2007年11月01日

スターダスト 83点(100点満点中)

どこから見てもスーパーマンじゃない
公式サイト

イギリスの作家ニール・ゲイマンのライトノベルを、マシュー・ヴォーン監督により映画化。

ミッシェル・ファイファーやロバート・デ・ニーロなどの一流キャストおよび、大作レベルに作り込まれたCGや特撮映像を予告やCMで見せられるに、正統派のファンタジー冒険映画を期待して鑑賞に臨んだ人も多い事と思うが、本作はそれに反して、王道的ヒロイックファンタジーの皮を被った、アイロニカルなシュール・ブラックコメディとして作られている事は、映画が始まって早い時点で気づく筈だ。

監督のマシュー・ヴォーンの前作『レイヤー・ケーキ』もまた、正攻法から少し外れた観点による作品だった事も踏まえると、捻りの無い原作を意図的に皮肉って改変し、パッと見の見た目と内実のギャップを狙っているとは、容易に想像がつく。

それが顕著に現われているのが、デ・ニーロ演じる船長の、原作とはかけ離れたアレンジ具合であり、彼絡みのシュールすぎて困る程の描写のあれこれだろう。フレンチカンカンに乗せて踊る船長の場面が、その頂点として用意されているが、その前段階として、主人公トリスタンを衣装部屋に招き入れた時に、何故か女物のドレスが大量にある、という"ボケ"が伏線となっている事などを考えると、何も考えていない様な世界設定やストーリー展開と思わせておいて、"コメディ"の部分だけはしっかりと構成する事で、よりシュールとブラックが強調される様にと計算されているのだと理解出来る。

イギリスに限らず欧米の笑いは、ボケに対してその場で突っ込まず、観客自身がツッコミ役となって笑いどころを拾っていくのが基本である。本作もまた、あらゆる部分に"ボケ"や"ネタフリ"を自ら見出して、ニヤニヤと楽しむのが正しい鑑賞法だろう。

船長に散髪されている主人公の髪の毛が、カットが切り替わる度に伸びていく場面などは、敢えて誰も突っ込まないことでシュールなおかしさを最大限に膨らませている秀逸なギャグと言える。

何の伏線も無くどんどん新キャラが登場しては消えていく脈絡の無さもまた、この種のファンタジー冒険譚の御都合主義を皮肉っている事は明白であり、いきなり登場していつの間にか消えているユニコーンなどは、どう考えてもその存在自体が"ボケ"である。「どこ行ったんだよ!」と突っ込んでくれないとむしろ困るのだ。

ディズニー風な家族向け映画の体裁を装いながらも、ファーストシーンでいきなり男女が会ったその場でセックスするわ、簡単に人は死ぬわと、やたらとエログロの展開、描写が多用される事も、観客の"安心"に冷や水をぶっかける狙いの意地悪さが感じられるものだ。

ヒロインの"輝き"は明らかに愛というよりも発情を表現したものであり、セックスの事前や事後の場面が何度も登場し、子供を連れてきた親を困らせようとの狙いは楽しい。

サブストーリー的に挿入される、王子達の死に方と幽霊の顛末などは、殺し合いと残酷な死をコミカルに戯画化する、ブラックコメディの象徴としてニヤニヤと楽しませられただけに、最後も何らかの皮肉なオチが欲しかったところだ。

また、主人公は冒険を通じて精神的な成長を遂げはするが、結局最後まで自分の手では"敵"を一人も手にかけず、周りでどんどん勝手に片付いていってしまうあたりも、当然意図的なものであり、それとは反対に予定調和そのものな、投げやり気味なラストの締め方は、凡百の「めでたし、めでたし」を敢えてベタに踏襲して、テンプレートを皮肉ったものとは、エンディング曲のベタベタさからも読み取れる。

それでも表向きは一応、家族向け映画として作られているので、残酷なシチュエーションは目白押しながら直接的な描写は控えめとされており、例えば、序盤で魔女が生きた動物の腹を割いて臓物で占いを行う場面と、終盤にて魔女が動物に喰い殺される場面との対比など、もっとハッキリと状況を映していれば、よりアイロニーが明らかになっただろうと思うと残念だ。

『パンズ・ラビリンス』とは真逆の方向性にて、既存のファンタジージャンルを皮肉ったコメディ大作映画である本作、正統派ファミリー映画を期待して観ると面食らうだろうが、そのショックも楽しみの内と捉えられれば文句無しに楽しめる筈だ。機会があれば。



tsubuanco at 17:02│Comments(5)TrackBack(19)clip!映画 

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この記事へのコメント

1. Posted by 咲太郎   2007年10月31日 23:27
デ・ニーロの船長がいい味で
彼を観に行くだけでも価値はあるかなあ
と思います。
2. Posted by kame   2007年11月01日 09:34
これは期待以上に楽しい作品だったので、高評価は嬉しいですね。
散髪する毎に伸びる髪とか、ツッコミのし甲斐がありすぎて笑いました。
デ・ニーロ、ファイファー(その他脇役)が良かったのはもちろんですが、私は主演二人が良かったです。星のわりに普通すぎるクレアとか、ユニコーン並みのツッコミやすさにニヤニヤしました(笑)
3. Posted by 力薬   2007年11月02日 15:47
この映画でニール・ゲイマン氏の本に興味を持ちましたが、あんこさんがおすすめしている同氏の作品などございますか?
4. Posted by つぶあんこ   2007年11月04日 00:10
ゲイマンが原作を書いているDC VERTIGOのアメコミ『サンドマン』が、10年ほど前に日本語版が出ているので、読む機会があればオススメです。
5. Posted by 力薬   2007年11月04日 18:57
近場の書店にアメコミは置いてませんが、近日辺り大型書店に立ち寄る機会がありますのでその時に探してみます。
ご回答ありがとうございました。

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