2007年10月27日

クローズZERO 53点(100点満点中)

タイマンはったらダチじゃあ!
公式サイト

月刊少年チャンピオン』に1991年から8年間連載され、現在は続編である『WORST』が連載中の、高橋ヒロシによるヤンキー漫画『クローズ』を実写映画化。ではなく、原作漫画の前日談(ZEROはエピソード0の意)となるオリジナルストーリーを、映画オリジナルキャラクターを主人公として描いたものである。

よって原作の主人公である坊屋春道は登場しないが、作品の舞台となる鈴蘭高校を春道が訪れる前年度のエピソードなため、ヒロミ、ポン、マコ、リンダマン、阪東など、原作キャラクターの1年前の姿が登場し、原作世界との映画世界とを繋ぐ役割となっている一方で、映画版の主人公・源治(小栗俊)と同学年である筈の桂木が一切登場しないなど、原作ファンにとっては首を傾げてしまう様な原作との乖離、矛盾となる要素もいくつか散見されるのが残念。ファンの多い作品だけに、関連を持たせるなら徹底してほしかったところだ。

だが、そうした枝葉より、高校生および同年代の少年(には見えないが)達だけの世界として描かれている原作とは異なり、ヤクザや警察などの大人、あるいは女性キャラクターが物語を構成する要素の一つとして配置されている事の方が、原作とのカラーの差異としては大きい。

これによって、舞台と一部キャラを同一としながらも、単に主人公やストーリーの違いだけでなく、作品の根底にある世界観そのものが別物となってしまっており、監督の三池崇史が得意とする極道Vシネとしてのカラーが前面に出ている感が強い。

また、狭い世界ながら大量のキャラクターが群像劇的なドラマを平行して展開する原作は、長期連載の長編だったからこそ行えたのであり、本映画版において複数のエピソードが同時進行するストーリー構成は、時間の限られている2時間程度の映画としては明らかに容量オーバー気味である。

源治の家庭、芹沢(山田孝之)の相棒の病気など、それぞれの戦うバックボーンとして用意したであろうエピソード、キャラクターらが、却って本筋の盛り上がりに水を差す要因となっていた事は、やはり詰め込みすぎが原因だろう。

特に病気の話は、源治と芹沢の共通の友人というキャラクター意義を活かせておらず、芹沢の葛藤要因としてのみの役割としたせいで、物語の焦点を散漫にするだけでなく、ウェットな流れを持ち込んでテンションを停滞させており、無くても何ら問題なかっただろう。(三池作品はテンションで押し通した方が面白くなるのに、わざわざ途中で失速させて緩急を持たせようとしているが、大抵が失敗している)

チンピラの悲哀を描いたエピソードは、シュールとベタを組み合わせたギャグをストーリー進行に絡め、人情と根性の男のドラマに持ち込む、三池が得意とする極道ストーリーの典型として比較的上手く行っているが、これもまた必要があったかと言われれば疑問だ。何より、少年達の青臭いケンカ至上主義で押し通すべき世界に、大人の世界を持ち込んだ無粋さはいただけない。

製作上の大人の事情がもっとも前面に出ている、黒木メイサ演じるヒロインの存在だが、これは映画というハレの場において華を持たせる役割として、ストーリー内では必要以上に前に出過ぎる事なく、原作同様に女に免疫の無いキャラクター属性を逆手に取る様な、中盤のコメディ展開である合コンエピソード(原作において春道とブルが兄弟分となるエピソードを彷彿させもする)をメインの登場場面とするなど、浮いた存在とならない様にしようとの努力が感じられはする。

だが、ライブシーンの長さと多さ、それをクライマックスの乱闘シーンに被せるてしまう事の無意味さ、など、黒木メイサのプロモ臭がありありと感じられる部分を、もう少し巧妙に本筋に馴染ませる事は出来なかったものかと苦笑させられる事もまた間違いなく、何か一つでも歌う理由を設定しておけば回避出来たのに何もしなかったのは、努力を怠ったのかあるいは意図的に放棄して反意を示したのか、どちらにせよ観客からすれば関係のない話である。

音楽絡みで言えば、ウルサいBGMに被せてストーリー上必要な台詞を言う時だけBGMのボリュームが下がって台詞を聞き取りやすくしている事がバレバレで違和感を感じる場面が中盤にあり、プロの仕事と思えない杜撰さに呆れてしまった事も問題だ。

映像的にもやたらと画面が狭く、乱闘シーンでは映画的に大掛かりな事をしながらも撮り方がVシネなままなので、勿体なさを感じさせられる。

土砂降りの雨の中での長い乱闘シーンなどは、映画ならではこそ行えるシチュエーションであり、『300』ばりにスロー&クイックを多用して格闘の迫力を出す手法は成功しているが、戦っているどちらの側も黒の学ランなため、顔の視認出来るメインキャラ以外、戦局の推移が伝わらないのが困る。(海老塚トリオの実況でそれを補完してはいるが)

とは言え、原作とは切り離して"三池崇史のヤンキー映画"として考えれば、まあこんなもんだろうと納得できるレベルに、コメディとアクションをそれなりに楽しむ事は可能であり、いろいろと制約の多いであろう大作扱い作品にしては頑張った方だろうか。出演者ファンなら出番の配分もバランスよく、文句も出ないだろう。

レンタル待ちでも充分、というよりは、Vシネノリなだけに自宅でのツッコミながらの鑑賞の方が向いているかもしれない。興味があれば。



tsubuanco at 17:53│Comments(6)TrackBack(23)clip!映画 

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この記事へのコメント

1. Posted by デビルマン兄弟   2007年10月29日 20:07
ストリートビーツが吉田ヒロにしか見えなかった。こうゆう人達が亀田ファンなんだろうなとゆう客層でしたね。内容は、意外と原作臭が残っていた点は、よかったと思いますが、ご指摘のように詰め込みすぎだったかなと思います。
2. Posted by 鴉   2007年10月29日 23:28
山田孝之の演技は結構好きだったけどなぁ・・・。
3. Posted by つぶあんこ   2007年10月30日 17:34
出演者ファンと原作ファンと、客層が二分してた様な気もしますが、ここまで世間に人気があるとは意外でした。

三池崇はスキヤキウエスタンの負けを取り戻して首が繋がった、ってトコですかね。
4. Posted by にら   2007年11月01日 15:39
最後の頂上決戦を客観視する存在として、ヒロミ、ポン、マコを配しておきながら、彼らの見た目ショット、つまり、校庭を俯瞰するショットがひとつもなく、彼らに状況を言葉だけで説明させてるあたり、「ホントに大乱闘なの?校庭の隅でチマチマ殴り合ってるだけじゃないの?ホントに200人もエキストラ揃えたの?実は30人くらいじゃないの?」、なんて思ってしまいました。

俯瞰ショットやるには、そのままだとフレーム内に映り込んじゃう雨を降らす特機やらライトやらを退けないといけないけど、そんなことしてる時間がない、ってことで断念しただけかもしれませんが(笑)。
5. Posted by つぶあんこ   2007年11月01日 17:57
別の日に撮ったんでしょう
6. Posted by (´ω`)   2012年05月02日 20:29
1 面白いと思って見ていたのに
こんないわれかたをするのは
良い風に感じなかった
記事であった

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