2007年11月26日

ミッドナイト イーグル 3点(100点満点中)

朝鮮人に朝鮮語を喋らせない差別映画
公式サイト

高嶋哲夫による同名小説を映画化。

松竹配給の正月映画としては大本命の扱いらしく、LAでプレミア上映などやたらと宣伝に必死な事は伝わってくるが、予告編を見る限りではどのジャンルに属す映画なのかすらよくわからない有様で、観る前から地雷臭はプンプンしており案の定、ダメな邦画大作の究極典型とも言える、方向性が曖昧で中途半端に終始する出来となっている。予告編の制作スタッフも苦労したんだなあと同情してしまう程だ。

そもそも原作の時点で、政治や軍事の考証すらロクに行えておらず、読者を騙すリアリティに欠けている上に、登場人物の行動に一貫性が無いため、何故そうするのか、そうなるのかに全く説得力が無く話の都合で動かされている事がバレバレで、読んでいて引き込まれるものが特に無く、意外な事が一つも起こらない事が意外で驚かされてしまう、子供騙しな作品ではあったが、そこから更に輪をかけ、意図的かと思える程にダメな部分をクローズアップしては面白くなる筈が無い。

雪山でテロリストと戦う作品と言えば『ホワイトアウト』、北朝鮮工作員に奪われた最強兵器を奪還する話と言えば『亡国のイージス』など、本作と同ジャンルに括られる類の邦画大作は近年にもいくつか存在するが、それらは、地の利に長けた主人公が工作員を出し抜き翻弄して孤軍奮闘する、という設定をエンターテインメントとして前面に押し出し、その戦術の面白さで観客を楽しませる事には成功していた。

本作でも一応は、主人公(大沢たかお)とパートナー(玉木宏)は20年来の登山者で、その能力によって工作員に対抗し自衛隊員の協力者となるべく理由付けとされてはいるが、その設定が作品内に活かされている部分がほとんど無いに等しいのだから呆れる。

二人が登り始めてすぐに「ここなら先回り出来る」などと急斜面を登る場面があったが、実際には自衛隊にも工作員にも先行されている有様で、結局のところ、「この山は俺たちの方が詳しい」など、台詞によって説明する事はあれど、二人の登山能力が、何らかの描写として用いられている場面がどこにあるのだろうか。

その点に限らず、こいつは何者なのか、今何が起こっているのか、と、何から何まで一切の状況説明を、全て登場人物の台詞によって語らせている、これが本作の脚本段階での大きな問題点のひとつである。

例えば、謎の飛行物体がどこからどうしてどんな顛末で墜落したのか、普通なら米軍基地が襲撃される場面などを、イントロとしてアクション満載の映像で見せ、観客を惹き付けて物語世界へ導入しながら端緒の説明とするなどするべきが、本作では全て台詞で説明させているだけだ。これで面白くなるわけがない。

墜落物体が何なのか、謎として引っ張ろうとする意図だとしても、予告や宣伝の段階で核や生物兵器などの軍事的なブツという事は容易に想像がつき、実際にその通りでしかないため、興味の矛先として成立していない事に、作る前から気づくべきだろう。

自衛隊レンジャー部隊を凌駕する人員と作戦遂行能力を持つ工作員が何故そんなに強力なのか、あるいは自衛隊員が都合良く弱すぎるのか。爆発までのタイムリミットが異様に長かったのは何故か。それくらいの時間で工作員が安全圏まで逃げ切れるわけでもなく、だったら全員で爆弾爆発までの間周囲を固めて守り切るべきなのに、少数の見張りのみを残してその場を離れ(どこへ行っていたのだ)、時間がきても爆発しないとわかったらゾロゾロと戻ってくる。全く意味不明である。

マンションに群がる謎の男達を恐れ、子供を連れて脱出を図る場面は、サスペンスと見せかけて拍子抜けさせ、緩急を持たせる狙いなのだろうが、電話一つ入れておけばスムーズに事が運ぶところを、何故わざわざ無用な誤解を生んで事態を混乱させかねない事をするのか、行動原理が全くなく、作り手の都合でそうさせたいだけでしかない事が明白すぎるため、盛り上がるどころかあまりのくだらなさに怒りすら覚えてしまう始末だ。編集長が何故公安にそこまで顔が効くのかも、何一つ説明が無く、この馬鹿げたシーンのための材料でしかない。

謎の狙撃者に狙われている事がわかっていながら、派手派手なジャケットをどうにかしようともしないのは、殉職した自衛隊員のジャケットを借用する等して白づくめになってしまうと、誰が誰かわからなくなってしまうどころか真っ白な背景に埋もれて何が起こっているのかすらわからなくなるから、というのが製作上の理由だろうが、だったら観客にその事を突っ込まれない様に、常に追われ続けていて着替えている暇もないなど、サスペンスやアクションを楽しませながら必然として納得させる方法はいくらでもあるにも拘らず、それすら行わないのは単なる手抜きでしかない。

悪天候が原因でヘリ部隊が撤退したのに(この撤退するしないの押し問答も冗長すぎて台無し)、後から晴れても戻ってこない。これまた撮影状の都合だ。

物語展開も、登場人物の言動も、いちいち悪い意味でのツッコミどころが満載で、それを隠して押し通すだけのテンポもテンションもなく、ダラダラと緊張感のない芝居が続くのみ。これの一体何が面白いのだろう。

展開の何から何まで全てがこの調子で、行われる事象に対し一応の前フリや説明を置いていながら、それが必然として、あるいは説得力のあるかたちで用いられる事は無く、後付けの説明を先に配置しているだけでしかない脚本の稚拙さを如実に表している。

アクションシーンと呼べる場面が主人公よりもヒロイン(竹内結子)の方が多い時点で苦笑ものだが、そちらの側が出来がいいわけでもなく、やはり緊張感もリアリティも説得力も何もない、「こうなるお話だからこうしました」としか伝わらない展開に終始。

では政治、軍事サスペンスや主人公家族の感動ドラマなどが盛り上がるかと言えば、そちらの側も同様に中途半端な三文芝居に終始。陳腐なお涙頂戴のテンプレートすら踏み外し、失笑する他ない有様を、一体どこをどう楽しめというのだろう。

工作員に囲まれてたったの3人(後に2人)で防戦しているのに、何度も何度もカメラ前に戻ってくるくだりなど、もう電波少年のパロディで笑わせようとしているとしか考えられない。これで感動出来ると思って作っているのなら正気を疑う。

総理が「トマホーク、発射ー!」と叫ぶに至っては気が遠くなる。日本の総理が米軍の軍事行動を"命令"出来ると思っているのだろうか。

「この国には戦争も軍隊も必要ない」「我々は軍隊ではない。自衛隊だ」という、全く噛み合っていない知能ゼロな会話などからも、作り手に真面目に政治や軍事を考える能力すらない事は瞭然だが、それにしても、自衛隊のサポートの元に製作しながら、何一つ役に立たず死にまくりな最弱にも程がある内容は、それ自体が大いなるギャグなのかもしれない。

日本映画界の悪しき体質のみが前面に押し出され、こんな恥ずかしい国辱作品を海外で上映してしまったのかと、他人ながら赤面してしまうレベルの、どうしようもない駄作中の駄作。

実機を使ったF-15の夜間発進場面だけが唯一の見どころなので、TVで放送される時にそこだけ見ておけばいいだろう。



tsubuanco at 15:12│Comments(7)TrackBack(18)clip!映画 

トラックバックURL

この記事へのトラックバック

1. ミッドナイトイーグル  [ 映画鑑賞★日記・・・ ]   2007年11月26日 17:39
2007/11/23年公開(11/25鑑賞)製作国:日本監督:成島出原作:高嶋哲夫出演:大沢たかお、竹内結子、玉木宏、吉田栄作、袴田吉彦、大森南朋、石黒賢、藤竜也 F-15は何のために出てきたのか。ただのゲスト出演・・・
2. 79『ミッドナイト イーグル』を鑑賞しました。  [ はっしぃの映画三昧! ]   2007年11月26日 21:00
映画を鑑賞しました。秊 79『ミッドナイト イーグル』 評価:★★★☆☆ 全体としてはまずまずでした。 まぁ、実際にはあるのかもしれないけど、証拠はない。 横田基地のステルス型爆撃機B??5に核弾頭が搭載されているという設定。 ...
3. ミッドナイトイーグル  [ C'est Joli ]   2007年11月26日 22:05
2 ミッドナイトイーグル’07:日本 ◆ 監督: 成島出「フライ,ダディ,フライ」◆出演:  大沢たかお、竹内結子、玉木宏、吉田栄作、袴田吉彦、大森南朋、石黒賢、藤竜也 ◆STORY◆ ある晩、米軍の戦略爆撃機“ミッドナイトイーグル”が、北アルプスの上空で消息を...
4. ミッドナイトイーグル  [ 5125年映画の旅 ]   2007年11月27日 06:57
1 冬の日本アルプス山中に謎の光が落下した。それを目撃した元戦場カメラマン西崎は、後輩の新聞記者落合と共に光の正体を確かめるべく山に向かう。しかしその光を目指して、自衛隊と謎の組織も行動を起こしていた。光の正体とは、半島の工作員の手によって墜落した米軍の爆....
5. ミッドナイト・イーグル  [ Akira's VOICE ]   2007年11月27日 10:40
あざとい展開と,細かく多いツッコミが目立つアクション大作。 大作?
6. ミッドナイトイーグル  [ バビロン21 ]   2007年11月27日 18:00
うん。書くの面倒だから簡単に‥‥←いきなり投げやり  米軍のステルス型爆撃機「ミッドナイトイーグル」が、北アルプス  山中に墜落。その機体には日本全土を壊滅に導くほどの威力を持っ  た特殊爆弾が搭載されているからサァ大変だ!どうしましょ!? ...
7. 【2007-170】ミッドナイト イーグル(MIDNIGHT EAGLE)  [ ダディャーナザン!ナズェミデルンディス!! ]   2007年11月27日 19:56
3 人気ブログランキングの順位は? 日本滅亡のカウントダウンが始まった。 あと48時間。 猛吹雪の北アルプスで、男たちは命を懸けた。 愛するひとを守る。ただ、そのためだけに。 もう、誰も失いたくない。
8. 「ミッドナイトイーグル (MIDNIGHT EAGLE)」映画感想  [ Wilderlandwandar ]   2007年11月27日 22:53
北アルプスを舞台にした山岳アクション映画「ミッドナイトイーグル (MIDNIGH
9. 『ミッドナイト イーグル』  [ アンディの日記 シネマ版 ]   2007年11月28日 15:27
感動度[:ハート:]          2007/11/23公開  (公式サイト) 泣き度[:悲しい:][:悲しい:] 緊迫感[:ラブ:] 娯楽度[:テレビジョン:][:テレビジョン:][:テレビジョン:] 満足度[:星:][:星:][:星:]   【監督】成島出 【脚本】長谷川康夫/飯田健三郎 【...
10. 『ミッドナイトイーグル』@丸の内ピカデリー(&試写会鑑賞)  [ 映画な日々。読書な日々。 ]   2007年11月28日 22:55
戦場カメラマンとして活躍していた西崎は、現実に傷つき、また病気の妻を顧みずに死なせてしまった事を悔やむ日々を送っていた。ある夜、冬の山中で西崎は空を飛ぶ赤い光を撮影する。それは北アルプスに落下していく米軍のステルス爆撃機だった。すぐに自衛隊の特殊部隊が
11. 『ミッドナイトイーグル』@丸の内ピカデリー(&試写会鑑賞)  [ 映画な日々。読書な日々。 ]   2007年11月28日 22:58
戦場カメラマンとして活躍していた西崎は、現実に傷つき、また病気の妻を顧みずに死なせてしまった事を悔やむ日々を送っていた。ある夜、冬の山中で西崎は空を飛ぶ赤い光を撮影する。それは北アルプスに落下していく米軍のステルス爆撃機だった。すぐに自衛隊の特殊部隊が
12. ミッドナイトイーグル〜ある凄まじきズッコケ物語  [ 佐藤秀の徒然\{?。?}/ワカリマシェン ]   2007年11月29日 21:01
こんなスケールの大きい本格的ズッコケ映画さすがに今まで見たことない。一見の価値ありだ。(写真は、空中爆破されたのに空中分解どころか北アルプス山中に激突してもズッコケてコックピットも胴体も電子機器も損傷しなかった世界最頑丈奇跡のステルス爆撃機)
13. 「ミッドナイトイーグル」みっともない邦画  [ 再出発日記 ]   2007年12月03日 17:57
「それと‥‥‥俺たちは軍隊ではない、自衛隊だ。」監督:成島出原作:高嶋哲夫脚本:長谷川康夫、飯田健三郎出演:大沢たかお、竹内結子、玉木宏、吉田栄作、袴田吉彦、大森南朋、石黒賢、藤竜也日本アルプスに米軍のステルス爆撃機(ミッドナイト・イーグル)が墜落した...
14. ミッドナイト・イーグル  [ pure's movie review ]   2007年12月18日 00:35
2007年度 日本作品 131分 松竹配給 STAFF 監督:成島出 脚本:長谷川康夫 飯田健三郎 原作:高嶋哲夫 CAST 大沢たかお 竹内結子 玉木宏 吉田栄作 藤竜也 石黒賢 大好きな彼と観に行きました。そして彼は隣りでちょっと鼻声になりながら「感動した!」と言ってます...
15. 【ミッドナイト イーグル】  [ MINT ROOM  ]   2007年12月20日 02:28
★★☆……★は5個で満点。☆は0.5点です。レディスデーで、何を見るか迷ったんだけど……ちょっと後悔。ま、《玉木宏》を見に行ったって事で折合いを付けることにしたけど。f(^^;)ストーリーはすっきりと判りやすく、スケールもそこそこでかい。でも、感動したって言う...
16. ミッドナイトイーグル 観てきました  [ よしなしごと ]   2007年12月27日 00:14
 今回はミッドナイトイーグルを観てきました。
17. 映画『ミッドナイト・イーグル』を観て  [ KINTYRE’SDIARY ]   2008年02月05日 21:49
111.ミッドナイト・イーグル■制作:松竹■製作年・国:2007年、日本■上映時間:131分■鑑賞日:12月28日、新宿ジョイシネマ(歌舞伎町)■公式HP:ここをクリックしてください□監督:成島出□脚本:長谷川康夫、飯田健三郎□原作:高嶋哲夫□製作:松本輝起...
18. (映画)ミッドナイトイーグル   [ ゼロから ]   2009年03月02日 05:33
自衛隊の銃撃で雪崩が起きるシーンは迫力がありますね。山岳での戦闘と市街地での戦闘を織り交ぜたのは、緊迫感を出したかったからなのでしょうね。

この記事へのコメント

1. Posted by ジャックかぼちゃ   2007年11月26日 16:14
映画館の予告編で、すでに腐臭が漂ってましたが、やっぱりという評価ですね。

 怪獣映画かと思いました…。
2. Posted by koshi   2007年11月26日 16:18
はじめまして。

友人がこの映画の製作に携わっています。
私は全く門外の者ですが、何となく感じていた違和感(?)を実に鋭く的を射て文章にされてる貴女の批評はすばらしい。
貴女が唯一の見所とされている場面も、同感です。
3. Posted by つぶあんこ   2007年11月26日 17:33
むしろ怪獣映画にしてしまった方がマシの様な。

この種の映画って、現場の時点で既に面白くない事をわかってて、それでも仕事として完成させないといけないから作ってる、って状態なんですよね。

こうした、現場のクリエイターも映画ファンも共に、映画を金儲けの手段としか考えていない一部の人間の犠牲にされてしまう、歪んだ現状を何とかしてほしいところですが、文化庁までも癒着してズブズブの状態では何とも。
6. Posted by sheep   2007年11月28日 00:03
途中退席してしまいましたw
初ですw
「ただ君」ファンとして期待の作品だったんですが、「初雪の恋」未満かよと。

ヒットエンドラーン!
ヒットエンドラーン!
ミッドナイトイーグルでヒットエンドラーン!
(すみません)
157. Posted by つぶあんこ   2007年11月28日 19:09
逃げちゃダメだ
244. Posted by 慶次郎   2007年11月29日 22:45
この映画はミスチルの歌で泣かせてるんですか?

245. Posted by つぶあんこ   2007年11月30日 17:41
ミスチルな時点で泣けないでしょう(笑

この記事にコメントする

名前:
URL:
  情報を記憶: 評価: 顔   
 
 
 
Comments