2007年08月24日

ラッシュアワー3 83点(100点満点中)

必殺剣劇人
公式サイト

ジャッキー・チェン、クリス・タッカー主演、ブレッド・ラトナー監督による、刑事アクションコメディシリーズの第三弾。

今回は敵役として真田広之が出演している事が大きな話題となっているが、もう一人、日本人俳優として出演している工藤夕貴が全く取り上げられていないのはどういう事か。まあ、知らずに観た方が驚けるかもしれないが。

驚きといえばそれよりも、1作目(99年)ではブッサイクなガキだった中国大使の娘が今回再登場し、スタイルのいいアジアン美女として成長した姿を披露している事の方が、細かいストーリーを知らずに観に来た者にとってはサプライズだろうか。

この大使の娘を演じているのは、1作目で同役を演じていた子役とは別人の、中国映画『孔雀 我が家の風景』の主人公である長女を演じたチャン・チンチュー。『孔雀〜』では中国の一般人らしくお下げ髪と地味な服装でも魅力を放っていたが、アメリカとフランスを舞台とした本作においては、アジア人らしさを強調するためのオカッパ髪と、細身なのに出るところは出ているスタイルの良さを主張する、シンプルながらスタイリッシュなファッションにより、また違った魅力を見せ、あまつさえ少しではあるが格闘アクションも披露して、世界進出へ向けてのアピールは万全だ。

香港編だった2作目はあまり関係なく、1作目で助けた中国大使父娘を襲う新たな敵と戦うストーリーが今回のメインとなるが、本シリーズにおいてはストーリーの伏線だのドラマだのはハッキリ言ってどうでもよく、スピーディーでハイテンションなドタバタアクションコメディを途切れる事なく飽きさせず持続させる、最初からクライマックスな娯楽に特化しきった姿勢こそが、最大の楽しみどころである事は言うまでもない。本シリーズを観て荒唐無稽だのご都合主義だのを批判の言葉に用いるのは、映画鑑賞に未熟なシロウトさんにすぎない。

これまでの二作では、主人公の片割れ、黒人警官カーターの空気の読めないウザさによって、共感や感情移入を阻害されがちだったが、今回、能天気でお色気に弱いキャラクター設定はそのままながら、そのウザさがかなり軽減され、オモシロ黒人キャラとして絶妙のバランスを保ってコメディリリーフとしての役割を充分以上に果たしている、前二作より素直に作品に入り込め、主人公達を応援したくなる、最大の理由はここにある。

また今回、後半からフランスが舞台となるため、英語、中国語、フランス語、そして真田広之の存在により日本語と、多数の言語が入り乱れる内容となっているが、その点をストーリー進行やキャラクター立てだけではなく、コメディとしても活用している、老シスターを交えたブラックな尋問シーンは抱腹絶倒モノだ。こうしたベタだが確実に笑えるネタを随所に配置し、マジメとコメディが交互にテンポ良く繰り返される事で、観客を最後まで飽きさせない様にしている、サービス精神に満ちた構成は娯楽映画として上質。

フランスが舞台となる後半、フランス警察とタクシー運転手が重要な役どころとなる展開は、明らかにリュック・ベッソンの『TAXi』シリーズを意識したパロディネタだろう(黒づくめ集団とのチェイスシーンなど、『TAXi3』の冒頭そのまんまだ)が、そんなお遊びにロマン・ポランスキーをキャスティングする豪華さも侮れないし、人種を越えた友情と共闘を実はテーマとしている本シリーズにおいて、異人であるフランス人にオイシイところを持って行かせる、終盤のドンデン的な展開は、ギャグとも感動ともどちらとも取れる上手い締め方と言える。

工藤夕貴はあまりに老けた外観にまず驚かされはするが、ジャッキーとタイマンで絡むアクションシーンを熱演し、時間的な出番は少ないながらもその末路まで強烈なインパクトで存在感を放ち、本作に欠かせない役どころとなっている。だけに、宣伝に全く使われない意味がますますわからない。が、そもそも彼女は何者だったのか、という事がほぼわからないまま退場してしまうのは、観ていて大して気にはならないが、少しいい加減すぎるとも思える。

真田広之は前半と後半の双方に見せ場となるアクションシーンを用意され、特に後半クライマックス場面では、日本刀を用いた剣劇をジャッキーと繰り広げるという、ファンならずとも熱くなってしまうアクションシーンはそれだけで見ものだ。オマケにエッフェル塔の鉄骨の上という、不安定極まりない場所でのアクションという、いかにもハリウッド大作らしいシチュエーションも用意され、これはストーリー的にも、二人の決着を直接的に付けないためのお膳立てとして有効である。

この剣劇アクション、ジャッキーの近作『THE MYTH/神話』において、韓国人俳優のチェ・ミンスと戦うアクションシーンが、崖っぷちで綱を支えながらの剣劇だった事を考えれば、よりその意味を味わう事が出来るはずだ。

監督のブレッド・ラトナーが好んで用いる、真上からのショットを多用している事で、高所におけるアクションの臨場感を観客に上手く伝えていたのはいいが、一方で同監督は、アクションのカットを細かく割りすぎる嫌いがあり、それがジャッキーアクションの良さを殺しがちになっているのが、本シリーズ最大の問題点で、それが今回も健在なままな事は大いに残念だ。クリス・タッカーはともかく、アクションのプロであるジャッキーや真田広之の体捌きは、もう少し落ち着いた画面で見せてくれてもいいはずだ。

本作、前二作での問題点の一部も解消されつつ、シリーズとしての連続性も活かした、シリーズ中最高傑作と評して問題ない、良質の娯楽作品に仕上がっている。少なくとも1作目くらいは観ておいてからの方が、全てを楽しみつくす事が出来るが、知らずにいきなり観ても、問題なく飽きずに楽しめる筈。ファンならずとも機会があれば。




tsubuanco at 16:56│Comments(2)TrackBack(15)clip!映画 

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1. Posted by 爽泉   2007年08月28日 09:27
ジャッキーが日本刀で真田広之は中国の剣を使ってましたね。
2. Posted by つぶあんこ   2007年08月28日 12:39
そうですね。

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