2007年12月17日

マリア 1点(100点満点中)

様がみてる
公式サイト

原題『THE NATIVITY STORY』の通り、イエス・キリストの母マリアと父ヨセフの出会いからのキリスト降誕に至るまでを描いた作品。

同種の作品は映画に限らずあらゆるメディアで古今東西から溢れるほどに作られており、今敢えて新しく映画として作るからには、何らかの新しい解釈や表現などがあって然るべきと考えるのが普通だろう。

が、「今まで語られうる事の無かった〜」とコピーに謳われていながら、伝統的な宗教的解釈に極めて忠実に作られているため、特に新しい解釈もなく、興味も驚きもありえないのが本作の実情である。

これまでの同種作品にて見聞した通りの人物配置、キャラクター造形、ストーリー展開が淡々と進み、常識を知らない子供向け宗教映画ならまだしも、一般向け映画としてこの工夫の無さは逆に特筆すべき凡庸さだ。

マリアやヨセフを一箇の人間として扱い、その人物像を興味深く描いていくのかと思わせつつ、特にそうでもなく、決められた展開通りに誘導されるままに行動していく様の、どこを楽しめばいいのだろう。

処女受胎という、本来有り得ない現象に対しては相も変わらず"神の御業"だからそうなのだとスルーしてそのままで、天使がいきなり現われても、天使ですと言われてそのままスルー、何ですかコレは。

マリアは実際に自分が身籠ったのだから事実と受け入れる他ないとしても、ヨセフは何故受け入れたのかと言えば天使のお告げがあったから、と、やはり人間としての葛藤や苦悩、変遷は特に描かれる事も無く予定調和にスルー、ドラマも何もあったものではない。

ヘロデ王は暴君で役人は悪辣で、と、判で押した様なステロタイプのキャラクター、序盤での、子供達が種まきの最中に遊び始める描写など、何の考えも無いテンプレートな描写、何の前触れも無く川に蛇が登場して驚いて水に落ちる、と、その場限りの取ってつけた様なピンチ、等々、作品を興味深く楽しませようと言う志が何ら見受けられない、宗教の持つ閉鎖的な特性が如実に現われた、前向きな要素が何一つ無い作品に終始している。

イスラム教徒が観ても感心して感動してしまうくらいのものでも作らない事には、今敢えて作る意味はないだろう。カルト的トンデモ映画としての面白さすらないのだから、処置なしだ。

また、これは作品本体の問題ではないが、戸田奈津子による日本語字幕が、キリストに関する最低限の一般常識すら無いとしか思えない低質さでは、もうどうしようもない。

そもそも、これまた字幕の悪評が高い『オペラ座の怪人』にて、キリスト受難劇を意味する「Passion Play」を「情熱のプレイ」と誤訳した様な老害を起用する事自体が間違いなのだ。これは配給会社の質の低いお粗末な仕事による結果だ。

宗教に興味があっても特に観る必要は無し。『トンデラハウスの大冒険』でも観ている方が、よほど楽しめるしためになるだろう。



tsubuanco at 17:39│Comments(3)TrackBack(5)clip!映画 

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1. マリア(The Nativity Story)  [ 佐藤秀の徒然\{?。?}/ワカリマシェン ]   2007年12月11日 19:26
英語タイトルThe Nativity Storyを直訳すると「キリスト降誕物語」。nativeはnationの親戚語。賛美歌の「もろびとこぞりて」の「もろびと」=nationがこぞりて迎えまつる主が降誕=nativityというわけで、キリストに集った結果そのpeopleがnationになったとか。結局、国民国....
2. マリア  [ ☆彡映画鑑賞日記☆彡 ]   2007年12月11日 21:13
 『その希望の光は、 ひとつの愛から生まれた。』  コチラの「マリア」は、今まで語られることのなかったイエス・キリスト誕生までの母マリアと夫ヨセフの物語を描いたコレもクリスマスにはぴったりな題材の12/1公開となった映画なのですが、観て来ちゃいましたぁ〜。 ...
3. マリア  [ 映画鑑賞★日記・・・ ]   2007年12月13日 09:45
【THE NATIVITY STORY】2007/12/01公開(12/12鑑賞)製作国:アメリカ監督:キャサリン・ハードウィック出演:ケイシャ・キャッスル=ヒューズ、オスカー・アイザック、ヒアム・アッバス、ショーン・トーブ、キアラン・ハインズ、ショーレ・アグダシュルー、スタンリー・タウ...
4. マリア  /  THE NATIVITY STORY  [ シネマログ  映画レビュー・クチコミ 映画レビュー ]   2007年12月16日 10:55
信じることが新たな光を生む■ストーリー聖母マリアが12月25日、ベツレヘムの町の馬小屋で、イエス・キリストを産むまでの物語。ヨセフとの婚約中に神の子を宿したマリアは、小さな村で不貞を働いた嫌疑をかけられる。しかしヨセフは天使からの啓示によりマリアを信じ、その...
5. [映画]マリア  [ お父さん、すいませんしてるかねえ ]   2008年01月09日 13:36
で、新年1本目に見た映画。 あらすじを簡単に これはキリスト誕生までを描いた物語。 ナザレに暮らすマリアは、突然父親から、ヨセフと結婚するよう申し渡される。 ほぼ面識のない男と愛のない結婚をすることに反発するマリア。 そんな彼女の元に天使がやってきて、こう告

この記事へのコメント

1. Posted by CRZ   2007年12月12日 00:07
1点ですか…
今週末にでも劇場のポイントを使ってみようかと思いましたが無駄になりそうですね。

>戸田奈津子による日本語字幕が「ユダ
>ヤ」を「ユダ」と誤訳するなど

これはひどいですね。彼女も仕事を断れない性分なんでしょうが何でもかんでも受けるのもどうかと思います。
(ロードオブザリングの時にもかなり叩かれてたような)
2. Posted by 佐藤秀   2007年12月13日 20:55
>蛇が登場して驚いて水に落ちる

観た後調べたんですけど、蛇はアダムとイブ以来、原罪、誘惑者の象徴らしく、蛇から逃れたから処女の証ですよ、という意味かなあ、と思いました。
3. Posted by つぶあんこ   2007年12月13日 21:21
オイラもポイントで観たので助かりました。

蛇が悪役なのはお約束ですが、それをそのまんま使って伏線も落ちもない、ってのも工夫の無さの一要因なわけで。

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