2007年10月03日

幸せのレシピ 68点(100点満点中)

バジリコをバジルと言い換える必要性
公式サイト

2001年のドイツ映画『マーサの幸せレシピ』のハリウッドリメイク作。監督のスコット・ヒックスは、本来シリアスなドキュメント映画をメインとしており、何故この様な安易な企画に採用されたのかは不明だ。

そしして実際、本作は『マーサの〜』のリメイクとしては丁寧さが足らず、特に乱暴な脚本は大味にも程がある。ヒックスは脚本にはクレジットされていないが、監督は責任者なのだから固まる前に何とかすべきだった。

元作との最も大きな差異は、姪(本作ではアビゲイル・ブレスリン演じるゾーイ)の父親の存在だろう。元作では、彼の存在によって"イタリア料理"という題材にストーリー的な意味が発生し、助っ人(本作ではアーオン・エッカート演じるニック)に彼女が懐いたのも、彼がイタリア人だったから、という納得行きやすい理由づけにも活かされている。

その顛末が、本作では結局、何故懐いたのかは不明なままで、そういうお話だからそうなのだ、と無理から受容するしかない。本作はその様な、劇中の描写で語るのではなく、お約束だからと押し付ける展開が続出し、ドラマとしてはあまり評価出来たものではない。

そもそも、ゾーイが何故ケイト(キャサリン・ゼタ=ジョーンズ)の手料理を食べなかったのか、その理由すら語られておらず(カウンセラーが話した理由は推測に過ぎない)、だからこそ余計にニックの料理を食べた理由もわからず、上っ面の決まりきった展開に終始している印象が強まってしまう事となる。映画の描写なら、本当に何も食べていなかったの様でしかないが、まさかそんな事もあるまい。いちいち不足しているのだ。

階下の住人の描写もまた中途半端かつ乱暴にすぎ、当初はまるで不審者の様に避けていた描写だったが、いつの間にやら「本当に良い人」となって利用されつくし、そのまま「単なる良い人」で終わってしまう。ケイトに対する想いや別の男を見た時の戸惑いなど、少しは心情描写らしきものを見せて物語を展開させるのかと思いきや何もなしとは呆れる他無い。これまた上っ面のご都合主義でしかない。

学校から児童虐待だと指摘される顛末も、明らかに障害を作り出すために無理からそうしているとしか思えないものだ。一言二言説明をして話せば通じる事を、何の必然性も無く話させず事態を悪化させるのは、脚本の都合でしかない。

大体、ケイトが単一の職場に固執する理由がそもそも不明瞭だ。自分のスタイルに自信を持って固執するのはいいとして、それを良しとしない人間が経営する店には固執する必要はあるまい。結局は独立しているのだから尚更だ。主人公の基本設定からそもそも描けていないのだ。

が、メイン三人を演じるキャサリン・ゼタ=ジョーンズ、アーロン・エッカート、アビゲイル・ブレスリンの三人の"名優"の演技、存在感の素晴らしさは、そうした脚本の駄目さ加減に目を瞑らせ、観客を楽しませるに充分すぎる事も確かだ。

彼女らの立ち振る舞い、台詞回し、掛け合い、のいちいちが、目を離す事が出来ない愉しみに溢れており、料理が題材の作品ながらそちらではなく、随所に配置されているケイトとニックのキスシーンの魅力的な設定、撮り方が極めて秀逸で、印象深いものとなっている事は特筆すべきだろう。

初めてケイトの家を訪れた時のスカしっぷり、次に玄関まで送った時の不意打ち的キス、ゾーイの目の前でのキス、厨房でのキス、と、様々なシチュエーションで見せられるそれは、演者二人の持つ魅力以上の感慨を表現しきって重要な見どころとなっており、特に朝食のテーブルにて、ゾーイの前で行われる場面などは、『リトル・ミス・サンシャイン』の頃より少しだけ成長して更に"女優"としての存在感を高めたアビゲイルの魅力までもがプラスされた、幸福感に満ちたシーンとなっており、観ているこちらまでが嬉し恥ずかしな気持ちにさせられてしまう。

脚本面では移植に失敗した感が強いが、隠そうとしても隠せない巨乳が絶えず自己主張しているキャサリン・ゼタ=ジョーンズの大人の魅力、子供らしさと美しさが同居するアビゲイル・ブレスリンの子役の域を超えた魅力、『サンキュー・スモーキング』『カンバセーションズ』など過去作も含め饒舌な二枚目がハマり役のアーロン・エッカートの、変わらぬお調子者色男の魅力と、出演者達の能力とセンス、および演出の見事さでマイナス点を大いにカバーし、お気軽に楽しめる娯楽作品へと持ち直した本作、出演者のファンならずとも、観ていて退屈する事はまず無いであろう事は間違いない。機会があれば。



tsubuanco at 22:41│Comments(2)TrackBack(11)clip!映画 

トラックバックURL

この記事へのトラックバック

1. 幸せのレシピ  [ ☆彡映画鑑賞日記☆彡 ]   2007年10月04日 23:24
 『一生懸命もいいけど、 ちょっとのさじ加減で 違う何かが見つかるかも。』  コチラの「幸せのレシピ」は、2001年のドイツ映画「マーサの幸せレシピ」(未見で〜す!今度チェックしてみるつもりです♪)をスコット・ヒックス監督がハリウッド・リメイクしたハートフ....
2. 幸せのレシピー を観ました。  [ My Favorite Things ]   2007年10月06日 11:03
またしても原題 VS 邦題 対決作品です。
3. 幸せのレシピ  [ 映画鑑賞★日記・・・ ]   2007年10月08日 18:33
【NO RESERVATIONS】2007/09/29公開(10/08鑑賞)製作国:アメリカ監督:スコット・ヒックス出演:キャサリン・ゼタ=ジョーンズ、アーロン・エッカート、アビゲイル・ブレスリン、パトリシア・クラークソン、ボブ・バラバンニューヨークでも1、2の人気を誇るマンハッタンの....
4. 映画「幸せのレシピ」  [ 日々のつぶやき ]   2007年10月11日 11:54
監督:スコット・ヒックス 出演:キャサリン・ゼタ=ジョーンズ、アーロン・エッカート、アビゲイル・ブレスリン 「マンハッタンのレストランでシェフをするケイトは、腕は超一流だが他人を信用せず一人で仕事をこなす完璧主義者で店のオーナーからはセラピスト通いを
5. 映画「幸せのレシピ」  [ 映画専用トラックバックセンター ]   2007年10月17日 23:37
映画「幸せのレシピ」に関するトラックバックを募集しています。
6. 幸せのレシピ  [ 日っ歩??美味しいもの、映画、子育て...の日々?? ]   2007年10月18日 16:46
ドイツ映画、「マーサの幸せレシピ」 をハリウッドでリメイクした作品です。 ニューヨークの人気のレストランで料理長を務めるケイトは、完全主義者。仕事に対する情熱は人一倍で、厨房では、料理人たちを取り仕切り、目の回るような忙しさの中、すえての料理を完璧に仕...
7. 幸せのレシピ♪素敵なスパイス  [ 銅版画制作の日々 ]   2007年11月03日 21:36
 スフレの次は?   11月になりましたようやく肌寒く感じるような季節になりましたね。   10月に鑑賞した映画の記事はまだまだ続きます。「幸せのレシピ」、MOVX京都にて10月12日鑑賞。   2大スターの共演キャサリン・ゼタ=ジョーンズとアーロン・エ...
8. 人生のレシピは、相手と向き合う事●マーサの幸せレシピ  [ Prism Viewpoints ]   2007年11月06日 19:58
“幸せ”は、ほんのちょっとの、さじ加減。 『マーサの幸せレシピ』 マーサの幸せレシピ - goo 映画 ドイツのレストランでシェフをしているマーサ。 完璧主義で自分の料理には絶対の自信があり、お客さんも大満足で帰??
9. ◆試写会・幸せのレシピ  [ 映画大好き☆ ]   2007年11月28日 14:01
4 一生懸命もいいいいけど、ちょっとのサジ加減で、違う何かが見つかるかも・・・。 【story】 ニューヨークでも指折りの人気レストランで料理長をつとめるケイト(キャサリン・ゼタ=ジョーンズ)は、妥協を知らない完ぺき主義者。 仕事に対する情熱は人一倍で、もちろ...
10. 幸せのレシピ  [ bibouroku ]   2007年12月02日 22:48
ドイツ映画マーサの幸せレシピ のハリウッドリメイク版は ほんわか泣けるラブストーリーでした。 あらすじは・・・ ニューヨークでも1、2の人気を誇るマンハッタンの高級レストラン“22ブリーカー”。そんな店の評判を支えているのが、超一流の腕前と妥協の
11. 映画「幸せのレシピ」  [ 茸茶の想い ∞ ??祇園精舎の鐘の声 諸行無常の響きあり?? ]   2008年10月26日 13:36
原題:No Reservations 五感をくすぐる魅惑の料理にクラシックそして恋の芽生え、あの"リトル・ミス・サンシャイン"の彼女の涙には心が痛むけど、??自分のレシピが最高の幸せ?? ケイト(キャサリン・ゼタ=ジョーンズ)は仕事一筋の独身女性で高級レスト...

この記事へのコメント

1. Posted by more   2007年10月12日 01:20
2  俺が見た限り、たぶん制作者側としては料理を使っていちゃつく二人って感じの絵がほしいだけで作ったの?って思うくらい、ひどいと思いました。
そう考えるとストーリーはそのような
状況を作るためだけにあるように・・。
そう思い始めたらもう、ダメでしたね。
せめて、どんでん返し!って期待したのに、想像以上に小さくまとまったような印象でした。
 でも、小ネタのような小さな演出、そのこだわったであろう状況でのシーンはほんと、一度はあこがれるような(笑)
恥ずかしいようで楽しいんですけど、
68点ってのは違和感ありです。

おいしい素材も料理方法によっちゃぁ
ダメになるってことですねぇ。
レシピは大切ってことを教わった映画です。
2. Posted by わとそん   2008年11月04日 19:06
WOWOWで見ました。
たしかに役者見てうっとりできればいい映画。それはそれで、まあ、なんとなくでいいんでしょう。

この記事にコメントする

名前:
URL:
  情報を記憶: 評価: 顔   
 
 
 
Comments