抱かされもした。

のだが、本作、子供達の物語だけでなく、大人達の物語も同じく大きいウエイトで描かれている、というのが、まず予告の印象とは全く異なる部分だ。

もちろん、映画の予告には嘘が多く、それと違うからダメ、という事は全く無い。だが本作、本編の完成度が、予告のそれに比べて明らかに劣りすぎている事は大問題である。

ストーリーも、ビジュアルイメージも、全てがどこかで見た様な、どこかから借りてきた様なもので形作られる物語に、目新しいものは何もない。それでも、定番を丁寧に描きさえすればある程度の面白さは得られる筈ながら、本作は何一つ丁寧に描いてすらいないのだから救い様がない。

UFOや星にまつわる子供達の物語、空港建設に関わる大人達のドラマ、不本意な結婚に悩む美人教師のエピソード、と、大別されるこれらのストーリーのどれもが、中途半端な描写、進行に終始し、しかも相互の関連も不充分にすぎる。二時間半というあり得ない時間をかけてどれもこれもと詰め込んでおいて、全てが詰め込みきれずに欠落している状態なのだ。

例えば、女教師のエピソードなどはそもそも完全に無くても本筋には何の影響も与えないし、無理矢理挿入している割には、必要な情報がかなり欠けているため、そもそもの意味が理解出来ないのでは、何のための割り込みなのかがわからない。何故結婚しなければいけないのか、メガネの男は何者なのか、最低でもそれくらいは述べておかない事には伝わるわけが無い。オマケにオチもどうしようもないときては、本当に無意味でしかない。演じる伊藤歩も大迷惑だ。

村の隅っこにたむろするマヌケなチンピラ達、という、いかにもありがちなキャラクターの是非はともかく、そのイメージを貫き通せず中途半端に世界も作風もぶち壊す展開とし、全てを台無しにしている上に、子供側にも大人側にも絡む必然性が無く、宙に浮いた状態としてこれも中途半端に終わっている。演じる田中哲司も大迷惑だ。

大人からバカにされている知的障害の青年が、主人公を弟と思い込んで接触し、その純朴さを主人公達も受け入れて仲良くなる、これまたテンプレートなキャラ、展開だが、これも結局は物語の本筋を面白くする助けとなるわけでもなく、雰囲気に貢献すると思えばやはりそれをぶち壊す展開が待ち受けていると、どうにも受け入れ難い。演じる長塚圭史も大迷惑だ。

一応の主人公となる亮介(神木隆之介)にしても、もう一人の主人公である公平(ささの友間)との扱いのバランスが悪いため、どちらも中途半端な描写に終わってしまい、ためにどちら側にも感情移入出来ず、当然それ以外の人物にできるはずもなく、世界に入り込む事が出来なくなっている。

この二人のストーリーにしても、正反対の二人が対立から友情へと進展していく様を全く描けておらず、その大前提が無いものだから、他の子供達との団結へと展開するくクライマックスが全く盛り上がらないのだ。演じる(略

一応のヒロインでありマドンナであるはずの、ヒハル(大後寿々花)の存在は更に不安定であり、そもそも最初の登場シーンでは、神秘的な謎を秘めた不思議少女、という立ち位置で、ために学校シーンでは扱わずに通し、彼女自体がそもそも何者なのか、といった興味を抱かせておきながら、それに対するフォローは何も無く、唐突に入院してそのシーンで唐突に母親が登場し、何の感慨も無く現実の存在に堕してしまう。本当に何も考えず、"それっぽい"キャラを出したかっただけとしか思えない。オマケに出番もほとんど無く、予告で見られるだけでほとんど全部とあってはどうしようもない。演(略

埋まった靴にしても、その状態があり得ない事はともかくとして、靴が埋まった事が物語として何ら必然性がない事は致命的であり、伏線にもオチにも何も無いのだから始末が悪い。

子供から大人へと少しずつ変わっていく少年期において、性の問題を夢精のシーンなどで表したのは良いとして、その事がその場だけに留まって後に続かず、少年二人と少女一人の関係における性の問題など、必然と言える展開に繋がらないのなら、何のためにそもそも夢精させたのかすらわからない。片想いの同級生の存在にしても、夢精の材料でしかないのはあまりに半端すぎる。

大体、主人公の回想形式なはずの本編で、謎の二人の老人が客観的に村を見ているとは、これは一体誰の視点なのか、もはや何が何だかである。その老人も後半には全く出てこず、とことん中途半端だ。

田舎の風景をノスタルジックに描く、という側面にしても、近作『天然コケッコー』などを観るまでもなく、田舎の風景は飾らない素朴な自然そのままだからこそ観る価値があり、それをそのまま切り取って劇場のスクリーンに映し出してくれるからこそ、その世界に入り込む事が出来るのだ。

本作では、それを完全に取り違え、ゴテゴテとセンス無く飾り立てた"作られた世界"を、「このオシャレセンス、どうだ!」とばかりに堂々と見せつけている勘違いぶりである。行定勳のビジュアルセンスの無さが、素材を台無しにした村の風景に如実に現われている。子供達が「ワーイ」と叫んで走る様など、最初はワザとやっているのかと好意的に観ていたが、どうやら単に発想の引き出しが貧困なだけだった様だ。

必要な説明や段取りはことごとく省略しているのに、乱闘や結婚式などどうでもいいシーンは延々とダラダラと流し続ける、明らかに編集の取捨選択を間違え、その上二時間半の長尺と来てはどうにもならない。根本的にセンスが欠如しているとしか思えない。

いちいち述べいてたら本当にキリがない、全てがツッコミどころ、ダメ出しどころの連続に終始し、子供から大人まで、芸達者で魅力的な俳優をふんだんに揃えておきながら、いくらでも面白く出来るネタを並べておきながら、よくここまでつまらなく退屈なゴミに仕上げたものだと呆れ返る他無い。前半にやたらと登場する牛のフンは、この映画そのものではないか。いや、牛のフンは肥料になるだけマシか。(その牛のフンも、前半ではやたらと強調する割には後半は全く登場せず、これまた中途半端)

「これはファンタジー」だから、などと、理不尽や荒唐無稽の逃げ口上として用いる輩がいるが、それはファンタジーというジャンル、概念を見下し、バカにした愚言に他ならない。『指輪物語』などを読めば一目瞭然だが、現実とは異なる世界観のあれこれの全てには、いちいち理論、理屈による背景が設定され、全てが法則として説明出来る様に周到されているものこそが、本当にファンタジーと呼べる作品なのだ。

子供向け、というジャンルも同じく、子供向けだからいい加減で構わない、などという事はあり得ず、子供向けだからこそ、ちゃんとしたものを作らないといけない筈が、本作はそもそも子供を見下した子供騙しに終始した上、どの層に見せたいのかすら不明な状態になってしまっている。コンセプトの段階からどうしようもないのだ。

出演者の熱心なファンであっても、それぞれの出番さえ中途半端なため、楽しみきるのは難しいだろう。男児の生尻を見たい変態さん以外には鑑賞の価値は全く無い、ウンコ以下の映画にすぎない。もう行定勲は映画を撮らなくていい。


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この記事へのコメント

1. Posted by くまさん   2007年08月24日 00:44
5 絶対観ませぬ
2. Posted by つぶあんこ   2007年08月24日 14:36
テレビで放送される機会でもあれば、ネタ用に観ておいた方がいいかもです。
3. Posted by ケント   2007年09月02日 10:10
つぶあんこさん
この映画は素材は良いのですが、組み立て方が目茶目茶でしたね。あなたの感想は実にわかり易い、全く同感であります。
4. Posted by ドッピオ   2008年02月03日 15:08
なんで行貞勲って人気監督なんですかね?
5. Posted by つぶあんこ   2008年02月04日 17:45
『世界の中心〜』がヒットしただけでしょう。
6. Posted by kimion20002000   2008年05月21日 00:57
ウンコ以下の映画か・・・。
よくぞ、言ってくれました(笑)
僕も、突っ込み始めて、もう、あとは(略)としたくなりますよ。
これは、映画学校の反面教師としてのテキスト素材にしたほうが、いいんじゃないかなぁ。
7. Posted by rhforever   2008年10月26日 20:23
 古い映画にコメしても思うんですけど、あまりに同意したので。
見てる最中のイライラ感が感想読んで吹き飛びました。サンクス。

ただ、
>出演者の熱心なファンであっても、それぞれの出番さえ中途半端なため、楽しみきるのは難しいだろう

 ただ、大後劣化前の最後の姿として、保存する価値はあると思います。
8. Posted by つぶあんこ   2008年10月27日 15:26
セクロボとこれと、どっちが後に撮ったんでしょうかね。
9. Posted by わとそん   2008年11月08日 00:00
 WOWOWで見ました。
 まとまりとか整合性より自分の見たいイメージを羅列して作った映画のようで、そういうスタンスでの作品作りですからそれぞれの素材への突込みが中途半端なのもある程度作り手も承知かもしれません。それはそれでいいのですが、あまり魅力的に描けてなかったのが痛かったですね。でもまあつぶあんこさんが酷評するほど悪くはないかな。

 あと感想とは直接関係ないですが、"「これはファンタジー」だから、などと、理不尽や荒唐無稽の逃げ口上として用いる輩がいるが、(中略)全てが法則として説明出来る様に周到されているものこそが、本当にファンタジーと呼べる作品なのだ。"というところはちょっと疑問。
 ある種の常套句のようにいわれるファンタジーへの言及なんですが「指輪物語」などのような世界の作りこみを重視するもの以外のファンタジーもあると思うし、逆に言えば"理不尽や荒唐無稽"をバカにした愚言ともいえると思います。"理不尽や荒唐無稽"は必ずしもバカにしたものではないということはつぶあんこさんならわかるかと思うのですが。

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