2007年12月25日

カンナさん大成功です! 25点(100点満点中)

たった一つの命を捨てて、生まれ変わった不死身の体
公式サイト

鈴木由美子の同名漫画を韓国にて実写映画化

おバカな女のマヌケな勘違いによって起こる、ハイテンションなドタバタギャグを通し、リアルな女の感情、心情を、様々に主人公のパターンを変えて描き続ける、鈴木由美子作品の一つである原作は、超絶なデブスだった主人公カンナが、全身整形によって絶世の美女に生まれ変わり、周囲の見る目は一変しながらも、中身は変わらぬデブスのメンタリティのままであるギャップから生じるコメディで笑わせ、女性カーストの最底辺から頂点へとワープしつつも、本当に願っている事はなかなか適えられずに悩み苦しむ様に感情移入させられる、作者の代表作である『白鳥麗子でございます!』ら初期作品よりも観察と表現がレベルアップした、傑作漫画と断言出来るものだ。

だが今回の映画版は、デブスの主人公が整形して美女になる基本設定程度にしか、原作から持ち込まれた要素はほとんど無い、完全オリジナルのキャラクター、ストーリーにて作られており、わざわざ原作をクレジットする必要などなく、もりたゆうこの『恋の奇跡』が原作と言っても何ら問題ない程に全くの別物となっている。辛うじて、ストーカーや犬にまつわるエピソードに、原作のニュアンスを感じる程度だ。

なので、原作の事はサッパリ頭から排除して、完全オリジナルの韓国映画として鑑賞する方が、よどみなく本作を受け入れる事が出来るだろう。

とは言え、この種の作品は、まず最初に"使用前"であるデブス状態がどれほどヒドいものかを、観客にしっかり認識させておいて、その上で"使用後"は、誰からも文句のつけ様のない美女を披露しない事には、ストーリーを受け入れる以前での引っかかりとなってしまう事は間違いない。

原作では、あえて整形前のデブス状態の主人公の姿を一切見せず、本人の回想や周囲の会話などの伝聞のみで読者にそのビジュアルを想像させて、逆に"ヒドさ"を強調して印象づける事に成功していたが、今回の映画版では、最初からデブス状態の主人公を堂々と登場させ、しばらくはその状態のままドラマを進めるのだが、正直なところ確かにデブではあるが、顔は大してブサイクとも思えず、「痩せれば何とかなるだろ」あるいは「デブ専にはモテるのでは」と観客に思わせている時点で、導入としては失敗している感が強い。

ファーストシーンの占い場面で展開される、彼女の"マヌケ"ぶりを表すドタバタもテンポが悪く、全く笑う事が出来ないのも痛い。そもそも全体的にコメディの比重が極めて少なく、むしろウェットな韓流泣かせムードの方が全体を占めているため、ラブコメとしても怪しい。

また、美人になったらなったで、確かに美人と称しても問題ないレベルではあるが、最前まで怒っていた男が顔を見た途端に態度が軟化する、お約束のギャグが大仰な演出によって繰り返される展開に、説得力を持たせられるくらいの美女かと言えば、首を傾げる人も多いであろう程度であり、ゆえにそのギャグシーンに違和感が付きまとう結果となっている。ここが彼女の"変身"を表現して自覚させるシーンなのだから、違和感があってはいけないのだ。

そしてこの種のお話は「人間、見た目よりも中身が大事」と、奇麗事の結論に行き着く事は誰にでも予想がつき、実際その通りになるものの、だが主人公が手に入れる幸せは整形したからこそ巡り会えたものであって、デブスのままなら不遇な人生で終わっていたのだから、結論として成立していないのだ。

オチとしてチョイブスの親友が整形を決断するくだりを入れてしまっては尚更で、これが、今までの流れをひっくり返し、「結局女は見た目だ」と突きつけるアイロニーを、この場だけでなく全体として狙っているのなら面白いが、クライマックスの"泣かせ"は明らかに大真面目なのだから、単なる齟齬でしかない。

手術後に包帯を解き、鏡を初めて見るシーンにおいては、主人公が鏡に映る自分の"新しい顔"を見る主観視点映像にて観客にもそれを初めて披露する、お決まりだが効果的な手法を何故か使わず、包帯を解いてから鏡に向かうまでの主人公を、中途半端に引いた画角によって先に中途半端に観客に見せてしまっては、"変身"の表現としてはあまりにダラシがない。この様に、基本的な見せ方すら安定していないのでは、楽しもうにも楽しめない。

少し設定は特徴的なものの、ストーリーもキャラクターもテーマ性も中途半端で、結局のところ韓流映画にありがちな、泣かせの押しつけによるベタな恋愛ドラマに落ち着いてしまった、同じく整形を扱った韓国映画『絶対の愛』にははるか及ばない、残念な凡作に終わっているのが勿体ない。

韓流映画好きの人なら楽しめるかもしれないが、原作とは全くの別物なので、原作ファンだからと言って観る必要はない。自己責任で。


蛇足:
劇中で印象的に歌われていた『MARIA』だが、何故かエンドロールに突入すると梨花が歌う日本語バージョンの同曲が流れ始めて完全に興醒めする。日本の配給会社はいい加減、こうした誰も喜ばない愚行によって作品そのものを台無しにするのはやめてほしいと強く願う。



tsubuanco at 17:34│Comments(0)TrackBack(6)clip!映画 

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