2007年12月01日

青空のルーレット 15点(100点満点中)

「まあおちつけ、ブサイクの嫁を持つ男」
公式サイト

辻内智貴の同名小説を映画化。

主演に塩谷瞬、ヒロインに貫地谷しほり、脇には忍成修吾や高岡蒼甫と、ミニシアター系邦画ではお約束とも言えるキャスティングによる青春映画で、原作はベタな人情ストーリーを軽妙な言い回しで綴った佳作なだけに、それなりの出来を期待していたのだが、結果としては残念な有様に。

本作は、ビルの窓拭きのバイトをしながら様々な夢を追い続ける若者達および、同じく夢を捨てられない中年男らの、夢と現実の兼ね合いを主眼とした群像劇なのだが、その群像劇としてのキャラクター配置、物語構成に練りが足らない事がまず問題。

各主要人物のそれぞれのドラマを平行して描きながら、各エピソードが最終的に一点にまとまって大団円を迎えるでもなく、途中で適当に終わってしまう話や、途中からいきなりメインに押し出されてその話ばかりになってしまったりと、各々の視点、主観による描写の切り換えのテンポ、配分のバランスが非情に悪いため、オムニバス群像劇として成立していないのだ。

そして、各エピソードにおける、衝撃や感動を生むべく用意されているシチュエーションに、その衝撃や感動を優先させるためにリアリティや説得力をネジ曲げてしまっている描写、展開が多々見られ、作り手のあざとく程度の低い狙いが明け透けとなり、少しも驚きも感動も出来ない本末転倒な状態となる。

例えば、ワイヤーが足らないから自分一人で頑張りますと若者に言われた中年バイト萩原が、「じゃあ俺も見ていてやるよ」と、何故か手伝う事も、会社まで足りないワイヤーを取りにいく事もせず、若者が一生懸命窓を拭いている様子を向かいの喫茶店でコーヒーを飲みながらヌクヌクと眺めている、など、それのどこが"いい話"なのだろう。

それでは本作における悪役として配置されている、オフィスでふんぞり返っている専務と何も変わらないではないか。結局のところこの場面、"一人で無理をして事故が起こる"という、見ていて誰でも予想がつく"衝撃的な悲劇"を描くために、全てのリアリティを放棄してしまっている事がバレバレであり、到底驚きも何もあったものではない。

最後に大きく盛り上がる筈の、専務に騙されてもうダメだとうなだれる萩原(またコイツか)だが、ビルの屋上から次々とロープが投下され、かつてのバイト仲間達が「萩さーん!」と手を振っている。という場面もまた、そのシチュエーションと展開自体は、ベタすぎるながらも確実に感動出来る王道であり、高岡蒼甫演じるヘタレ営業社員が、最後の最後で男を見せる、サブキャラストーリーの顛末としても、やはりベタではあるが座りのいいものではある。

が、問題なのはその見せ方にある。人員が誰も来ず、時間だけが過ぎていって追い詰められた状態、というのが、この前段としてのピンチシチュエーションであり、夢と仕事を秤に掛け、どちらかだけが重要なのではなく、その時に応じて大事な方を選んでいけばよく、捨てない、諦めない事こそが大切なのだ、と、作品テーマが結論づけられる場として、みんなで"仕事"をするために駆けつけてくる展開なのだから、顔を出して手を振ったらすぐ、全員が颯爽と仕事態勢に入って窓拭きを整然とこなし始め、それを見た萩原もまた、自らの仕事に臨む、といった描写の方が、感動の押しつけにならず気持ちよく感動させる事が出来た筈だ。

なのに本作では、屋上から顔を見せたメンバー達は、いつまでも延々と手を降り続け、カメラはそれらを延々と長々と映し続け、それを見た萩原は彼らに応える事もなくうなだれて延々と泣き続け、それをカメラは延々と長々と映し続ける有様だ。こんな、「いい話だろう!お前らここで泣け!」とあからさまに押しつけられる様な真似をされては、作り手の意識の低さに呆れかえってシラケるばかりである。

前半におけるメインエピソードの様に扱われている筈の、主人公とヒロインの恋愛模様は、お約束通りにベタに展開が進みながら、何故そうなるのか、何故そう思うのか、何故そうするのか、といった原理が全く描かれないまま上辺だけが進むために全く面白味がなく、しかも尻切れトンボで中途半端なままで別れて別の話に重点が置かれていくのでは、何のための話かも不明だ。

聾唖者であるヒロインが、公園で演奏をする主人公に対して聴覚以外での何かを感じ、駆け寄って感動し涙を流す、非情に重要なシーンにおいて、駆け寄るヒロインをフォローし続けるカメラワークの巧みさや、貫地谷しほりの作り出す表情の変化には目を惹かれもするが、ここでもまた、音が聞こえない筈の彼女が、一体何に感動して泣くに至ったのかは全く表現されておらず、始まりからこれではどうしようもない。

そもそも主人公、というより塩谷瞬は、『パッチギ!』などでも歌を歌う役を演じていたが、どう聴いても下手で、見込みがありそうだから特別にオーディションに参加させてもらえるという本作の展開には全く説得力がない。これでは根本から台無しだ。

何より、タイトルの『青空』を映像として表現出来ていないのは致命的だ。青空よりむしろ曇天や黄色い斜光ばかりが目立っているのは、撮影時期の問題もあるだろうが、もう少しは何とか出来た筈。

ベタな王道を丁寧に描いてベタに感動させる原作の持ち味を理解せず、感動の押しつけとそのための無理からな作劇に終始した、志の低い作品と評せざるを得ない本作、出演者のファンであっても、空回り的な内容には呆れてしまうだろう。自己責任で。


蛇足:
高岡蒼甫のブスな嫁って…、やっぱりそういう事だよなあ(笑


tsubuanco at 18:00│Comments(4)TrackBack(1)clip!映画 

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1. 【2007-171】青空のルーレット  [ ダディャーナザン!ナズェミデルンディス!! ]   2007年12月05日 19:49
2 人気ブログランキングの順位は? 金はないけど 夢はある! ミュージシャン、漫画家、小説家・・・ 夢を諦めない若者たちの爽快ガテン★ムービー!

この記事へのコメント

2. Posted by やっぱ   2007年12月04日 01:41
5 >蛇足:高岡蒼甫のブスな嫁って…、やっぱりそういう事だよなあ(笑

人を、見る目も含めてでしょうね(笑)
3. Posted by つぶあんこ   2007年12月04日 12:31
高岡蒼甫ってヤンキーっぽい役が多いですけど、今回みたいなヘタレ役の方が合ってる気がします。
5. Posted by 昨日レンタルで見ました   2008年04月09日 19:59
ひどい映画でした。15点はあげすぎじゃないでしょうか?
6. Posted by つぶあんこ   2008年04月10日 15:33
あえてこれをレンタルしようと思った動機が疑問です。

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