2007年09月27日

ストンプ・ザ・ヤード 32点(100点満点中)

「1808番目の技の、ストンプでした」
公式サイト

日本でストンプといえば、そこらにあるモノを使ってリズミカルに音を鳴らすストリートパフォーマンスといった認識があるが、本作はそちらではなく、手足で正確なリズムを刻んで集団で踊る、アフリカから北米に伝わった伝統的な群舞である、本来の意味でのストンプを題材とした作品。

アメリカにおける黒人文化の伝統の一つであるストンプを主材とし、近年台頭してきた文化であるストリートダンスをそこに持ち込んで、伝統と新興、集団と個人の確執から融合を描くストーリーに、更にはアメリカの大学にはつきものの"友愛会"を題材に盛り込む事で、"伝統"をより強調し、温故知新の良さを表現しようとしている、作り手の狙いは理解出来る。

だが、全てにおいて方向性が定まらないまま、強引に決まった筋道に運ばれている感を大いに受けてしまう、ストーリーの組み立てやキャラクターの動向の出来は決して良いとは言えず、面白味にも説得力にも欠けるものに終わっている。

利己的だった主人公が、仲間やチームプレイの大切さを知る、成長を描いている筈なのだが、二つのチームを行ったり来たりする主人公の行動理念が描かれず、単に都合よくフラフラしているだけにしか見えないのでは、結局のところ自分勝手な奴としか映らず、感情移入も応援も出来るわけが無い。

お前一人でやってろ、と言われてチームを離れた直後にライバルチームに鞍替えし、そちらでの活動もウヤムヤなままでフェードアウトして、学校を追われそうになったら元のチームに頼るが相手にされない、でも障害が消えたらそのチームに戻って、メンバーもリーダーも歓迎する、なんて展開のどこに、仲間やチームの大切さを知る描写があるというのか、理解に苦しむ。

チームみんなで山に登って、サワヤカな汗を満喫する様を、空撮まで使って大仰に見せるシーンがあるが、そこに主人公はおらず見てもいない状態では、このシーンに何の意味があるのかすらわからない。

伝統を大切にするチームだった筈が、最終的には何の葛藤も無く主人公スタイルのストリートダンスを取り入れて大会本番に臨む上に、最終的には主人公一人の個人技によって勝ってしまうとなれば、やはりどこにもチームプレイや調和の素晴らしさは描かれていないではないか。

そもそも、主人公を追い出してまで伝統にこだわったチームが、ステージ直前に主人公が復帰したからと言って、いきなりストリートダンスを交えた振り付けを踊れる事自体がツッコミどころである。いつ決めていつ練習したのだろう。

リーダーが主人公を受け入れる様も、主人公がチームに入り込む様も、全く描かれていないのだから、お話になっていないのだ。

もうひとつのメインピソードである主人公の恋愛ドラマは、こちらもまた徹底して描写不足で、ヒロインの元カレがイヤな奴だとまではわかるものの、では何故ヒロインが主人公を好きになったのか、という肝心な方は全く伝わらず、単に主人公とヒロインだからくっつくのだと、お仕着せのストーリーに終始しており、面白味に欠ける。

主人公の母とヒロインの父の過去の因縁など、面白くなりそうな要素はありながら全てが中途半端に投げ出され、適当に決まりきった展開しか起こらないのでは、楽しめという方が無理だ。

友愛会の設定も、最初はバカにしていた筈の主人公が憧れを抱き、そこで成功する事でラストシーンの"写真"を感動的な締めとする、そうするための段取りが全く不足しており、有名偉人OBの写真を見ただけで感動して変心など、むしろ主人公が小さい俗物にしか感じられないではないか。作り手もその程度なのかとすら思わされる。

ダンスシーンはそれなりに見せ場として機能している部分もあるが、スタイリッシュな映像を志向したのか、無駄に不自然な撮り方、カット割りが目立ち、最も大事な筈のダンスの動きがわかり辛い、本末転倒な局面が多いため、楽しみきるには至っていない。

特に、兄の得意技を使う事で主人公の克服や成長を表現し、劇中人物に衝撃を与え、映画の観客にはカタルシスを与えるべく設定されている、最後の最後の決めシーンにて、スピーディーにバシッと決めるのがカッコいい筈の動きを、事もあろうにスローでゆっくり見せてしまい、しかも必要以上に引きすぎた画面なせいで、迫力も何も無く、スローを終えるタイミングも的確ではないため、結局どこが決め所だったのかすらわかり辛い散漫な締めとなり、これが凄い技でこれで勝てたと言われて納得できるわけがない。

ダンス、青春、恋愛、友情と、ベタながら丁寧に描けば娯楽性と感動を得られる筈の題材を、安易に喰い散らかしただけの凡作にしか出来ないのは、作り手の志の低さによるものか。黒人文化のみにこだわって作る狙いが面白かっただけに残念。

ストンプやストリートダンスに興味があるなら観ておいてもいいかもしれないが、そうでないなら特段に鑑賞の必要は無いだろう。自己責任で。


tsubuanco at 17:17│Comments(0)TrackBack(0)clip!映画 

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