2007年09月01日

デス・プルーフ in グラインドハウス 85点(100点満点中)

もしかしてオラオラですかーッ!?
公式サイト

ロバート・ロドリゲスとクエンティン・タランティーノによる、"グラインドハウス興行"のパロディを意図した二本立て映画スタイルの一本の作品、だったはずが、日本では何故か一本ずつ別々の映画として公開されるはこびとなってしまい残念。

まず最初にロドリゲス作品を観せておいて、ネタ満載のフェイクCMを挟んでタラ作品に移行する、という形態を考慮した上での各作品づくりだった事は明白で、分割される事でその効果は薄れてしまっており、本来の狙いとは異なる鑑賞後感となってしまうのだが、それはもう諦める他無い。両方に同じ役者が出ている、等の小ネタも無意味になってしまうのは本当に勿体ないが。

本当は後半なのに先に公開された本作、まず冒頭の「オシッコ漏れる〜!」のくだりは、前半のロドリゲス作品を観終わって尿意を抱えている観客に、「しばらく話は進まないからトイレ行っていいよ」と示唆しているのだろうが、単独興行ではその意味は伝わらず、オマケにその描写が特に後に繋がらないので、余計に意味不明になってしまっている。だがそれを抜きにしても、ショートパンツ姿の女性のフトモモと尻をローアングルで極限まで強調した画角からは、充分に"作品意図"は伝わって来、そちらに抜かりは無いのは流石タランティーノである。

フィルムの傷や修正跡、音飛びなどを意図的に用いた演出は、"グラインドハウス"であると再認識させられるが、そんな作品を環境のいいシネコンの大スクリーンで鑑賞してしまう、というミスマッチが却って作品の奇妙さを後押ししているのが面白い。まさかこんな作品とはつゆ知らず、普通に観に来た一般客なら尚更だろう。

物語は大きく前半と後半の二部構成の様な体裁をとっており、その各部もまた、若い女性キャラクター達が延々と雑談を続ける、いわゆる"タランティーノ会話"場面と、その後の衝撃ハイテンション展開の二つで構成されている、この時点からまず、監督の狙いがありありと見て取れる。

まずダラダラとした会話で観客のテンションを落としておいて、急展開で驚かせる、これがまず基本として敷かれ、前半は本当にそれだけに終止し、どういう事なのか、をまず説明するだけで前半を丸々かけてしまうチープさも、当然ながら狙いであり、それ自体が後半への伏線となっているのだ。

だが、前半における、女性キャラクターのフェティシズム的視点で狙われた映像と、急展開に見せられるクラッシュ、残虐シーンのクオリティは、当然ながらタランティーノの卓越したセンスが発揮されている見事なもので、特に衝突の瞬間を何度も何度も別視点で執拗に繰り返す手法は、観客が望んでいるものをわかり尽くしたサービス精神と、それを果たせる映像構成センスにより、文字通り眼を覚ます効果は絶大。

前半の雑談と後半の雑談、ただ漫然と眺めているだけならば、ともに同じ様に見えてしまい、「同じ事を繰り返している」としか感じられないかもしれないが、前半の雑談はその後の急展開やオチに対し全く無意味な一方で、後半の雑談は、その会話内容そのものが急展開への設定説明、伏線となっている、という違いが、まず会話内容において気づく筈だ。前半の雑談が無意味、という事は、カート・ラッセルがカメラ目線となり「さあ、ここから本題に入るよ」と表情で観客に訴えかける演出からも明白。

言葉だけではなく映像的な面でも、前半の雑談は、各人物に向けられたカメラに、台詞ごとにカットを割り振る、ごくありふれたものであり、それがダラダラ感をより増幅していたが、後半の雑談は、昼食シーンにおいて、一連の会話の間ずっとカットを割らず、テーブルを囲む人物達の周りをカメラが緩やかに移行していく、会話と画面移動に対する緊張感が観客に生まれ、よりその会話内容に耳を傾けざるを得ない様に仕組まれている。これがまず大きな違いである。

前半の無意味さによって、"グラインドハウス映画"のテキトーさを表現すると共に、後半の盛り上がりの伏線とする、この仕掛けが素晴らしい。

後半の展開はラス・メイヤーの『ファスター・プッシーキャット キル!キル!』を彷彿とさせるものだが、当然これは意図的なものだろう。

前半の空気を後半でひっくり返す、本作における手法はあるいは、世界観とストーリーも人物も繋がりつつ完全に暴走して構図が大逆転し、観客全員を呆気にとらせたまま終わってしまった、『悪魔のいけにえ』に対する『悪魔のいけにえ2』の様な、いくつかの過去作を意識してのものと推測される。

ちなみに、作中にて話されていた『バニシングポイント』や 『ダーティーメリー・クレイジーラリー』などには、大して似ていない。

そうした前半と後半の差異をわかりやすくしているのは、前半は夜、後半は昼に設定された舞台背景にある。前半は夜に惨事が起こる、定番をそのまま用いており、後半ではいつまでたっても夜にならない時点で、その意味に気づくべきだろう。

後半のカーアクション場面は、「とりあえず止まれよ」とのツッコミは感じるものの、もちろんそれもまた、従来の"グラインドハウス映画"にありがちなツッコミどころとして意図されたものであり、そう思った時点でタランティーノに釣られているのだ。

そうして無駄にハラハラ感を増幅させられた事で、カーアクションの迫力に一層にのめり込む事となり、これまた完全に術中にハマってしまう事となる。もちろんカット割りの的確さによって、カーアクション映像としての完成度が高い事が基盤にある事は言うまでもない。

その後の更なる急展開と唐突な締めは、あらゆる意味で痛快の一言に尽きる。"こんな映画"を今現在作ってしまう事、それ自体が楽しすぎるのだから。

タイトル画面がこれ見よがしに差し替えられていたり、違う場所を走っている筈なのに、明らかに同じところを何度も走っている様にしか見えなかったり、一番可愛い子は(劇中では)特にヒドい目に遭わず、見た目今イチなオバサンっぽい女性が大活躍するなど、"グラインドハウス映画"的な小ネタも要所要所に配置され、それをチェックしているだけでも充分に楽しめるだろう。

オマケに女の下半身と惨殺とアクションと諸々、楽しみどころがテンコ盛りで引張りとオチのバランスもいい、パロディとしても娯楽作としても上質の一品だ。それだけに単独上映が本当に残念。

"ヘンな映画"である事を認識した上で臨めば、文句無しに楽しめるであろう本作、興味があれば観ておいて損はしない筈だ。機会があれば是非。



tsubuanco at 17:39│Comments(4)TrackBack(20)clip!映画 

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1. Posted by 力薬   2007年09月03日 19:16
「デス〜」、公開前日まで六本木と難波でU.S.A.バージョン(二本立てと予告四本のついたちゃんとしたバージョン)が上映されてたそうですね…。行けませんでしたが(苦笑)

テキサスの警官二人や密室の恐怖実験のテーマなど、(曖昧なので間違ってなければ)キルビルなどにもつながるシークエンスもあったりと、なかなか楽しめました。

しかし何故配給は後半のこちらを先に上映しようと考えたのか、謎ですね
3. Posted by つぶあんこ   2007年09月04日 17:39
タランティーノの方が知名度高いからじゃないですかねえ。
4. Posted by siko   2007年11月13日 13:12
プラネット・テラーの方がタイトル一覧に載ってないですが、消してしまったのですか?
5. Posted by つぶあんこ   2007年11月13日 17:27
ご指摘ありがとうございます。修正しました。

お目当てのタイトルがハッキリしている場合は、左サイドバーの「ブログ内検索」を使われた方が早いかもしれません。

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