2007年09月16日

スキヤキ・ウエスタン ジャンゴ 39点(100点満点中)

荒野の用心棒
公式サイト

イタリア製の西部劇映画、マカロニウエスタンの日本版を標榜した、三池崇史監督の最新作。

英語で会話する日本人がインチキなウエスタン世界にて源平の戦いを繰り広げる、狙い自体は興味深いものであり、そんな荒唐無稽な作品ながら、近年の日本映画での主役級の俳優陣を揃えてしまう、明らかに不釣合いなギャップもまた、興味を引くのに充分なものだ。

そうした、豪華キャストによる悪ふざけ大作とも称せられる方向性の作品を、『ゼブラーマン』『妖怪大戦争』など、これまでにも手がけている三池崇史が監督ともなれば、それなりの期待は抱かされて当然ではある。

が、出来上がった作品は、悪ふざけともシリアスとも評せない、中途半端でどっちつかずに終わってしまっている。

それは、全体のストーリーと世界設定、すなわち脚本の出来の悪さによるものが大きい。

『用心棒』をベースとし、対立する二つの勢力を源氏と平家になぞらえ、"スキヤキ(=和風)"のテイストをわかりやすく提示する狙いは面白いが、その事が単なる出オチにとどまっており、本来の歴史上での源平の攻防や人物関係のパロディなどで物語を構成する、といった、誰もが当然に期待する様な展開、ネタ使いが何らなされておらず、かと言ってそれに変わりうる面白さを別に出せているかと言えばそうでもない。

義経、清盛、弁慶、与一、といった名前は使われているが、単に名前を同じにしただけでしかなく、「イチロー、マツイ」「アキラ」等の名前ネタに至っては本当に一発ギャグでしかない。

日本ネタ、マカロニウエスタンネタ、などが随所に散在されこそするのだが、それらが必然として物語に絡み合ってひとつの世界を形作る事無く、全てがその場限り、出オチに終始し、世界観として受け入れる事が出来ない、上っ面だけでしかないのだ。あまりに底が浅く、題材、元ネタに対する理解も昇華も何ら感じられないのでは面白いわけがない。

これは、脚本を手がけたNAKA雅MURAのセンス、能力の低さによるものである事は、氏のこれまでの仕事、『アンドロメディア』『ドラゴンヘッド』『どろろ』などを見ても明白であり、特撮、SF、アクション系の大作で駄作を乱発させながら、いつまでも起用し続けられる意味がそもそもわからない。

一方、三池崇史によって形作られる部分での、演技、演出、映像に関しては、マカロニウエスタンのパロディなのに、どちらかといえばタランテティーノやロバート・ロドリゲス作品のカラーを模したものが多く感じられるとはいえ、いい意味でのおふざけとパロディが上手く作用している場面もところどころにあり、どうしようもない駄作に終わる事態だけは何とか免れている。

特に、伊勢谷友介演じる義経と、桃井かおり演じる謎のババアの両者絡みのシーンにおいては、本作が本来表現したかったであろう、笑いとカッコ良さのギリギリの境界が見られ、退屈な前半に辟易し、木村佳乃が踊り始めたあたりで寝てしまった観客も、桃井が覚醒した瞬間に一気に目を醒まされて真面目に観る気を取り戻す事になり救われる。桃井の過去が語られるくだりでの、タランティーノパロディ風映像演出は狙い通りに面白く、いっその事全編そのノリで進めればよかったのに、とさえ思わされる程だ。

"曲がる銃弾"のスカした表現や、日本刀 vs 拳銃の対決をアニメ的演出で見せるなど、部分的には興味を惹かれる演出、映像も用意されており、三池崇史のいい面が、そうしたところからは感じられ楽しめる。

だが、豪華キャストに漏れなく見せ場を与えなければ上から怒られる、日本映画界の悪しき性質によるものか、佐藤浩市、安藤政信、石橋貴明、木村佳乃、香川照之と、それぞれ均等に出番が割り振られた様な不自然な段取りによって、全体の印象が散漫になり、あまつさえ主人公であるはずの伊藤英明が、一番キャラが薄く影も薄い状態になってしまい、結局、群像劇にも放浪ヒーローものにも成り得ない中途半端さが全体を支配する事となる。

そうして見せ場も流れも絞りきれていないため、いったいどこがクライマックスだったのかもわからないまま、「えっ、まだ終わらないの?」と思っている間に北島三郎の主題歌が流れて終わってしまう、駄目な大作映画の典型な展開からは、カタルシスは感じられない。(北島三郎の主題歌そのものは良い)

バカに徹する事も真面目に作りこむ事も出来ず、日本映画の悪い面が顕著に影を落とし、題材とアイディアを食い散らかしてしまった、非常に勿体ない残念作。レンタル待ちで充分だろう。自己責任で。


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1. Posted by kame   2007年09月19日 10:54
すごく面白くなりそうな題材を、そこそこ面白く作ったという感じでした。
桃井かおりとタランティーノのくだりはかなり面白かったので、確かに全編あの調子だと良かったですかね。いや、くどいかな(笑)なんだかんだ言いつつ、私は楽しめました。

しかし伊藤英明さん、本当に一番影が薄かった・・・。
2. Posted by つぶあんこ   2007年09月19日 17:07
桃井かおりにそのまま若い娘の役をさせてしまうあたりは、三池らしいとは思いました。
3. Posted by 咲太郎   2007年09月20日 08:14
NAKA雅MURAさんって「どろろ」の脚本家でしたか!
納得!!
4. Posted by つぶあんこ   2007年09月20日 17:52
地味な小品だと悪くないんですけどね。本当に大作には向いていない人の様です。

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