2007年09月25日

さらば、ベルリン 43点(100点満点中)

愛の戦士たち
公式サイト

ジョゼフ・キャノンの同名小説を原作に、『オーシャンズ』シリーズのスティーヴン・ソダーバーグ監督および、ジョージ・クルーニー主演にて映画化。

終戦直後の連合軍統治下のベルリンを舞台とする本作、まず最初に見せられるワーナーブラザーズのロゴの時点から、当時の映像、空気を再現してみせるという、外面的、ハード面での方向性がハッキリと提示される。

ロゴ画面を見ながら、当時っぽくつくるのなら、画面サイズも4:3のスタンダードにするべきではないのか、などと考えていたらその通りに、当時の本物の記録フィルムが4:3サイズで流されるオープニングへと続く仕掛けには、まるで心を見透かされていたかの様に驚かされる。

瓦礫の山となったベルリンの情景を、本物の映像で様々に見せられる事で、観客はその舞台をリアルなものとして認識する事が出来、導入としては成功している。

そこから続いて始まる本編にて、画面サイズは再び横長へと回帰してしまうのだが、現代に撮影された筈の本編映像が、最前のリアル記録映像とほとんど区別のつかない画質とされているため、オープニングで導入させられた回顧世界から脱してしまう事無く、そのままのテンションで作品世界に入り込み続けられる様なされている。

画質だけでなく、コマ落とし気味に感じる動きや、陰影が強調されて、暗いところが潰れ、明るいところは飛びがちな露出具合、当時の映画音楽を明らかに意識した音楽に、記録映像を交えながらも全く違和感の無い、半廃墟と化したベルリンの街並みの再現に至るまで、ハード的な作りこみはほぼ完璧に近いものがあり、それを見ているだけでもそれなりの楽しみは得られる事は確実だ。

走る車内の窓外の風景が、スクリーンプロセス風の合成だったり、場面転換に横ワイプ処理が用いられるあたりまで来ると、もはやパロディ的にさえ感じられて笑わされてしまうが、それらも確信的な仕掛けだろう。

だが一方でソフト面、すなわちストーリーや演出といった面では、画面からかもし出される高尚さ、奥深さとは正対に、不充分な印象を強く受けてしまう、作品全体の評価としては残念な結果となっている。

主人公が事件を追って謎を解いていくタイプの作品ながら、その視点が主人公だけでなく、時にそれ以外の人物にも振られている事が、物語の焦点を曖昧とし、観客に謎や疑問を抱かせる以外でのわかりにくさを生んでしまっている事がまず問題。

主人公格の一人かと思わせた運転手(トビー・マグワイア)がアッサリ退場する事が観客を驚かせる狙いとは理解できるが、前半で彼の行動をある程度見せてしまっている事で、その後主人公が謎を追う段にて、主人公の知る情報と観客の知る情報に齟齬が生じ、それが主人公と観客の同一化を阻んで不理解を生じさせる理由ともなっている。

本作のストーリーなら、ハードボイルド映画の様に主人公視点に限定して物語を進めた方が、観客と主人公の謎解きの興味がシンクロして楽しめる作品となったのではないだろうか。

本作ヒロイン、レーナを演じるケイト・ブランシェットが、いつにも増して魅力なく映し出されていた事もまた、作品に対する没入と理解を阻害する大きな要因のひとつと感じられる。

レーナの役どころはいわゆるファム・ファタールであり、男達を翻弄しつつ自らも破滅的な謎めいた美女、であるはずが、まず見た目での魅力が全く感じられないために、そのニュアンスが少しも伝わらず、やはりここでも不理解を生んでしまっている。モノクロでの表現に不慣れなのかもしれないが、もう少し美しく撮れなかったものか。

戦中のドイツでのロケットの軍事開発や、戦後統治下における連合国間の水面下の抗争と駆け引き、そして戦争責任、裁きと裏切り、と、興味深い史実や世相を題材として盛り込み、ナチスやユダヤ絡みのタブー気味なフィールドまで物語を展開させながら、さほどの驚きも感動も与えられない、むしろ退屈な印象まで与えてしまったのは、何より構成、演出の甘さによるものだろう。

面白そうな題材と完成度の高い映像ながら、肝心のお話の見せ方が今ひとつだったせいで、単なる懐古趣味の技術自慢に終わった感の強い本作、空気を再現した映像は映画好きなら必見だが、それ以外はあまり期待しないほうがいいだろう。自己責任で。


tsubuanco at 22:08│Comments(2)TrackBack(8)clip!映画 

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1. さらば、ベルリン  [ 八ちゃんの日常空間 ]   2007年09月25日 23:23
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この記事へのコメント

1. Posted by わとそん   2008年10月29日 18:12
WOWOWで見ました。
つぶあんこさんのレビュー中の下記の部分。

>現代に撮影された筈の本編映像が、最前のリアル記録映像とほとんど区別のつかない画質

 この点は違うんじゃないかなあ。
 あくまで本編映像は40年代50年代ごろの映画(フィクション)のオマージュというかパロディというかの方向性を持って作られてて、記録映像とは画質的にもぜんぜん異なると思います。
 映画の内容自体はつまらないという点は同意しますが。
 
2. Posted by つぶあんこ   2008年11月07日 17:31
スクリーンよりテレビで見る方が質感の差異がハッキリしますからね。

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