2007年09月09日

ワルボロ 61点(100点満点中)

(注:彼らは中学生です)
公式サイト

フリーライターのゲッツ板谷による自伝的小説を映画化。監督はこれがデビューとなる隅田靖。

作者自身の中学生時代の実体験に創作を加え、70年代後半当時の不良中学生達の日常が赤裸々にディフォルメされて描かれるストーリーは、そのノスタルジックさに縁の無い若年層であっても「あるある」と頷いて笑えるもので、本来ならば漫画として発表されていれば、不良・ヤンキーものの王道として漫画史に残る一本となっていたかもしれない。と思っていたら、実際にヤングジャンプにてコミカライズ版の連載が始まって驚かされた事は、記憶にまだ新しい。

格好付けつつも結構ヘタレで、キャラの立った仲間に囲まれてワイワイ楽しく興じるも、地域抗争に巻き込まれて戦わざるを得なくなる、と、『BE-BOP-HIGHSCHOOL』などよりは『ゴリラーマン』あたりに近いノリで展開し、ケンカやアクションはアクセントとし、ギャグや人情でストーリーを進める方向性をとっている。

それにより、観客は憧れよりも近しい存在としての共感を持ち、自身の体験に重ね合わせて感情移入するかたちとなり、己の事の様に笑い怒り悔しがり悲しむ感情を共有する事が出来る。これが原作の時点からの本作の魅力だろう。単なる不良ではなくガリ勉くずれとする事で、あらゆる層を取り込む事が出来ているのも強みだ。

のだが、この映画版において、主演が松田翔太、ヒロインが新垣結衣と、どちらかと言えばモテそうにないタイプな作者自身である筈の、本来の主人公とはかけ離れたものとなり、重要なリアリティが大きく損なわれる事態となっているのが残念。仕方ないが。

新垣結衣が演じるヒロイン・山田も、実は美少女だが敢えてそれを隠しているという、原作の設定とは大きく異なり、ごく普通に美少女である事を前面に押し出したビジュアルは、クラスで目立たない存在には全く見えないものだ。性格描写がそのまま踏襲されているのはありがたいが、やはり圧倒的に可愛いビジュアルの前には一切の説得力が消し飛んでしまう。

主人公と付き合う事となるヤリマン女・サユキ(高部あい)との対比もこれでは成立しがたく、そのせいかサユキ絡みのエピソードも中途半端なままフェードアウトしてしまっている。

そうした女がらみの悶々とした悩みとその発露を、リアルな共感を生むものとして描いているところに、原作の青春ものとしての面白さの一端があったのだが、映画ではケンカ抗争に焦点が置かれてしまっている事で、その女の問題にしても、家族の問題にしても、不良世界外の人間関係描写がおざなりで、どうなったのかわからないままの事物が多く、これなら母親が倒れる話などは無かった方が、よりスッキリ終われたはずだ。

原作中盤にて丹念に描かれる、ウエイトトレーニングでパワーアップするくだりなども、映画版でも一応は訓練シーンは登場するが、それがどの様に効果となって現れたのか、それによって主人公の内面にどんな変化が生じたのか、といった、訓練そのものよりも重要となる筈の描写が散漫で、訓練がどこにつながったのかが見えづらい構成となっているのは難点だ。

しかし、映画化に際して間違いなくオールカットされると思われていた、朝鮮学校絡みの展開がほぼ丸々残され、作品の一部を大きく担っている事は、嬉しい誤算である。そのため冒頭に「この映画はフィクションであり〜」の一文が強調されていたのか、と、頷かされた。

朝鮮学校との抗争、という図式は、近年では『パッチギ!』で取り上げられ話題となったが、本作では、日本人の側からの視点で、当時の体験者が生身で知る、朝鮮校生による理不尽な暴力と圧力を堂々とリアルに描いており、この様に最近まで完全なタブーだった題材を扱えるのは、『パッチギ!』という作品が世に出た功罪の、功の面と言えるだろう。最後だけ急にイイ奴になってしまうのは大人の配慮としてのギャグだ。

一方で、ラストバトルの顛末が大きく変えられているのは、映画としてのカタルシスや完結性を重視したものではあるが、やはりリアリティとは更に縁遠くなってしまっているのは悩みどころだ。バックドロップに何らかの伏線がほしかったし、キレンジャーが参上しなかったのも惜しい。それにしても弓削智久はヤンキーもののラスボスが似合いすぎる

不良・ヤンキーものの定番を手堅く踏襲した、共感しつつ笑えるコメディであり、70年代後半の風景、服装などを再現(特に女生徒のブルマは大いに評価したい)した映像には、懐かしさに浸る事も可能だが、本作ならではの特別な何か、が非常に薄く、平凡な印象を受けてしまう。

当該ジャンルが好きな人や、出演者のファン、原作ファンなら一応は要チェックであり、観て損したと思う事はなく楽しめるだろうが、レンタル待ちでも充分かと思われる。興味があれば。



tsubuanco at 22:17│Comments(6)TrackBack(4)clip!映画 

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? 何故この作品なのか? ? 『ライアー・ゲーム』での松田翔太のピカレスク演技に痺れ、彼に憧れる女子中学生のように、彼の演技をもっと見たいという欲求が高まったのが鑑賞に至った理由。 しかも共演はポッキーの踊る美少女ガッキーこと新垣結衣。
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3 人気ブログランキングの順位は? ピストルの形をした立川の街。 中でも一番シミッタレていたのは我が町・「錦町」。 これはそこで生まれ、共に育った俺たち6人・「錦組」の物語だ。 <喧嘩暴走、ときどき恋>の<ワルくてボロい>青春グラフィティー、誕生! ...
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4. ワルボロ  [ Screen saver☆ ]   2008年04月02日 13:11
15年くらいジブンはあとですが モロ地元です 。。。駅前の第一デパートが懐かしい 当時、行きました。買いました。 裏地が原色のやたら龍とか虎とか日の丸ついてるヤツ(笑) ワルボロ 特別版

この記事へのコメント

1. Posted by kame   2007年09月14日 11:16
朝鮮学校絡み・・・これ本当に映像化していてスゴイなぁと思いましたよ。
そして私はやはり美形が好きなので、普通に美少女の新垣結衣が可愛かったです。下手なセリフがないのがまた良かった(笑)
サラリと楽しめる映画ですね。
2. Posted by 咲太郎   2007年09月14日 16:35
なるほど、高部あいの役は原作ではそういう役回りだったんですね。
原作を知っていた方が、より楽しめそうな感じですね。
平凡な印象←同感。
3. Posted by つぶあんこ   2007年09月14日 21:33
・kame さま
たて続けに新垣結衣の出演作が上映されて大変です。

・咲太郎 さま
浮かれてる間に敵対チームの男に乗り換えられてブチギレ、っていう展開ですからね原作は。
原作小説は結構長いんですけど、一気に読める読みやすさと勢いがあるのでオススメです。
4. Posted by つぶあんこさんのお尻も最高ですが   2007年12月11日 21:23
5 新垣ゆいのブルマ姿があるのでしょうか?それならばレンタルします。なければ見ません。
それでよろしいでしょうか?
5. Posted by つぶあんこ   2007年12月13日 21:19
病弱な役なので無いです。
6. Posted by ちゃぷりん   2008年12月05日 18:52
さっき観終ったばかりですが、あんこさんの指摘は全くその通りで、私も主役が喧嘩に勝ち続けるより恋心の方に焦点を絞って欲しかったです。そうするとキャストが地味になり、映画にする必要が無くなってしまいますが。

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