2007年11月15日

ホステル2 89点(100点満点中)

チンポハサミ虫〜
公式サイト

イーライ・ロス監督による、旅人受難系スラッシャーホラー映画の続編。

前作ラストで唯一逃げ延びた青年の、その後の運命をプロローグとして見せられる本作は、世界観も時系列も完全な続編として製作されており、前作を観ている者は、"続き"にフォローがある事に喜び、未見の者は、特殊な世界観を簡単に教えられる。続編作品の導入としては理想的だ。

が、一発ネタ的なアイディアが受けたホラー映画の続編ともなれば、また同じ様な事を繰りすだけで面白くするのは難しい。

例えば『ファイナル・デスティネーション』シリーズの様に、同じ事の繰り返しながらクオリティを維持しているものも中にはあるが、『デモンズ2』『バタリアン2』など、同じ事の繰り返しが完全なマンネリに堕しているパターンの方が多い事は確かだ。

一方で、『悪魔のいけにえ2』の様に、同じ世界観を継承した正当な続編で、同じギミックを用いているにも拘らず、視点・観点を変更、あるいは追加する事によって、1作目とはカラーの異なる別ベクトルの面白さを持った作品として成功する事例も存在し、本作はそれに当てはまる方向性によって作られている。

前作では一貫して被害者となる青年の視点で描かれ、観客はこの愚かな被害者を冷ややかに見下しつつも、自分もまた被害者の立場に追いつめられた様な感覚に次第に追い込まれ、恐怖と痛みを体感し、ためにラストの"リベンジ"には、少なからずのカタルシスを得られるべく想定して作られていたが(それが成功していたかどうかは別として)、今回は、同じく被害者となる若い女性の視点を基調としつつ、それとは別に、加害者側に立つ人物達の視点に拠る描写も平行させる事で、前作で設定された特殊な作品世界の有りようを、より多面的に体感して楽しむ事が出来る様になされているのだ。

加害者側のドラマが追加される事で、謎のままとされていた"組織"の、その内実の一部が具体的に提示され、ホラーとしての神秘性が薄れてしまう、という弊害も確かにあるが、本作はもはやホラーである事を放棄し、前作で作られた作品世界を用いて、極限状況における人間の悲喜劇をアイロニカルに描こうとしているとも見受けられるので、今回に関して言えば、その事はマイナスとはなっていない。

アメリカ人に対するブラックな揶揄が設定に用いられていた前作の意図を引き継ぎ、今回は加害者側としてドラマに参加する二人の男を、まず表層的な部分でアメリカンキャラクターの典型とも言える2タイプとして見せ、マッチョ系で大口叩いていた男が実はヘタレで、気弱タイプの男がその劣等感から残虐性に目覚める、といった内面の逆転構図を描く事で、同じ様にアメリカ的価値観、思想を嘲笑しているのが面白い。

また、前作ではバランスの悪かった、残酷描写の直接、間接の使い分けも、今回はそれが完全に意図的なものとして操作されており、例えば金髪美女が殺されるくだりを監視カメラの映像とした上で、その"瞬間"を警備員で遮らせて観客に見せない、といった、観客に客観視させつつ先を想像させ、直接見せるよりも感情を刺激する事を狙った映像表現が多用されている事も、前作より進化が見られる部分だ。

またその場面によって警備室の様子をさりげなく観客に教えておく事で、後の展開への前フリともしている、映像演出とストーリー構成が見事に絡み合って作品が構築される、理想的な状態が生まれていると評して過言ではない。

ただし前半の電車場面の様な、ヒロイン達が誘われていく前フリが無駄に長く、どうなるかはわかっているのでさっさと進めてくれと思わされるじれったい展開は、あまり良くしたものとは言い難い。ホステル到着後の、男も女も変わらない浮かれポンチな愚かさの描写や、世界観を明確にするストリートチルドレンの動向などは秀逸だっただけに惜しい。

美人に限って脱がず、主人公に至っては水着すら見せないのに、一番のブスは脱ぐなど、娯楽的観点で不満を覚える部分も多少はあるが、続編である事を最大限に活かして新しい境地を迎え、前作を凌駕する面白さを得る事が出来た本作、当該ジャンル映画好きなら間違いなく楽しめる筈だ。機会があれば是非。



tsubuanco at 17:21│Comments(7)TrackBack(4)clip!映画 

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この記事へのコメント

1. Posted by 爽泉   2007年11月14日 10:12
「映画監督って何だ!」のレビューがタイトル一覧から見られません。
2. Posted by つぶあんこ   2007年11月15日 09:07
ご指摘ありがとうございます。修正しました。
3. Posted by 天の道を往き総てを司る男   2007年11月16日 20:51
私はデモンズ2けっこう好きです。
テレビからデモンズが出てくるという
発想はおもしろかったと思います。

確かにデモンズの焼き直しでは
ありますが、どこにいてもデモンズは
現れるという恐怖を感じました

日本だったら貞子が出てきそうですけど
4. Posted by 力薬   2007年11月17日 00:32
前作が割と面白かったので期待してたのですが、ゾンビーノ共々近場で上映されずレンタル待ちを喫しています。ゾンビ3Dがうらやましいです…おっぱい度はどうでしたか?(´・ω・`)

野暮かもしれませんが、三段落目の繰り(返)すの部分の修正を宜しくお願いします。
6. Posted by つぶあんこ   2007年11月19日 11:24
デモンズ1と2は、ダリオ・アルジェント主導によるアイディアやストーリーは悪くないどころか非常に魅力的なんですが、二世監督ランベルト・バーヴァによるどうしようもなくダメダメな演出とカット割りによって全てが台無しになっちゃった残念作なんですよね。

おっぱいは逆さ吊りの重力によって珍しい形が見られます。
7. Posted by レンタルで今観ました   2008年02月24日 16:22
どうも、いつも楽しみに読ませて頂いております。

>美人に限って脱がず、主人公に至っては
>水着すら見せないのに、一番のブスは脱ぐなど

こういう男でもよう言わんことを平然とズバっと言ってしまうあんこさんが大好きですw

ラストは前作より好きでした、僕は。
カニバリズムはレクター博士のオマージュですかねえ?
短めにサックリ纏まってるのも良かったです。
前作は前半の「行きずりの女と寝たよ!」の描写が無駄に長かったですからねw
8. Posted by つぶあんこ   2008年02月25日 11:34
1では最初な事もあってどういう話かわからなくさせるためや、後半とのギャップなど前半が長い意味はあるんですけど、それにしても長すぎですよね(笑

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