2007年12月24日

サーフズ・アップ 33点(100点満点中)

誰にも望まれずに生まれてきました
公式サイト

ソニー・ピクチャーズによる3DCGアニメーション映画。

昨年公開された同社作品『オープン・シーズン』と比べても、格段にリアルさがアップしたCG映像が、より実写的になりつつある事を考慮したのか、ドキュメントスタイルにて作品を構成する手法が用いられている。

その事は、まず主人公コディにインタビューする場面から映画が始められる事で、観客に対しても明確に伝わり、手持ちカメラ風に画面を動かしてみせ、カメラ外からの音声や撮影スタッフとのやりとりなど、"撮影している"事を殊更に強調する演出が、全編通して多用されている。

更に、サーフボードの先端にカメラが設置されていると見立て、その視点で乗り手を捉える映像はノイズが走って乱れたり、レンズに水飛沫が付着したりと、実写ドキュメントでありがちな映像を再現している遊びは、確かに最初は面白いと感じられはするものの、何度も同じ事を繰り返すだけなのは芸がない。

これは先述の演出も同様、本来はストーリーやテーマを見せるための表現手段である筈のそれらが目的化し、何らかの有為な意味合いを持たされていない事が要因であり、技術自慢に終始するばかりで作品としてのオチに結びつかないのだ。

結局のところ、どういった方向性のドキュメントだったのか、あるいは本編映像のどこまでがドキュメント部で、どこからが"カメラが回っていない"状態なのか、の境界が曖昧なため、せっかくの狙いは残念ながら活かされていない。

ペンギンが南の島でサーフィンをするという、興味を惹きそうな設定ながら、何故ペンギンなのか、何故ペンギンが南の島に普通に住んでいるのか、南極に住んでいるペンギンとはどう違うのか、ペンギンばかりが登場して、ペンギン=人間の擬人化図式化と思いきや、水鳥やニワトリがごく少数登場し、あまつさえ哺乳類であるラッコまでが、見た目の異物感とは逆に普通に擬人化されてペンギンと共存している、など、世界観の意味付けが全くなされておらず、ゆえに主人公の世界内での位置づけや現実への投影といった、観客が感情移入するために必要な情報が全く不足しているため、作品世界を受け入れる事そのものが困難となっている。

同じくペンギンを主人公とした『ハッピーフィート』では、ダンスや歌に対する概念はともかくとして、作品世界における生物としての位置づけはハッキリしていたが、本作ではそうした最低限の設定すら行われていないので、そもそもペンギンである意味すら全くないのだ。

ライフセーバーであるヒロイン・ラニが、仕事中は常に赤いイカを小脇に抱えているなど、小ネタ的なディテール設定には面白い部分も見受けられるのだが、基盤が曖昧なままな事はあまりに致命的だ。

ストーリー展開は大きな波が起こらず、ありがちな成長、恋愛、師弟のドラマが意外性なく淡々と進み、合間に挿入されるチキンジョーのギャグパートの方をむしろ待ち遠しくなってしまう程で、この、子供でも退屈して騒ぎ出す子供騙しは、昨年の『オープン・シーズン』と変わらず。

洞窟を滑り降りるシーンは視覚的に楽しいが、ストーリーの本筋とは特に関係なく、見せ場を用意するためだけに唐突に挿入された感が強い。また、肝心の波乗りの場面においては、ドキュメント風映像以外の工夫がほとんどなく、一番の見せ場の筈が大して盛り上がらないのは困りものだ。

例によって、子供向けと子供騙しを履き違え、面白くなりそうな着想を活かしきれていない、リアルなCGしか見るべきところのない、安易な凡作に終わっている。特段に鑑賞の必要はない。自己責任で。

追記:
主人公の吹替えを担当した小栗旬は、決して演技そのものは悪くないが、終始ダルなテンションで演出されており、彼に限らずヒロインや師匠も同じくダルな演出で、少しもテンションが上がらないのは悩みどころだ。ヒロイン役の山田優の演技に違和感があるのもいただけない。



tsubuanco at 16:40│Comments(0)TrackBack(6)clip!映画 

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