2007年12月14日

マリと子犬の物語 86点(100点満点中)

瓦礫の中でただ一人 息が苦しい 眼が眩む
公式サイト

2004年に起こった中越地震により壊滅した山古志村を題材に描かれた、桑原眞二&大野一興による絵本『山古志村のマリと三匹の子犬』を原作とした作品。原作では老人と犬の物語だったが、子供と犬の物語へと改変されている。

東宝映画製作、防衛省&自衛隊協力、特撮による破壊映像、正月映画、そして自衛官が高嶋政伸と、まるで少し前まで恒例だったゴジラ映画の様相を呈している布陣に加え、子供、犬、家族愛、などなど感動映画としての定番をこれでもかと盛り込んだ本作、家族で楽しめる安全パイの娯楽映画としての要素はむしろゴジラ以上だ。

前述の理由からいわゆる"東宝特撮映画"ジャンルに抵触しそうな感もある本作だが、監督の猪股隆一が日テレのディレクターなため、どちらかと言えばテレビドラマ的な映像、演出となっているのが実際のところ。

だが、ベタな感動を意図した本作としては、テレビドラマ的な演出、演技が、映画としての態勢で撮影される事でプラスに作用していると見受けられる部分も多々あり、この人選は結果としては正解だった模様。

主人公兄妹が、マリを探しに村へ戻ろうと話している場面での、双方の顔アップを切り返しで交互に見せていくカット割りと演出などは、極めて効果的なものとして特筆すべきだろう。

会話の内容が進行していくにつれ、両者の感情、心情が少しずつ変化していき、それが観客に伝わる事で感動を生む、大人の俳優でも難易度の高い演技が要求されるものを、兄と妹、それぞれの顔にカットが切り替わるごとに、前のカットと表情が変化している事が見て取れ、この局面での会話の一つ一つの言葉、あるいはそれに対する反応を、どんな表情を作り、どんな口調で演じれば良いのかが的確に演出され、そして子役達がそれを的確に演じ切っている場面、演出スタッフの質の高い仕事と、子役俳優の能力の高さがありありと伝わってくる。

切り返しでカットを自然に割る事で、子役に対する演出をカットごとに行う事も可能となり、より仔細な演技指導を行う事が出来、また演じる側も、局面ごとに細かい演技を意識して演じられる、と、作り手側の都合がマイナスにならず、むしろ場面を盛り上げる方向に作用している、秀逸なシーンと言える。

子供より更に難しい、犬に対する演出、撮影もまた、奇跡的と評せられるほどに、画面の端に映っている子犬にまで常に演出が行き届いた、手間暇かけたプロ仕事と、演じた犬の賢さと頑張りがこれでもかと伝わってくるもので、ドラマ展開として見せられる犬達の行動にまず感動させられ、それが完璧な"演技"である事に気づかされてまた深く感心させられる事ともなる、どちらの視点で見ても質が高い事には変わりないのだ。

メインとなるマリの、実はCGで思い通りに動かしているのではと勘繰らされる程の名演技もだが、子犬三匹も、白2匹と茶1匹に別れていた原作の配置を考慮したのか、活発な2匹とドン臭い1匹というキャラクター分けが演出によって明確になされ、それを当初は微笑ましい光景として認識させておいて、後半の展開への伏線となっているなど、脚本構成を活かした演出、演技の入念さには畏れ入らされる。

1匹がドン臭い事が伏線となる、川に落ちる後半のピンチシーンは、橋が崩れるCG合成が少し不自然な嫌いはあるが、本当に動物を河に突き落として流して死なせた『子猫物語』の様な無茶をするわけにはいかないので、それは仕方ないとして、この場面でのラストでマリを力つきて倒れさせ、そこから再会場面までの間ずっと、犬側の映像を一切見せない、という仕掛けは、観客の不安を大いにかき立て、ラストへ向かう興味を持続させる意図が成功した、上手い構成と評価出来る。この"思わせぶり"によって、ラストの感動は何倍にも膨れ上がっているのだ。

子供を守りながら飼主のもとへ向かおうとする犬側のドラマと、マリを探しに山へ登り、まだ幼い兄が妹を守るために奮闘する人間側のドラマ、それぞれを相似形としてオーバーラップして見せていく中盤の構成など、子供よりむしろ大人目線で見た方が、危なっかしくもいじらしい姿に感動せずにはいられない、とにかく憎らしいほどツボを抑えた作品だ

高嶋政伸の走り方がヘン、など、悪い意味で気になる部分もあるが、メインである"泣かせ"はことごとく観客のツボをつき、「さあ泣くぞ」と期待マンマンで劇場へと足を運んだ観客も、その目的は充分に果たされる事間違いない、良質の家族向け感動ムービーと評して何ら問題ない出来栄えだ。

予告を見ただけで泣きそうになった人なら、期待が裏切られる事はまず無いだろう。興味があれば是非。



tsubuanco at 17:05│Comments(11)TrackBack(16)clip!映画 

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この記事へのコメント

1. Posted by ウイングゼロ   2007年12月10日 22:19
ポスター見て思ったのは「文部省推薦の映画に自衛隊が協力するなんて時代が変わったなあ」ぐらいで、あまり気にも止めてませんでした。
でもつぶあんこ様のレビューを見て、映画見に行きたくなりました。かなりの良作のようですので。
2. Posted by もぐら   2007年12月11日 00:07
映画の宣伝をテレビで観たときには、地震の撮影のほうが印象に残りました。
実際は地震はそんなに印象的ではなかったですか??
でも つぶあんこさんの高得点で、足を運んでみたくなりました☆
3. Posted by まりぃーむ   2007年12月11日 16:30
映画館から遠のいていた私が、この予告を見て久しぶりに観たいとおもった映画です

つぶあんこさんのお褒めのレビューに安心して観に行けそうです
4. Posted by つぶあんこ   2007年12月11日 17:43
高嶋政伸の走りに注目です。
5. Posted by 会社員   2007年12月14日 03:25
>高嶋政伸の走り方がヘン、

あの重い無線機を背負って、しかも慣れない半長靴を履いた状態で走らされるのだから、仕方無いでしょう。
本職の自衛官じゃないのだから・・・。
6. Posted by つぶあんこ   2007年12月14日 17:33
カッコ良く走れないならアップでごまかすとか、やりようはあったでしょうに。
7. Posted by 慶次郎   2007年12月15日 04:41
涙腺を全開放できそうな映画ですが、つぶあんこさんも号泣した口ですか?

高島のストレインジ奇妙なラニング走りも期待ですね。
9. Posted by つぶあんこ   2007年12月17日 17:52
気持ちよく泣かせてもらいました。
10. Posted by ケント   2008年01月05日 18:27
こんばんは、お邪魔します
とにかく泣けました。犬よりも子役の女の子に泣かされましたね。
泣けば良い映画ということはありませんが、熱い血が燃え上がるような感動の涙でした。
単純といわれても、この映画を貶したくありませんね。
11. Posted by つぶあんこ   2008年01月06日 23:32
泣ける映画として作ってて実際に泣けるんなら、それは抜けるAVと同じく出来のいい作品だと思います。
12. Posted by キャサリン   2008年06月09日 20:07
4 動物、特に犬をだすなんて禁じ手です。
もうそれだけで、切なくて涙なしでは見られません。

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