2007年10月09日

ローグアサシン 69点(100点満点中)07-280

サラダサラダと、サラダ教の教祖様か!
公式サイト

『トランスポーター』シリーズのジェイソン・ステイサムに『少林寺』のジェット・リー(リー・リンチェイ)と、東西アクションスターの共演にプラスし、ケイン・コスギ、デヴォン青木、石橋凌、ジョン・ローン、など、日本、アジア関係を扱った映画では定番とも言える俳優陣をズラッと揃えた、豪華キャストのアクション映画。

PVをメインとしてきたフィリップ・G・アトウェルが、初の長編映画となる本作の監督を務めているが、PV出身者が用いる典型を絵に描いたような、映画向きではない映像作りがまず、本作の娯楽作品としての楽しみどころを大いに減衰させてしまっており、悪い意味で贅沢な勿体なさが目についてしまう。

序盤で多用されていた、フラッシュバック的に画面をチカチカさせて細かくカットを切り替え画面を揺らす手法などは特に、スタイリッシュに見せようとして単に見辛いだけでしかなく、肝心の見せたいもの(本作序盤の場合はチタンの薬莢)への視点誘導を阻害するものでしかない。

また、アクション映画である本作で、スタントやCGをあまり使わなくとも素でアクションの出来るジェット・リーあるいはケイン・コスギらを迎えておきながら、彼らのアクションシーンでもまた、アップを多用しカメラを揺らし細かくカットを切り替えて、その巧さ、凄さを却ってスポイルしてしまっているのなら、彼らを起用する意味すら希薄である。特にジェットは顔は岡村隆史なのだから、アクションをしっかり見せないと無意味ではないか。

それにしても本作のケインは良い所が無さすぎる。記憶に残るのが耳を斬られたり顔面にホイールをぶつけられるなど、無残にやられるところばかりなのが更に哀しい。じっくり見せれば最大の見せ場にもなり得た筈の、ジェット vs ケインの対決をアッサリ流してしまった、その判断が大いに疑問だ。『スパルタンX』におけるジャッキー vs ユキーデ並の激闘に盛り上げる事も可能だっただろうに。

観客にどこをどう見せたいか、を意図すべき画面構成、映像の流れ、組み立てによる視点の誘導が行えていない局面が多いため、肝心なところで何が起こったのかを明確に捉え難い結果を生んでいる事も問題だ。

例えば、デヴォン青木がジェットにナイフを付きたてようとしたが奪われていた、という顛末にしても、それを見ている瞬間ではなくそういう事かと後になって理解出来る様では、映像として成立していないのだ。

最後の最も大切な筈のシーンで、誰がどう撃たれて倒れてどうなったのか、が伝わり辛い映像構成は完全な失敗でしかない。新任捜査官のゴイ(呉懿?)の役割が取って付けた様なものでしかない事も、そのわかりにくさを助長しているがそれはまた別の問題だ。

親友の復讐に燃える捜査官(ジェイソン)が、謎の殺し屋を追う、前半の展開は、古今東西のクライム映画にはありがちな定番であり、日本ヤクザのヘンテコな描写くらいしか大きな楽しみどころは無いながら、徹底して謎の存在として扱われているジェット演じる暗殺者に対し、いったいどんなオチをつけるのだろう、という興味は持続する。ここが本作のストーリー的な特色である。

両方の組織を同士討ちさせようとしている事はすぐわかっても、その理由を推測する事は、材料となる情報がほぼ無いため困難にしておいた上で、その事が最終的に、全ての事象と動機が結びつく正体明かしに対する観客の衝撃と得心を最大限としている。情報の少なさ、意図的な隠蔽を卑怯と思わせず逆にそこまでの不可解な要素に頷かされる、トリックの盛り込み方が秀逸だ。

それと同時に、ジェイソンが主人公だった筈の物語までもが、ジェットを中心に据えた構成へと変転してしまい観客を困惑させ、その隙にジェットは悪役からヒーローへと一瞬にして変移する、この構造トリックの仕掛けとタイミングも見事。

その仕掛けが上手かっただけに、正体判明の後にもう一つ明かされる真相は、その信憑性や必然性の無さから完全に蛇足でしかなく、衝撃の二段オチとして盛り上げるに至っておらず、却って中途半端な印象を最後に与えてしまっている事が残念に尽きる。先述の、終盤の映像の不味さもその要因のひとつ。

「目だけは変えられない」と言った当人が目を判別出来てなかった、など、ジェイソン側のストーリーや設定に限って粗が目立つのは、製作上の理由が何かあるのか、日本人役の吹替え台詞の不自然さ以上に気になるところだ。

また本作、日本語、中国語で話される台詞には英語字幕が表示されているが、各場面での第一声では先に中国語または日本語の字幕が表示され、それが英語字幕へと変化する仕掛けが用いられている。

これはビジュアル的な遊びだけではなく、中国語は黄色、日本語は赤色で表示する事で、誰が何国人で何語で話しているかが欧米の観客にもひと目で判別できる配慮を兼ねた、面白いものではある。日本人や中国人には必要ないが。

柳川組長との真剣勝負は、日本刀同士の殺陣ながらジェットは片手持ちで中国剣術風の動きをさせる事で、異種剣術戦の面白さで盛り上げており、この場面の盛り上がりが他のアクション場面で出せていなかったのが勿体ない。

アクション俳優の良さをあまり活かせていないアクション、目が疲れる映像、と、アクション映画としての普通の評価は厳しいが、正体トリックの上手さとヘンテコな日本描写でかなり挽回している本作、ネタバレ厳禁タイプなので、興味があるなら早いうちに観ておいた方がいいだろう。



tsubuanco at 16:47│Comments(5)TrackBack(19)clip!映画 

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石橋凌さん、頑張ってました「ローグアサシン」をレンタル。 意外性のあるストーリー。アクションも効いててオモローでした。 スターが多々出てるとお話がめちゃくちゃになるのが定番ですが、これはナイスなバランスでしたぞー。 イラストのケインコスギ、あんま似ず....

この記事へのコメント

1. Posted by RAS   2007年10月08日 21:53
本日、つい先程観て参りました。私の感想は、つぶあんこ様の書かれたのと同様です。もう少し肉体アクション場面が欲しかったですね。J.リーももちろん、J.ステイサムやケイン・コスギという素材がもったいない。
2. Posted by つぶあんこ   2007年10月08日 23:30
アクションはしてるのに、それをちゃんと見せてないところも多かったですしね。
3. Posted by 爽泉   2007年10月09日 12:39
>異種剣術戦の面白さ

『ラッシュアワー3』にはそれが足りなかったのが不満でした。
4. Posted by せぷ   2007年10月11日 22:14
はじめまして、せぷといいます。
今、つぶあんこさんのブログを読ませてもらっている最中なのですが、映画タイトル一覧の『サンキュー・スモーキング』のところが上手くリンクしていないように見受けられます。
レビューを読んでみたいので、よければ修正をお願いします。
5. Posted by つぶあんこ   2007年10月11日 23:42
ご指摘ありがとうございます。修正しました。

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