2007年08月25日

伝染歌 1点(100点満点中)

スズメが三羽とまってた
公式サイト

『着信アリ』シリーズに続く、秋元康の企画・原作による都市伝説ホラー映画。秋元康プロデュースによるアイドルユニット、AKB48のメンバーが、本人役を含め出演している事が、本作の一番の売りらしい。

AKB48メンバーの大半ははそのままAKB48メンバーの役で、一部は一般の女子高生の役として出演、という図式は、『スケバン刑事II』において、吉沢秋絵が存在しないおニャン子クラブが登場する回に似ている気もする。

作中にて、AKB48がライブを行うシーンが登場し、オタク達がそれに熱狂する様をキモく見せていたりもするが、これが物語とほとんど関係なく、主人公?らしき雑誌記者(松田龍平)と、ヒロインの一人?っぽい少女(秋元才加)との出会いの場ではあるが、その事はその後の展開に特に意味を与えず、単にライブシーンを入れたかっただけというのが正直なところだろう。

そうした、AKB48及び今回の題材となっている歌を前面に出し、あわよくばヒットさせたいという思惑はありありと感じ取れるものの、肝心の映画としての面白さは全く感じられない、駄作と呼ぶのも憚られるゴミの様な作品に終わっているのが、本作の実態である。

何よりこの映画、全く怖くない

直接的な恐怖、衝撃を与える、人死に描写のほとんどが映されていない事が、大きな要因の一つである。冒頭でまず観客を驚かせて世界に引きずり込まなければいけない筈の、最初の人死にシーンからして、全く見せずに次へ話を進める有様で、いきなり出鼻をくじかれて観客はドッチラケとなり、今後の展開に全く期待できない状態となってしまう。掴みから滑っているのだ。

その後も、伝染と謳う割には大して人は死なないのだが、その死ぬ瞬間をほとんど別のショットで誤魔化し、時には台詞だけで「〜が死んだ」と済ませるなど、観客が見たいものをことごとく見せない。これはおそらくはレイティングを考慮してのものと思われるが、肝心の見せ場が無くなってしまえば本末転倒だ。誰が喜ぶというのか。

人死に描写ともう一つ、和製ホラーの特徴である、幽霊や呪いの恐怖を見せる演出もほとんどなく、登場しても「怖がらせよう」との意図が見えないただ出ているだけだったり、狂気を見せる演出も極めて中途半端で、何をどう見せて怖がらせたいのかがわからず、むしろ寒さにドン引きしてしまうお粗末さだ。校長が演壇でいきなり叫ぶくだりや、ベッドで叫ぶヒロインとその叔母(木村佳乃)など、何をどうしたいのかが全くわからず笑う事すら出来ない始末だ。

ただ、皮肉な事に、映像的な画面構成などは、結構考えて作られており、背景や風景とそこに配置される人物を実際以上に魅力的に見せ、手前で話が進んでいる画面奥に、後のヒントとなる様なものが映っていたり、あるいはカットの時間的順逆を意図的にバラバラに構成し、伝えたい事と意味をより強調したりと、考えられてはいるのだが、それが映画を面白くする方向に活かされていないのだから仕方ない。屋内を人物が移動する様を真上から追うショットなども、そうする意味が全く感じられず、明らかに時間と金と手間の無駄でしかない。

また、一度シーンを進行させ、そこから少し戻って別の視点で同じシーンを繰り返す、という構成が何度か使われているが、これが、後からわかる事に特に驚きが無く、ただ単に二回繰り返しているだけとしか感じられないものであり、脚本段階からあったのかは不明だが、明らかに不要な手法だ。

女子高生、携帯電話、カラオケ、都市伝説と、安易な題材を並べた原案は『着信アリ』と同レベルで、それに倣って上手く転がせば通俗的にでも面白いものは出来そうな筈ながら、ストーリーが完全に破綻しきって物語と呼ぶ事すら憚られるもので、どうしてこれが通ったのかすら理解出来ない惨状なのは、脚本を担当した羽原大介の、脚本家としてのセンス、能力の無さによるものが大きいと思われる。

『パッチギ1&2』『実写ゲゲゲの鬼太郎』と、散々な駄作を連発している氏だが、今回は輪をかけて端にも棒にもかからない、アイドル映画としても論外なストーリーには呆れ返るほかなく、もはや笑いを通り越して怒りすら覚えるほどだ。

歌で人が死ぬと言っても、聞いたら死ぬわけではなく歌うと死ぬのなら、歌わなければいいだけの話である。これで話は終わる。めでたしめでたし。そもそも伝染してすらいない

そもそも呪い(?)の元凶は自殺ではなかったわけで、だったら犠牲者が自殺するのは矛盾している。どんでん返しを狙って設定が破綻しては本末転倒だ。

「トンネルを抜けると発狂する」の言葉が放置されたままで無意味。そもそもトンネルを駆け抜けるシーンが意味不明で、その後のチューどうこうの会話と全くつながっていない。ブツブツ言ってるのが"発狂"なのか?と思わせて違ったり、本当に何をどうしたいのかが全く伝わってこない。

その様に、通常と狂気の違いが明確に描かれていないので、呪いによっておかしくなったのか、それとも最初から狂っていただけなのかもわからない。これは敢えて曖昧にするという狙いではなく、単に書き分けられていないだけである。

と、全てが意味不明、全てが引きどころに終始し、ストーリーが完全に崩壊しきっているため、最後の最後に見せられる、お約束のような終わり方も、全く驚きは起こらず「あーはいはいそうですか」としか感じられないのだ。いやむしろ、延々と駄作を観続けさせられる苦痛から開放された事がハッピーエンドだ。

そうして物語をちゃんと描けてすらいない状態で、「美しい国」批判だの、靖国に対する揶揄だのといった、左巻きステレオタイプの思想をところどころに混ぜ込んで、メイン観客層である若い層に主張しようとしている、そのやり口はあまりに稚拙で底が浅く、さすが『パッチギ』の脚本家様である。ここまでくると、脚本家としてだけではなく人間としてのレベルすら疑われるというものだ。

AKB48のアイドル達の、女子高生姿や浴衣姿などの、裾から覗くチラリズムや、メンバーの一人、小嶋陽菜がレズっぽい役設定にされているなど、エロ視点での見せ場はある程度存在するが、そんなオマケは本筋が面白くて初めて意味を持つのだ。

よって、出演者のファンならとりあえず一回くらいは観ておいても構わないかもしれないが、それ以外の人類にとっては何の価値もないゴミクズでしかない本作。Z級ホラーを好んで観る様な好事家でも辛いに違いない。忘れてよし。


蛇足:
当の"呪いソング"、実は松本伊代が歌っているというのが笑いどころなのかは知らないが、どうせなら高井麻巳子に歌わせたならネタとして買ってあげたのに。どこまでも中途半端だ。



tsubuanco at 18:20│Comments(15)TrackBack(2)clip!映画 

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この記事へのトラックバック

1. 伝染歌  [ 空と海の出逢う場所 ]   2007年09月03日 18:58
2  15人ほどの客席の中、中1くらいの4人組の少年たちが、 「俺、ホラー映画初めてなんだよ〜」「俺も〜」 と、話していた。 う〜ん、初めてのホラーと思って来た彼らには不幸だったかも知れん。 だってこれ全然ホラーじゃないんだもん。 じゃあ何?と尋ねられると、....
2. 伝染歌 と スパイダーウィックの謎 感想。  [ **Plastic-doll** ]   2008年04月23日 21:11
*若干のネタバレあると思うので注意。*

この記事へのコメント

1. Posted by よゆぽん   2007年08月27日 01:29
今日はコチラにコメ。

>実は松本伊代が歌っている
そうなんですよね。鼻声伊代ちゃん。おもわず笑っちゃいました。

>高井麻巳子
その場合、ゆうゆも一緒にうしろゆびさされ組で。

おニャン子ネタには音痴の立見里歌に歌わせて聴いたものが狂うというのもアリかも。でも、AKB48とは世代が違うのでネタにもならないか・・・
2. Posted by (-_- )ノ⌒   2007年08月27日 07:35
1 つかあなたはフラガール絶賛してなかったでしょうか?あれも脚本は羽原ですよ。。都合のいいときはそのことを忘れるんでしょうか?そういうのは残念。。
3. Posted by kame   2007年08月27日 09:40
この映画か「遠くの空に消えた」か「夕凪の街〜」を見ようとして、結局「夕凪〜」を見たのですが、非常に良い映画で満足して帰ってきました。
しかし後の2作は散々な点数だったんですねぇ。「夕凪」にして正解でした。
でもここまで点数が低いと却って見たくなってしまうのが困りものです(笑)
4. Posted by 名無し   2007年08月27日 11:45
私は面白かったです。
点数は参考程度に考えた方が良いかとおもいますが

しかし、レビューにある一部はほぼ事実なので広く一般層にオススメできるような作品では無いと思います。
しかし、つぶあんこ様にとってよっぽど詰まらなかったのは良く解りますが、
悪いと感じた所だけを酷く抽出されているように感じます。

支離滅裂に写る内容では有りましたが、それだけに、日頃メディアを通じて耳にする昨今の女子高生であったり、特異な趣味に心血を注ぐオタク気質な人物像は、良い感じにディフォルメされて
有り得ないリアリティを感じました。
5. Posted by 名無し   2007年08月27日 11:46
ご指摘の通り意味を成さないシーンや、セリフをぶつぶつと喋るシーンも有りましたが、
これも私どもには良く解らない、今時の女子高生の無軌道な感覚を感じ
世界観を補っていた様に受け取れました。
そもそもホラー映画として製作されるべき内容ではないと思ったので、製作の意図と違う楽しみ方を見つけてしまったのかも知れませんが、
私、個人的には大変楽しめましたので一言添えさせていただきました。
長文、失礼致しました。
6. Posted by つぶあんこ   2007年08月27日 12:43
でも泣いても帰ってこない高井麻巳子。承知しねえぞこぶ平!

のび太が100点取る事もありますからね。

『遠くの空に消えた』と本作、デビルマンに匹敵するレベルの2作をスルーしたのは懸命な判断です。ある意味で一見の価値はあるのですが。

最初に人が死ぬまでの一連の学校・女子高生描写のどこに、的確な取材や解釈に基づいた描写があるのでしょう。オッサンの底の浅い妄想以外の何ものでもないですよ。まあ、幼児は「うんこうんこー」って言ってるだけで楽しそうだったりしますからね。
7. Posted by 一応ファン   2007年08月27日 20:55
3 "呪いソング"、
映画実は松本伊代が
歌っているのですが、
CDでは星野みちるが
歌ってます。元AKBの。
8. Posted by Qta   2007年08月27日 22:55
俺と友達は、サバゲーやおにゃんこなフトモモとかなり楽しめたが
ホラー好きの彼女は熟睡したあげくに怒ってましたTT
呪怨と立て続けにみたのもまずかったorz

相変わらずホラーでない映画をまるっとホラーの決定版みたいに予告つくってくれるのは、いい加減なんとかしてほしいよ…
9. Posted by よち   2007年08月28日 10:41
1 レディースデーで友と見に行こうかと思ってましたがやめることにしましたw
10. Posted by つぶあんこ   2007年08月28日 12:36
おおう、CDは違う人ですか。だったら余計にいりませんねえ。

ホラーどうこう以前に、映画としてダメでしょこれは。
11. Posted by くまんちゅう   2007年08月28日 22:51
電線か!?やっと判った、、、(遅
12. Posted by カ薬   2007年08月29日 01:29
わりかしホラー好きな(勿論まだこの映画は未鑑賞)親戚のお姉様が「おもしろそう」とおっしゃるのですが、これは結果報告するべきでしょうね…

私は「コックリさん」の再来と思いました、話題を振られたら「呪怨やエヴァやグラインドハウスのが面白そうでは?」と言ってごまかしてます。
13. Posted by つぶあんこ   2007年08月29日 17:26
しかし呪怨も吹替を観てしまうとヤバいそうです。
14. Posted by 天の道を往き総てを司る男   2007年08月31日 02:04
こんな映画見ないで家で「ゾンビ」でも見といたら良かった
15. Posted by つぶあんこ   2007年09月01日 17:21
今年後半はゾンビ系映画が結構公開されるので楽しみです。

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