2007年10月17日

サイボーグでも大丈夫 40点(100点満点中)

奴はとんでもないものを盗んでいきました。あなたの心です
公式サイト

『JSA』『復讐者に憐れみを』『オールドボーイ』など、過去に復讐する人間の物語を様々に作り続ける、パク・チャヌク監督の最新作。

精神病院を舞台に、精神病患者達の恋愛コメディとして描かれる本作、主人公を始めとする患者達の、それぞれの症状に即したかたちでの妄想と現実が入り乱れる映像構成がまず、表層的な特徴となっている。

のだが、一人の人物の主観による描写でありながら、映像としてはその人物を含め客観視した"神の視点"によって基本的に見せられるため、現在の映像が誰の主観によるものなのか、あるいはどこまでが現実で妄想なのか、を、観客自らが判別する事を要求されるため、作品世界にまず入り込む段階で、観る人を選んでしまうかもしれない。

家族に起因する主人公のトラウマ、妄想と現実が入り交じった、カラフルでエキセントリックな映像、と、フランス映画『アメリ』を想起させる作りは意図的なものだろうが、舞台を韓国に置き換える事で家族関係の持つ意味が異なり、悲劇性が強まっているのが興味深い。

そこから発生する主人公の歪んだ自意識と、元となる過程を帰納的に描写していく事で、当初はキチガイを見て笑っていた筈の観客が、その相手が人間であると思い知らされていき、苦悩を追体験させられるが故に、終盤の"救い"となる展開に感動させられる事となる。

主人公ヨングンの、祖母に対する執着と母からの刷り込みが要因となっての精神障害を、それを自覚して克服させるのではなく、今のままを受け入れてそこから次なるステップへと発展させていく"プロポーズ"シーンは恋愛映画としては極めて無難だが、その前段階としてライスメガトロンを埋め込む(フリをする)くだりにおいて、ヨングンの家族観と対を成す、イルスンの母に対する想いを、物理的(本当に埋め込む)ではなく、精神的に託す場面こそが、本作の作品的特徴を活かしたラブシーンとして優れていると言える。

だが、そうした秀逸な恋愛描写もありながら、無駄に長いキスシーンの様な、表層的なギミックを用いいただけで絵的な面白さから奥に繋がるものの無い、蛇足的に感じられるラブシーンもあるなど、バランスの悪さを感じさせられる局面が多々ある事が難点か。

それは、母親や祖母との過去の関わりが彼女の狂気のバックボーンとなっていながら、現在の彼女の周囲、精神病院の患者や医者達は単なる記号、据え物でしかないといった、人物配置における極端な扱いの差異が明白すぎる事や、先述のプロポーズおよび食事達成をひとまずのクライマックスとしながらも、そこから更に物語を続けてしまう事からも感じられる。

同監督の過去作と同様の"復讐"を、本作では中盤で早々に遂げさせてしまい、そこから先の"未来"を描いていく事は、監督自身の製作姿勢の方向性が現われたものであろうが、その"向かう先"を余計な段階まで示しすぎたのではないだろうか。

少女と二匹の猫が、一枚ごとに一コマ漫画的オチを付けてどんどんエスカレートしていき、その"思い込み"自体が彼女を取り巻く悲劇の象徴として、絵本の様に提示される"七つの戒め"の表現、用い方は面白く、監督のシニカルなセンスの高さを感じさせられ、指マシンガンや口弾倉のデザインが『WILDC.A.T.S』のレディ・トロンを彷彿とさせたりと、ビジュアル的なパロディも楽しいが、そのセンスの使い所のバランスに失敗した感が強いのが残念だ。

主人公カップルの図式を韓流恋愛映画のテンプレートとして持ち込むなど、これまでの同監督作品とは表面的な趣は異なるが、その根底になるものは変わらず、相変わらず観る人を選ぶヘンな映画である。自己責任で。



tsubuanco at 17:35│Comments(2)TrackBack(4)clip!映画 

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【I AM A CYBORG, BUT THAT'S OK】2007/09/15年公開製作国:韓国 監督:パク・チャヌク出演:チョン・ジフン、イム・スジョン、チェ・ヒジン、イ・ヨンニョ、ユ・ホジョン人間とサイボーグの純愛?

この記事へのコメント

1. Posted by こしあんこ   2007年11月04日 18:21
つぶあんこさんって彼氏いるの?
2. Posted by つぶあんこ   2007年11月06日 19:06
いません。

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