2007年12月16日

イラク 狼の谷 55点(100点満点中)

アップルパイ、マシューマーロー♪
公式サイト

トルコで人気のTVドラマシリーズ『Kurtlar Vadisi(狼の谷)』の劇場版として製作された、反米アクションを売りとするトルコ映画。

冒頭のトルコ軍基地での顛末や、米軍による結婚式場の襲撃、テロリスト疑惑をかけた住民をトラックのコンテナに詰め込み、空気穴を開けると称して中の人達に当たるのも構わず銃を乱射、捕虜を全裸に剥いて写真を撮る、など、実際に報道された米軍の蛮行を元としたシーン、描写が各所に配置されているが、前二者は主人公とヒロインそれぞれのストーリーの起点となる事件だから構わないとして、後二者の場面が、ただ米軍の悪辣さを表現するだけに留まり、ストーリーの本筋と絡まないのは問題だろう。

そうした脈絡の無い場面をあからさまに挿入する事でプロパガンダ臭が極めて強くなり、また、事実を元にするならともかく、米軍の医師が生きたまま捕虜から臓器を取り出して密売ルートに流している、誰が見ても突っ込んでしまう様な場面を混ぜてしまっては、全体的な説得力そのものが失われ、中国や韓国が作っているトンデモ反日映画と変わらないレベルに成り果ててしまっては、主張する"被害"も"正義"も通らなくなる。(臓器密売に関しては、疑惑が取沙汰された事はあるが、証拠は発見されていない)

トルコ人を主人公とし、仲間であるメンバーにアラブ人やクルド人を配置してはいるが、全体的な人種構図としてはクルド人は"裏切者"として描かれ、ラスボスとなる米軍幹部は"狂信者"であるなど、話を都合良く進めるために殊更に類型化あるいはカテゴライズされた人物像もまた、トンデモプロパガンダの色合いを濃くしている。(視点が逆になる事で、宗教観も逆転するのは当然とは言え面白いが)

そうした描写にツッコミを入れて楽しむ、という鑑賞はもちろん可能だが、それは作り手の望むところでは無い筈だ。もっとも、あくまでもトルコ人のために作られた作品であり、他国人が観てどう思おうが知った事ではないのだろうが。

その様にストーリーやキャラクターがチープとは言え、たとえば、主人公達がピアノに細工するために輸送列車に飛び移る場面では、直前まで彼らを見せておきながら実際に飛び移るところは見せず、列車の走行に合わせてカメラを振ると、先のカットまで主人公達がいた場所が無人になっている、という映像によって、彼らが列車に飛び移った事を表し、その後の彼らの姿は、ピアノ作戦が終了するまで一切登場させない一方で、ピアノ作戦のラストである爆発映像以降は、そのターゲットがどうなったのかを一切見せず、主人公達の場面へと切り換えてしまう、と、現状で見せるものと見せないものを場面転換と共に交互に切り換え、その場面におけるメイン被写体と観客との把握している情報を近づける事で、観客の興味を常に惹き続ける工夫がなされている。など、映画としての表現においては、ところどころに上手いと感じさせられる部分もあり、もう少しストーリーがマトモなら、真っ当に評価される作品になったのではとも思わされるが、そうなったらおそらくは、現状の様に話題になる事は無かったと考えれば、このトンデモ具合は正解と言えるかもしれない。

イラクに在住するトルコ系住民の存在が日本ではあまり認識されていないため、序盤の展開がわかり辛いかもしれないが、ディフォルメ、記号化されたキャラクター構図により、作品意図はすぐに呑み込めて理解出来、トルコ人にとっての国威発揚映画を客観的に突っ込んで楽しむ事が出来る本作、興味があるなら話のネタにでも観ておくべきだが、真っ当な軍事アクション映画を期待するとビックリする畏れアリ、自己責任で。



tsubuanco at 16:48│Comments(0)TrackBack(1)clip!映画 

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1. イラク -狼の谷-  [ 映画鑑賞★日記・・・ ]   2007年12月16日 20:34
【VALLEY OF THE WOLVES: IRAQ】PG-122007/06/23年公開製作国:トルコ監督:セルダル・アカル出演:ネジャーティ・シャシュマズ、ビリー・ゼイン、ゲイリー・ビューシイ、ハッサン・マスード もっと国レベルの話かと思ってたのに普通の復讐のお話でした。

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