2007年09月17日

劇場版 CLANNAD -クラナド- 54点(100点満点中)

好きな食べ物はアンパンだ!
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Keyの人気ゲームを、05年の『AIR』に続き、出崎統監督によりアニメ映画化。

虫プロの『あしたのジョー』に始まり、杉野昭夫と組んで漫画原作ものや児童文学もののアニメを多く手がけてきた巨匠だが、最近は『とっとこハム太郎』や本作など、ミスマッチとしか考えられない作品を宛がわれがちなのは、若本規夫が『すべらない話』のナレーションに使われる類のネタ的起用なのか、それとも別の思惑があるのか、大いに謎だ。

また、前作『AIR』もそうだが、プレイに何十時間も必要なゲームのストーリーを、たかだか90分程度の映画としてまとめる事自体にそもそも無理がある。一番いいのは作らない事だが、そんな事を言っても仕方がない。

総集編的な駆け足展開か、説明不足にも程がある特定エピソードの抜き取りか、あるいはキャラクターや世界観のみを流用したオリジナルストーリーか、誰が脚本を書こうがそれくらいしか選択肢はない。

そして、大ヒットゲームなため、プレイヤーそれぞれに思い入れがあり、それらを全て満たす事など出来る筈がない、とは、普通に常識的な思考を行える者なら理解しているに決まっている。

その意味では本作、可もなく不可もない程度に、原作ゲームの要素を適度に拾い集め、それらを一本のストーリーにまとめるためにオリジナル要素を追加した、最大公約数的なものとされていると評して構わないだろう。

とは言え、原作の膨大な情報量からメインヒロインの渚エピソードを中心にピックアップし、幻想編を絡めアフターストーリーにまで突入する、この映画版はやはり駆け足感が強く、悪い意味でアニメ的な紋切り型キャラクターと、韓流ドラマもかくやのお約束でしかないあざとく恥ずかしいストーリーに終始し、物語にもキャラクターにも、何ら魅力を感じられないものである事も確かだ。

これが"普通のアニメ映画"として製作されていたならば、全く観る価値のない、一山いくらの凡百の萌えアニメの中のひとつ、で終わっていたであろう事は、想像に難くない。

だが本作は"出崎統監督作品"である。それだけで観る価値は充分にあり、セルフパロディかと思える程に過剰な"出崎演出"で描かれる、くだらないストーリーとのミスマッチは、おかしくて仕方がないと同時に出崎統の持つ演出、映像構築センスの凄さをあらためて再確認できるものだ。

動画枚数の節約と演出効果が両立し、動かない事が却って動いている以上の効果となって現れる映像は、アニメに実写的手法を持ち込みながらそれを更にアニメーション的手法に昇華させる事で、もはやそれ自体が作家性となっている。決して枚数制限が主目的ではない事は、予算やスケジュール制限が比較的緩いNHKアニメでも、同様の手法が用いられている事からも明白である。枚数が多ければ良い作画と勘違いしている様な人達には向いてないのだろうが。

ハーモニー(止め絵)、パンリピート、画面分割、水溜りに移る映像、入射光ハレーション、キラキラ透過光(『あしたのジョー2』で伝説となった"光るゲロ"に続き、本作では"光る小便"が登場)、と、アニメーションのみならず映像を趣味や職業とする者ならば、その作りこみを存分に味わえる出崎演出で全カットが構成される本作、作画監督が杉野昭夫でない事が残念でならない。

電車の映像がクドい程に挿入され、これも出崎演出の一貫かと思わせておいて、それだけで終わらずに終盤の展開へとつなげていく構成にはニヤリとさせられる。

だが本作のキャラクターデザインは、当然ながら原作ゲームのそれに準拠したものであり、いわゆる典型的な"萌えアニメ絵"のそれだ。この類の絵は、特に顔においては"二次元"と称されるその通りに平面的な配置構成で、"動かない"出崎演出には本来不向きなものだ。

それに加え、本作の原画には劇場映画としてクオリティ的に難があるものが多々見られ、"アニメ絵"自体をしっかりと描けていない状態なため、動かない事でその粗が余計に目立ってしまう結果になっており、"ミスマッチ"の悪い面が出てしまっているのも事実。

違いを楽しむ事が出来る、常識ある原作ファンや、出崎統の映像に興味を持つ者ならば、観て損したと思う事はないだろうが、そうでない人には受け入れ難い作品ではある。

いきなり恥ずかしいアニメ声で上映前の注意事項を聞かされる時点で、"一般人"を完全に拒絶している事は興行的な基本姿勢としか考えられず、あからさまなアニメ絵と恥ずかしいアニメ声に拒否反応を示す様な人は、最初から客として想定していないのだから、それでも何ら問題ないのだ。自己責任で。



tsubuanco at 02:09│Comments(4)TrackBack(1)clip!映画 

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1. 劇場版CLANNAD「ネタバレあり感想」  [ ルーツ オブ ザ まったり! ]   2007年09月24日 12:47
厳重注意!以降はネタバレです! これから観られる予定の方は 読まれないで下さい!

この記事へのコメント

1. Posted by sheep   2007年09月18日 16:53
>あからさまなアニメ絵と恥ずかしいアニメ声に拒否反応を示す様な人は、最初から客として想定していないのだから

おっしゃる通りです。
自分は宮崎アニメや流行りのプリキュアの類には抵抗がないため油断して行ったのです。
パンクロックを聴き始めた頃、ハードコアのライブハウスで殺されたかけたことを思い出しました。

でも、エンディングは謎ですね。
2. Posted by コロネ   2007年09月18日 20:14
前作は出崎氏が原作を全く知らないで作った事をぶっちゃけていましたが
今回はどうなんでしょうね
3. Posted by つぶあんこ   2007年09月19日 17:06
エンディングのメドレーは、最後をだんご大家族で締めるためじゃないですかね。

ゲームをプレイしたかどうかは知りませんが、前作よりは内容を知ってたみたいですよ。
5. Posted by 通りすがり   2007年11月04日 23:16
出崎御大がKey作品元々知ってるほうが怖いですよね。

しかし受けちゃうのはカッコイイと思った。

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