2007年12月26日

Little DJ 〜小さな恋の物語〜 29点(100点満点中)

白血病の少年を病院から(ry
公式サイト

鬼塚忠の同名小説を神木隆之介主演で映画化。

原作は、実話を元にしていると謳っているわけでもない普通のフィクションでありながら、紋切り型の域を全く出ない、ベタベタにお涙頂戴の難病恋愛ストーリーのテンプレートに忠実すぎる、あまりに工夫が無さ過ぎる内容に終始し、同ジャンルが大好物という人種以外には読むだけ時間の無駄な作品だったが、それと比べると、原作にはない15年後のエピソードを持ち込んで、タイトルにもあるDJという題材に有為な役割を与えて作品の独自性を出そうとしている、努力の跡は見られる。

これは、『明日の記憶』『いちばんきれいな水』『ディアフレンズ』と、難病もの映画の脚本ばかりを何故か手がけている三浦有為子による仕事と推察され、つまらない原作でも何とかどうにかしようとの姿勢は見受けられるものの、やはり元が元だけに限度はあるのだろう。

本編の"15年後"におけるヒロイン(広末涼子)視点で物語を開始しながら、続く本編(1977年)では主人公(神木隆之介)を中心に描く物語へと移行する段において、これは彼女の回想ではなく本筋である主人公のドラマに突入したのだと、観客に移行を受け入れさせる配慮に欠けていたのは問題だが、劇中で松重豊が印象的に語る、「忘れない」の言葉を、15年の歳月をかけさせる事でより強調し、時を超えたリクエストによって、それ観客に感じさせる狙いは面白く、オチとしては効果的と言える。

だが、「3年は忘れない」「俺なんか20年だ」と主人公に対し言ってしまうのは、おそらくは3年すら生きられないであろうと気づいている観客にとっては、共感どころかドン引きとなってしまうものであり、それが狙いなら面白いが、そうではなくその事自体は後を引かずスルーなのでは片手落ちだ。

その言葉が主人公の告白を後押しする事になる自体は、通常の恋愛ドラマならありがちだが"いい話"として共感出来るものだろうが、何せ主人公は不治の病で間もなく死ぬ事がわかりきっているのだから、告白される側に重荷を背負わせる結果となる事もまた明白であり、単純に"いい話"とは片付けられず、むしろ言わずに終わらせる方が、残される側への気遣いとしては正しいのでは、などと考えさせられる時点で、そもそも恋愛ドラマとして破綻しているのだ。

死んでもおかしくない病人を連れ出して案の定病態が悪化し「助けてください!」となるのは、もはや難病ものとしてはお約束なのか、と、呆れさせられもするが、その事後において、主人公の両親がヒロイン(福田麻由子)に対してそれぞれ向ける態度の差異を表す描写は、それぞれに観客の共感を生んで感情移入させられるだけの用意がなされており、ここに限らず、主人公と父母それぞれが絡んで各々のキャラクター性を発揮しつつも、観客の共感と感情移入を生む場面が多々あり、表層的なお約束に終始する恋愛よりむしろ、子供の話なのだから子供にとって大きな存在である両親との関係にウエイトを置いた方が、独自性も生まれ面白いドラマへと成り得たのではないか。

それにしても、無断外出で雨にうたれたり無菌ブースでキスしたりと、ヒロインが主人公に何かする度に病状が悪化して遂にはとどめを刺してしまうあたり、彼女の貼り付いた笑顔とも併せ考えると、意図的にそう描いているのではとすら思わせる程に恐ろしいのだが、一体どう考えて作ったのか大いに気になるところだ。何も考えていない結果である可能性の方が高いだろうが。

病院で仲良くなった少年との関係はいつの間にやらフェードアウトし、主人公とヒロインを引き合わせるための一材料でしかなく使い捨てられたとバレバレであるなど、単なる手段として用いられている事が明白な要素があまりに多く、また、DJを始めてから数値が安定した事と、病状が悪化したからDJをやめさせる事の矛盾に対し、それなりの回答を与えていないなど、恣意的すぎる展開に底の浅さを感じてしまうのは、原作からの問題とは言えもうひと捻りほしかったところだ。老女からの手紙のエピソードなど、原作と似ていながら変える事で、深みと感動を増しているシーンもあるのだから尚更である。

主人公の部屋の本棚に『ドカベン』が最初の数巻しか置かれていない事に注目すれば、連載中に死んだから続きを読めないのだと、背景描写によってさりげなく"悲劇"を感じさせられるなど、細かい工夫はところどころ見受けられるものの、本筋のストーリーにそれが及んでいないのが残念だ。

人気の子役を使ってお決まりの難病もので泣かせようとの安易な企画の域を出ず、凡百の難病ものに埋没してしまう程度の作品に終わっているのは、主演を始めとするキャスティング、演技が安定しているだけに勿体ない限りだ。

出演者の大ファンなら一応要チェックだろうが、そうでもないなら特段に鑑賞の必要はないだろう。自己責任で。


蛇足:
それにしても、福田麻由子が15年で広末涼子になるのには無理がありすぎる。



tsubuanco at 17:10│Comments(7)TrackBack(4)clip!映画 

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この記事へのコメント

1. Posted by kame   2007年12月21日 10:23
福田真由子は大きくなったら田中麗奈だろう!!と思って見ていました。
おっしゃる通り、恋愛のシーンよりも両親やその他登場人物とのやり取りの方がずっと良い感じでしたね。
2. Posted by つぶあんこ   2007年12月21日 17:50
ですよねえ。田中麗奈だったら完璧でした。
3. Posted by rhforever   2007年12月22日 05:12
へえ、広末出てるんですか?こんな単館興行の映画に。落ちたなあ。
でも、テレビでやったら見ますよ。録画するかもしれない。
あと、無菌ブースでキスするそうで、是非yahooのレビューで「本当の病人に失礼だ」とか叩いてもらいたいものなんですが、絶対無理ですね。ww
4. Posted by つぶあんこ   2007年12月23日 15:24
告白やキスシーンは、白血病じゃなければいいシーンなんですけどねえ。
5. Posted by sheep   2007年12月25日 20:20
 確かにバランスの悪い映画でした。好きな趣向なので残念です。
 福田(ちゃんと笑えよ!)が死神扱いされてる意見が目立つようですが、自分はすべて恋愛童貞2名による世間知らず故の悲劇と受け取りました。無菌室も、一応武装して入ってるんだし。
 ただ、無菌室、ラジカセあるし、土産持参だし。

 関係ないですが、ブログって面白そうですね。ちょっと興味わいてきました。
6. Posted by つぶあんこ   2007年12月27日 16:54
無自覚な方がかえってタチが悪いんですよね。
7. Posted by わとそん   2008年10月20日 18:52
 WOWOWで見ました。
 ほぼ同感です。役者は結構いいのにねえ。
 特に難病もので白血病は定番ですが、描写的に痛いものが多いですね。(自分は血液内科やってるんで特にそう思うのかもしれませんが)
 映画なんて絵空事ですからって割り切ってみるのが吉なんでしょうけど。

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