2007年09月03日

ライフ・イズ・ベースボール 22点(100点満点中)

「野球のどれいになれ!」
公式サイト

原題は『GAME 6』、メジャーリーグのレッドソックスが史上最悪と呼ばれる逆転負け試合を喫した、1986年のワールドシリーズ第6戦が行われた1日を舞台とした作品。

タイトルから野球をメインの題材とした映画かと思いきやそうではなく、野球ファンである中年劇作家を主人公に、当時のニューヨークの世相を背景として描きつつ、人生の悲喜劇を描いたドラマとなっている。

邦題は、主人公が作中で述べる「Baseball is life」なる台詞を元にしているのだろうが、主語と目的語を入れ替えてしまってはニュアンスが変わってしまうではないか。だが配給会社の人間にとって、そんな事はどうでもいいのだろう。

劇中で主人公が乗る何台ものタクシーの運転手が、東西の様々な人種である事を示すため、車内に表示されている運転手名をアップで見せるカットが、運転手が変わるごとに登場するのだが、その中に、運転手名の上に日本語字幕が被って、何と書かれているのか読めなくなってしまうカットが存在している事からも、配給会社が作品内容の事など全く気にしていない事は明白だ。

雑多な人種で構成されているニューヨークの縮図としてタクシーを用い、運転手と主人公の掛け合いで、その街に生きる人間を表現している、その作品意図を理解せず、名前がアップになるカットの意味も、ひいては映画そのものの意味を理解出来ていなかったのだから呆れる。日本の配給会社の仕事には絶望するばかりだ。

ただ、作品本来の完成度とは関係のないそうした障害を抜きにしたとしても、残念ながら本作の出来はあまりよろしくはない。

一見シリアスなドラマに見せかけてその実は、ツッコミを一切行わずに真顔で演じ続けるタイプの一種のコメディである事が、ある程度観ていると判明してくるのだが、それにしても、あらゆる人物を類型的、記号的に描きすぎ、その人物が決められたオチに向かって操られている事も、途中からハッキリと感じられる様になり、展開の必然性を明らかに省略しすぎている局面に遭遇する度、その事が余計に強く感じられ、物語世界には少しも入り込めずに引いてしまう事となる。

そのため作り手が狙っている様には仕掛けを受容出来ず、悪い意味で「そんなバカな」と呆れてしまって楽しめない結果となるのだ。

どんなジャンルでも似た要素はあるが野球ファンは特に、応援するチームに自分が帰属している様な気になって、主従が反転しがちとなり、客観的には非常にみっともない様相を呈するものだが、本作ではそれを殊更にディフォルメして、熱狂的なファンにありがちなシチュエーションと、普通に考えてあり得ないシチュエーションを交錯させる事で、ストーリーやオチの面白さを出そうとしてる事は理解出来るが、引いた視点で観てしまうために、ありえなさばかりが目についてしまい楽しめない。

主人公と愛人とがイチャイチャする様を、手前に遮蔽物を配置して見え隠れしながら横移動するショットを序盤に用い、終盤ではそれと同じ手法を、主人公が憎い相手を銃で撃ちまくるシチュエーションにて用いる事で、対比としてのおかしさを構成するなど、ところどころに面白さが感じられる映像づくりもなされているだけに、共感出来ないストーリーが残念だ。

主人公達と同様に狂的な野球ファンならば感出来る部分もあるかもしれないが、そうでもないと楽しみきる事は難しいのではないか。自己責任で。


tsubuanco at 16:58│Comments(0)TrackBack(0)clip!映画 

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