2007年08月28日

Life 天国で君に逢えたら 45点(100点満点中)

稲村ジェーン
公式サイト

若くしてガンでこの世を去ったプロウィンドサーファー・飯島夏樹氏の自伝的小説『天国で君に逢えたら』および闘病エッセイ『ガンに生かされて』を原作とし、実話を元に脚色と創作を加えたストーリーとなっている。

ために、戦績や居住地等、事実と異なる部分がそれなりに存在するが、大切なのは、実話を通して伝えたい事は何なのか、どの部分に他人を感動させるだけのものがあるのか、といった要素であり、端々の違いを殊更に気にする事はないだろう。

本作、メディア宣伝の方向性などを見るに、当事者に気を遣った奇麗事や自慢話に終始する類いの、関係者の自己満足的な作品になってしまうのかと不安だったが、実際に仕上がった作品は、大衆向けの娯楽映画として、無難で卒のない出来となっており、ひとまずは安心である。

まず序盤から前半にかけては、主人公夫妻(大沢たかお、伊東美咲)の若き日の苦労と成功を一通り描いて、競技者としての飯島夏樹の有りよう、それを支える妻の有りようを、わかりやすくディフォルメし、それと同時に、題材の一つであるウィンドサーフィンを、人生を賭けるに値するものであると観客に伝えるべく、競技としての面白さを前面に出したレース場面として描き、観客をまず惹きつける事には成功している。

このレース映像、盛り上がるカットに限って画質が悪いのが困りものだが、本物を撮っているのだと思えば気にならず、むしろ臨場感や迫力を味わえて、ウィンドサーフィンに対し特に興味が無くとも目を離せなくなってしまうのは怪我の巧妙か。前半のクライマックスとなるその競技シーンと、そこから繋がる結婚式シーンは、まるでこのまま映画が終わってしまうかの様な盛り上がりとハッピーエンドぶりを見せ、「おいおい飛ばし過ぎなんじゃないの?」と不安にさせもするが、やはり掴みとしては良く出来ており、後半の展開にギャップと背景を与えるためにも、この盛り上がりは必要と言える。

後半から展開する闘病の描写は、極めて類型的でステレオタイプなものが多いが、広く受け入れられる作品にするためには、その方向で正解だろう。しかしあまりに工夫がなく、どこかで見た様なお決まりの展開に終始するのでは物足りない事も確かで、もう少し、実話ならではの独自性が欲しかったとも思える。

また、末期ガンなのに全力疾走したりウインドサーフィンを敢行しジャンプ成功などは、あり得なさに興醒めするおそれがあり、かなりギリギリの展開ではある。主人公を轢きそうになったトラック運転手が、お決まりの「バカヤロー!」ではなく、わざわざ降りて「大丈夫ですか!?」と駆け寄ったのには意表を突かれたが。

物語が始まってから10年以上経っている筈なのに、夫婦が二人とも少しも老けなかったり、主人公が死にかけなのに全然そう見えなかったりと、日焼けでもキレイに見えるメイクはしっかり施しながら、リアリティを感じさせ観客の感情移入を生むためのメイクは拒否しているあたりもいただけない。伊東に老けメイクをさせたくない事務所の横槍だろうか。それなら逆に、10年前のシーンではもっと若作りさせるべきだろう。

また、いくつかの構成的な仕掛けに関して、例えば目玉焼きを使っていろいろと表現するくだりがあるが、まず序盤の苦労時代で、自分の皿にだけ目玉焼きがある事に気づく主人公、という描写が、それぞれの皿をカットを割って見せているため少しわかり辛くなっており、これならカットを割らず、主人公主観で視点を移動させる映像にした方が伝わりやすくなるし、その目玉焼きが後半に再登場する、家族全員での食卓シーンにおいても、一瞬でもいいから家族全員の皿に目玉焼きがある事をはっきり映し、「お父さん頑張った」と表現すると同時に、そのお父さんだけはもう目玉焼きを食べる事が出来ない、と示すなどすれば、目玉焼きが持つ意味もよく伝わり、観客の感情を自然に煽る事が出来るのだが、映像としてどうにも意図を絞りきれておらず残念に感じる部分が、ここだけでなく他にも多い。妻がベッドルームに入る展開を二回繰り返しているのも同様、今ひとつ伝わり辛い。

が、悪い意味での韓流の様な、鼻につく様なお涙頂戴な描写、演出を用いず、感動の押しつけではなく観客の内面にあるものと作品内とを同一化させ、それぞれの感情を動かされ感動する、そうした狙いで作られている本作には、他人の不幸を食い物にした様な嫌悪感はなく素直に好感が持て、現実の飯島氏やウインドサーフィンという競技にも興味を抱ける様になっており、作り手の狙いはとりあえず成功していると思われる。何より、いきなり不治の病になってもツッコミどころにはならないのが、実話ベースならではの強みだ。

少しだけ特殊な境遇の人物を扱っている事以外、特段に特色のない作品ではあるが、嫌みなくスッキリと観終えられる、娯楽作としてはまず及第点だろう。興味があれば。


余談:
『役者魂!』と本作ともども、道楽が仕事な父親に放置され孤独を感じるお姉ちゃんを演じる川島海荷実際に長女らしい)は、台詞回しはまだ不安がつきまとうが、表情の見せ方が素晴らしく、子供らしさと美少女としての凛々しさが共存するビジュアルが見事な逸材。特に本作では健康的に日焼けした姿で通しており、より魅力を発揮出来ていたのではないか。
映画にしてもドラマにしても、こういう子役をもっと採り上げるべきなのだが、事務所の力関係でキャスティングが決まる芸能界の現状では難しいか。



tsubuanco at 14:34│Comments(0)TrackBack(16)clip!映画 

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