2007年11月13日

超立体映画 ゾンビ3D 13点(100点満点中)

飛び出す内蔵人間シタイダー
公式サイト

近代ゾンビ映画の原点となった名作、ジョージ・A・ロメロ監督の『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』のリメイクとして作られた3D映画。原題は『NIGHT OF THE LIVINGDEAD 3D』そのまんまだ。

『ナイト〜』のリメイクと言えば、トム・サビーニ監督による1990年の『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド 死霊創世記』が既に存在し、こちらは、終盤の展開が大幅に改変されていながら、そこに至るまでの展開がほぼ原典に忠実な事が功を奏し、時代性を考慮して娯楽性を高めた、優れたリメイク作として、ゾンビ映画好きに評価を得ていた作品である。

そんな良質のリメイクがある上で、今回また新たにリメイクを行うからには、余程の質の高い仕事が要求される筈ながら、それどころか普通のゾンビ映画としても、あるいは単純に立体映画としても、どうにも評価し難い駄作に終わっており残念に尽きる。

ファーストカットが旧作と同じ映像な事で、まず首を傾げさせられるも、それがTVモニターに映っている映像である、として、今回の作品世界への導入とする始まり方は上手く、その後、旧作が放送されているTVをみんなで見ている、という展開に繋がっていく前フリともなっているまではいいとして、『ナイト〜』を作品世界に存在するフィクション作品とした設定と、それをメイン人物の何人かが見ていて内容を知っている、という事が、物語展開において全く関わらないのでは単なる出オチでしかない。

少なくとも、TVで見ていた内容と、現在自分達が置かれている状況の近似性に触れるなどすれば、そこから話を面白く転がす事も出来た筈なのに、何もしなかったのは作り手が何も考えていなかったからとしか思えない。

そんな風に、何から何までが何も考えずに行き当たりばったりに終始し、兄妹が墓地でゾンビと邂逅し、妹が逃げ込んだ家がゾンビに囲まれる、程度の大枠にしか『ナイト〜』の内容を用いていないのなら、リメイクではなくパロディとでも名乗っておいた方が、世のゾンビファンを刺激する事もなかったかのではないだろうか。

また、ゾンビ映画というジャンルでは、"生ける屍"という戯画化された存在を通じて、人間の秩序や社会の有りようを投影させる、などのドラマ展開がなされる事があり、『ナイト〜』でもまた、館内に立て籠った人間達の確執や対立、あるいは人間側がゾンビを虐殺する光景などによって、そうしたテーマ性を娯楽性と両立させて浮かび上がらせていた。

当然そこまでのレベルを求めはしないが、だが本作における人間同士の会話、揉め事などの描写が、ただダラダラと話しているだけで中身がなく、単なる尺稼ぎでしかないのは程度が低すぎる。話が通じなくて困る、といった狙いではなく、つまらなくてイライラするだけなのだからどうしようもない。

立て籠っている状況設定を活かした攻防もなく、ゾンビに噛まれてゾンビ化する事に対する緊張感もなく、ゾンビ化の理由が極めてローカルなので、世界が滅ぶ絶望感もなく、それならそれで、ユルい空気を演出としたシュールな作劇にするでも無く、本当に何も考えていないのだろう。

立体映画としても、そのギミックを活かした映像が、特にゾンビ関連ではほとんど見られず、タバコを持っている手を前に突出すなど、どうでもいいシチュエーションばかりで立体感が強調されるのはどういうつもりなのか。

銃撃シーンをスローで強調して見せている割には、弾が画面手前ではなく画面下に移動するのでやはり立体感がなく、何をしたかったのか不明だ。

ダメホラー映画のお約束として、登場する女性がことごとく巨乳で、そのうち一人は全裸になってセックスシーンも見せてくれるが、赤青の3Dメガネを通してなので今イチ楽しめないのが勿体ない。ここまで来ると立体映画である事さえジャマになってくる。

ゾンビ映画に駄作が多いのは常識だが、それにしても名作『ナイト〜』の名を冠してこの体たらくは問題だ。『ゾンビ3』や『サンゲリア』などの様に、C級ゾンビ映画であっても語り草となる面白場面が存在するわけでもなくただ退屈なだけで、立体映画としてもあまり機能せず眼が疲れるだけな有様では、今この時代にこんな作品を大手シネコンで上映していいのか、と、根源的な疑問すら沸き上がってくる始末だ。

Z級ゾンビ映画愛好者以外の、普通の映画好きには間違ってもオススメしない。自己責任で。



tsubuanco at 12:01│Comments(4)TrackBack(6)clip!映画 

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1. ★「超立体映画 ゾンビ3D」  [ ひらりん的映画ブログ ]   2007年11月15日 02:11
今週の平日休みも川崎のシネコンはしごしての2本立て。 その1本目。 えーい、もう今月はホラー特集に決定だーーー・・・の一作。 ななな・なんと今月5本目のホラー映画ですっ。 あんまり得意分野じゃなかったんだけどなぁ。。。
2. 超立体映画 ゾンビ3D  [ まじめにふまじめ★ ]   2007年11月15日 19:42
ぶぁはははははははは!!!(≧∇≦)ノ彡☆ これホントに新作映画なの? マジで?
3. 超立体映画ゾンビ3D/ Night of the Living Dead 3D  [ 我想一個人映画美的女人blog ]   2007年11月15日 22:02
前にも言ったけど、いまなぜかゾンビ映画がアツい{/ee_1/} これ、 超立体映画{/ee_1/} ってからには3Dがウリです、もちろん。 その昔、ディズニーランドにはマイケル・ジャクソンが飛び出して踊る、"キャプテンEO"っていうのがあったっけなー。 あれも入り口で渡された3D...
4. #168.超立体映画 ゾンビ3D  [ レザボアCATs ]   2007年11月16日 00:59
'68年のジョージ・A・ロメロ『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』の3D版リメイクと謳っておきながら、その実、B級感が異様に散りばめられていた、まさに珍作。「何かが分かってる人たちが作った」としか言えない。そして、その何かは、私には言えん。
5. 「超立体映画 ゾンビ3D」観てきました(´Д`)  [ りんたろうの☆きときと日記☆ ]   2007年11月17日 21:11
☆「超立体映画 ゾンビ3D」 監督:ジェフ・ブロードストリート 出演:ブリーアナ・ブラウン、ジョシュア・デロシュ、シド・ヘイグ、グレッグ・トラヴィス、ジョアンナ・ブラック、ケン・ワード、アリニア・フィリップス、マックス・ウィリアムス 母の埋葬に参列するため、...
6. 超立体映画 ゾンビ3D  [ ホラー映画勝手にランキングブログ|ホラキング ]   2009年03月06日 22:07
ナイト・オブ・ザ・リビングデッドのリメイクですが、リメイクなら死霊創世記があるのでなんでこんな作品を作ったんでしょうか?しかも3Dもたいしたことないし、映像もチープです。 いたるところにチンケなCGが使われているのですが、これがピントがずれていて興醒めです。 ...

この記事へのコメント

1. Posted by 天の道を往き総てを司る男   2007年11月13日 18:23
つぶあんこさんは
前評判のかなり悪い作品も
劇場で見られていますが
駄作を見るのは辛くないですか?
2. Posted by つぶあんこ   2007年11月14日 09:13
駄作かどうかは自分で観るまではわかりませんよ?
3. Posted by ひらりん   2007年11月15日 02:15
「インベージョン」に続き、またまたつぶあんこさんの採点10点台の作品をトラバしてしまいました。
それにしても、3Dのわりには、あまり飛び出し感がなかった気がするんですが、
こんなもんなんでしょうか??
4. Posted by つぶあんこ   2007年11月15日 09:13
画面手前に突き出す構図をほとんど使ってないからでしょうね。それとレンズの選択。
だから背景に奥行きがある事は視認出来ても、立体映画ならではのインパクトは皆無という結果に。

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