2007年08月30日

阿波DANCE 30点(100点満点中)07-240

「アホアホハンドでやっつけろ!」「キーック!」
公式サイト

徳島の名物、阿波踊りを題材とした青春ダンスムービー。監督は『富豪刑事シリーズ』など、主としてテレビドラマをメインとしている長江俊和。脚本は『シムソンズ』でプチヒットを飛ばした大野敏哉。

みんなで頑張って一つの競技に挑む、この種の作品は『ウォーターボーイズ』ヒット以降、様々に作られており、その中には傑作と呼べる作品も存在するが、ムーブメントに安易に便乗しただけの安易極まりない凡作、駄作としか言いようの無いものも当然だが存在する、残念ながら本作は後者に当てはまってしまった模様。

基本的には不理解=対立から融和、融合へと変移する人間関係を、阿波踊りとヒップホップダンスの融合になぞらえて展開していく物語構図なのだが、カルチャーギャプによる対立、人間性による対立、色恋沙汰によって起こる対立、ヒロイン茜の母娘関係と、相手役コージの父子関係の、それぞれの不理解による対立など、それらを明確に描き分けられていない事がまず問題。

それでも、一つ一つのエピソード、シチュエーションには、それなりに納得、共感出来るところも多少はあるのだが、全体としてのまとまり、流れを構成するつながりが希薄な上、ほとんどがどこかで見た様なものに終止し、目新しいドラマは感じられない。

親友同士がケンカして浜辺で殴りあっているところにヒロインが駆け寄ってくる、など、いったい何億回使い古されたシチュエーションなのだろう。それを何の工夫も無くそのまま使っているのは、王道を踏襲などではなく単に手抜きなだけだ。

また、それらのエピソードのどれもが、ネタ振りから収束への道程を紡げておらず。クライマックスの踊りでウヤムヤにし、融合した事にしてしまっているのはあまりに乱暴。

そもそも題材である踊りの融合すらマトモに描かれていないので、一大イベントとして大爆発する筈のクライマックスがさほど盛り上がらないのだから困る。無理に話を広げすぎ、散漫にしてしまったせいでこんな事になってしまうのだ。

まず対立を描く事が必要といっても、いつまでたっても仏頂面で揉めてばかりでは、作品世界にも登場人物にも何ら魅力を感じられないのだから、感情移入が全く行えず興味が持てないのは当然である。

それでも、融合の展開をしっかりと描きさえすれば、そのギャップによって感動を大きくする事も可能だが、その"しっかり描く"事が全く出来ていないのだからどうにもならない。沢山集まった筈の仲間を全員放ったらかしとは、どういうつもりか。

それ以前に根本的な問題として、呆れるほどの古臭さとセンスのなさを感じてしまう『阿波DANCE』なるタイトルの時点で、想定観客である若い層はドン引きだ。

故に、東京から来たトンガリ娘であるヒロインが、"阿波DANCE"を始める事自体に無理があり、その起点すら描けていないため、余計にその後の展開がどうでもよくなってしまう事となる。

序盤にヒロインが連呼して強調していた「ムリ」の言葉が途中からフェードアウトするかの様に登場せず、そのまま何も無くなってしまっては、ネタとしても成立していないし、"レンコン女"絡みの展開にしても同様、その場限り、投げっ放しな描写の羅列に、物語としての流れも何もあったものではない。

映像的には、監督がテレビ畑の人である不安点がそのまま表出し、テレビ的なアップどアップが細かく割られるカット割りには、映画的な面白さが全く無く、むしろ顔ばかり見せられて鬱陶しくなってしまう。特に前半における、登場人物のキャラクターなどを説明して観客に理解させておく場面でアップが多用され、確かに顔はわかったがウンザリして誰も好きになれないのでは逆効果だ。

見どころとなる筈のダンス場面も同様。やたらとカメラを寄り過ぎた画面が多く、全身、全体の動きが伝わらない映像からは、本来のダンスの良さは大幅減にしか味わえないものだ。最後の決めポーズすらアップで割ってしまうとは、あり得ないにも程がある。これはラストの新聞写真を引っ張る意図なのだろうが、明らかに失敗している。阿波踊りの男踊りと女踊りの違いが実は振り付けに盛り込まれているなど、ちゃんと見られさえすれば楽しめる筈なのだから勿体ない。

挙動不審なキモオタ的に演出されていたメガネも、単にキモいだけで面白味が無く、オマケに最後の方だけ急に真面目になられても意味がわからない。

男女教師のエピソードなど、何ら意味を成していない上に描写不足にも程があるため、明らかに不要だ。キャラクター自体はステレオタイプながらも面白くなりそうな気配はあっただけに、いちいち中途半端に終止しているのが勿体ない。

結局、踊るとはどういう事か、どう融合すればいいのか、踊る事と人間関係との相関、など、本作のテーマとなりうる大切な事も全て投げっ放しで、観客に想像させるといった手法ではなく、単に考えていないだけだ。

また、主演の榮倉奈々は、サブキャラクターでの出演だと魅力的なのに、主人公になると決まって魅力が半減してしまうのは、本人の資質よりも扱い方、撮り方の問題なのだろうか。本作も、仏頂面な演出のせいもあるが、どうにも魅力を感じ難く、キャラクターとしても、転校先で女友達との描写が全く無いまま男とばかりつるんでいるなど、あまりにもリアリティに欠け進行優先な描写に終止しているせいで、共感も感情移入も何も出来ない有様で、どうにも主演作に恵まれない彼女が可哀相になってくる。

そんなわけで本作、出演者のファンでもなければ、特に観る必要もない凡作に過ぎない。自己責任で。



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この記事へのコメント

1. Posted by 咲太郎   2007年09月01日 23:37
あら、まさかつぶあんこさんが観るとは思いませんでした。
うーん、仰るとおり中途半端で勿体無い映画でしたね。
舞台挨拶を最後に持ってきたのは
よくなかったかもしれないです。
映画終わってもシーンとしてましたから
劇場内は。
2. Posted by 咲太郎   2007年09月02日 14:54
因みに大野敏哉は脚本です。
3. Posted by つぶあんこ   2007年09月02日 20:11
スンマセン、両方とも監督になってましたね。修正しました。

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