2007年08月22日

恋するマドリ 51点(100点満点中)

さっさと引っ越し! しばくぞ!
公式サイト

ポッキーのCMで一躍メジャー化した新垣結衣の、映画としては初主演作となる本作、監督および脚本を務めるのは、学生映画『意外と死なない』などで知られる、商業映画としては同じくこれが初となる大九明子。

タイトルに"マドリ"とあり、予告でも間取り図が登場するなどしていたが、この"間取り"が全くと言っていいほど本筋には関わらない事にまず驚かされる。

タイトルとポスターなどを見て誰もが、新垣結衣が演じる"マドリ"という名前の少女の物語、と想像するだろうがそれも違い、主人公の名前は"ユイ"である。エンディング主題歌を新垣結衣自らが歌唱している事とも併せるに、本作、新垣結衣のために作られた作品、と考えて問題ない様だ。

確かに、本作における新垣結衣の存在感は、主人公であるという事を差し引いても尚、凄まじいものがある。ただ画面に映っているだけでオーラを放ち、その表情や立ち居振る舞いで観客を魅了する、見た目でまず人を惹き付ける能力はさすがモデル出身だけあって極めて高いと、劇場のスクリーンに大きく映される事で一層に証明された。

だが、いくら可愛いといっても、これまでのドラマ出演作などを見ても明らかな通り、女優としてはかなり不安定な事もまた確かである。実際本作においても、長い台詞になったり感情的になったりすると、表現の限界が露呈してしまい、盛り上がりに水を差しがちなところも存在する。終盤の空港で叫ぶあたりなどは本当に残念。

そんな彼女の至らない面をフォローする意図なのか、それとも彼女だけでは集客に問題があると判断されたのか、松田龍平と菊地凛子の、オシャレサブカル系映画の看板ツートップが脇を固めているのは、何とも頼もしい限りである。

のだが、それらの出演者陣を活かすべく脚本、演出が周到されているかと言えば、幾分に気にかかる点が多々見られ、全体的な完成度としては、手放しで評価出来るものには仕上がっていない。

引っ越した先、実習先、バイト先、などで偶然出会った人と人が繋がっていく、100%偶然のみで人間関係が構築されていくストーリーは、おそらくは意図されたものではあろうが、安易すぎるとの印象を払拭出来ておらず、感情移入や共感を呼ぶために必要なリアリティに欠けている事がまず問題。

もっと上手く隠すか、あるいは逆に開き直ってしまうか、どちらでもない中途半端さが、その問題を更に欠点にしてしまっている。運送屋関連の人間関係と出番の用意は、その"開き直ったギャグ"として扱われており、それなりに成功しているのだから、他にも適用出来た筈だ。

現実としての事象の進行と、それと平行する各人の内面の変遷が、今ひとつ上手く絡み合っていない事も、喰い足りなさの一因だろう。特に主人公である筈のユイが、出会った二人の男女に対し、それぞれどう思ったか、その思いがどの様に変わっていったか、の描写が極めて薄く、そのために物語展開にも主人公にも感情移入が出来ない結果になってしまっている。

終盤の疾走シーンに対し、取ってつけた様な印象を受けてしまうのも、その事が原因である。この時点で観客が主人公を応援あるいは共感する立場に立てていたならば、自然と展開の盛り上がりを享受出来ていたに違いない。

その終盤唐突に登場する屋形船のくだりにおいて、主人公が屋形船に乗り込むところを敢えて省略し、船登場 → 船上でポーズをとる主人公、という流れとする事で、テンポを良くすると同時にユーモラスな空気を挿入する、という狙いは成功している。

その様に、"意図的な省略"があちこちに用いられ、これは監督の得意とする作風と推測されるのだが、これが上述の様に成功しているところだけでなく、材木市場で転ぶ場面など、残念ながら失敗としか感じられないところもあり、徹底の足りなさが感じられる。もっと煮詰めれば面白く演出出来た筈だ。

呼び鈴を押しても出ない、というくだりが繰り返されるが、その事は主人公をその場で焦らせるためのものでしかなく、特にストーリーやキャラクターには影響を与えなかったり、和菓子屋を立ち去る時に食べ残しが多すぎたりと、インテリアや服装の細かい所には気を配っていると見受けられながら、別の細かい所には気が回っていない、詰めの甘さが目立ったところに感じられているのもいただけない。

プロレスラー中西学をプロレスラー役で登場させ、随所に絡めておきながら、一番活躍出来そうな突破シーンでは彼よりも親父の方が目立ってしまうなど、そうした徹底の甘さ、意図的でない踏み外しが本当に多い。またその突破シーンも、オチの絵面のために必要である事は理解出来るが、全体の空気を壊す違和感となっているため、別のやり方が望ましかった。

そうした、笑い、癒し、シリアス、などの空気のバランスが悪い事が、中途半端な印象を強めているのだ。

新垣結衣の可愛さをいろいろと堪能する、という目的においては問題ないが、映画としてはそれだけではやはり充分とは言えない。美味しそうな素材を使い切れず食べ残してしまった、勿体なさがありありと伝わってくるのは、予算や環境だけが原因ではないだろう。

出演者のファンなら要チェクだろうが、そうでないなら特に観なくても困らない作品。自己責任で。



tsubuanco at 16:18│Comments(2)TrackBack(3)clip!映画 

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この記事へのコメント

1. Posted by くまさん   2007年09月05日 15:42
5 見ようと思ってたけどやめようかな


これってカップルと見るのと1人(男性)で見るのではどちらがいいんですかね?あほみたいな質問ですみません
2. Posted by つぶあんこ   2007年09月05日 17:14
個人の自由でしょ。

映画は基本的に一人で観るものと捉えてはいますが。

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