2007年12月27日

中国の植物学者の娘たち 24点(100点満点中)

エスカレーション
公式サイト

10年前の中国を舞台に、二人の女性の同性愛を題材としたフランス映画

美しい風景と美しい女性のレズ描写を強調する予告に興味を惹かれる人も多そうな本作だが、最後のオチ以外は全て予告編でダイジェスト的に見せられる通りで、映画本編においてもまたダイジェスト的に感じられてしまう程に、人物の心情変化を観客に伝える様なエピソードの積み重ねに弱く、唐突な展開の連続に退屈する、おかしな現象が起こってしまう事に。

香を焚いて眠っているアンのボディラインにミンが魅了されるシーンがまず、二人が惹かれあう端緒の一つとして用意されてはいるが、一方でアンからのミンに対する想いのの側は、決定的となる水浴シーンまでの間で特に描かれておらず、レズの話とわかっているから受け入れられるその水浴シーンも、どんな映画か知らずに観た場合、あまりに唐突で乱暴すぎる。

女性の異常な愛情をメインとしておきながら、重要であるべき心情、感情の表現があまりにも足らず、表層的な視覚表現として、乳や尻のビジュアルで誤摩化そうとしているとしか見受けられないのでは、あまりに底が浅い。

中盤になって初めてキスをする二人だが、そこまででも既にラブラブな状態として見せられているため今更感が強く、むしろ大仰な演出によってこれが初キスであると伝えられる事に対し、激しく違和感を覚えてしまうのだから、如何に描写が不足しているかがよくわかる。

また、二人のうち一方が何故かロシアと中国とのハーフという設定で、フランス人女優のミレーヌ・ジャンパノワが演じている事で、見た目からまず浮いた感が強く、"実は鬼子だった"となっていく展開にそぐうビジュアルではない事も、展開を受け入れにくくさせている一要因だろう。アジアンビューティーを期待している客にとっても、どう見ても西洋人な顔は大いにマイナスだ。

その、どちらかと言えばあまり嬉しくない方の彼女は脱いで裸体を披露するのに、期待通りの中国美人である片割れ、アン役のリー・シャオランは脱ぎっぷりが悪いあたりもまた、観客とスクリーンとに障壁が出来上がってしまう要因となり得ている。結局のところエロを見どころとしている作品としては、これは大いに問題だ。

その一方で、文字通り家の主であった筈の頑固親父のコダワリが全て、女性にとってはとるに足らない無意味な行為に過ぎないと、ペーソスを意図した演出によってアイロニカルに見せる、父親絡みの展開は奇妙に面白く、二人の愛や絆よりむしろ、翻弄される男家族の側を中心にコメディとして展開した方が面白くなった気もする。

また、ファーストシーンは実は"事後"の映像であったとラストになって気づかされる構成において、そのファーストシーンおよびラストシーンでの印象的なロングの横移動ショット映像と、同じ場所、画角で見せられる、物語中盤にて二人が幸せそうに鳥小屋へ走る、同じくロングの横移動ショットとの、同じ画面ながら表現されるエモーションが全く正対する、まさに天と地のギャップによって、ラストの哀しさ、虚しさを強調しているあたりは、素直に上手さを感じさせられ、幾許かの感動を得られもする。あるいはこうしたエモーショナルな映像表現をもっと多用すれば、興味深く物語を追う事が出来たのではないか。

風景の美しさ、女優の美しさ、ドラマのヘンテコさが上手く絡み合わず、あまつさえ肝心の恋愛描写がお粗末なため、裸とエロを見て楽しむ以上の興味はあまり得られないのが残念だ。

主演女優のファンなら観ておくべきだろうが、そうでないなら特段に鑑賞の必要はないだろう。大筋を知りたいなら予告だけで充分だ。自己責任で。



tsubuanco at 17:58│Comments(1)TrackBack(4)clip!映画 

トラックバックURL

この記事へのトラックバック

1. 中国の植物学者の娘たち  [ 江戸っ子風情♪の蹴球二日制に映画道楽 ]   2007年12月21日 11:43
 カナダ&フランス  ドラマ  監督:ダイ・シージエ  出演:ミレーヌ・ジャンパノワ      リー・シャオラン      リン・トンフー      グエン・ニュー・クイン 【物語】 幼くして両親を亡くし孤児院で育てられたリー・ミンは、昆林医科大学の 植....
2. 「中国の植物学者の娘たち」:東雲橋交差点付近の会話  [ 【映画がはねたら、都バスに乗って】 ]   2007年12月30日 10:36
{/kaeru_en4/}ジャスコっていやあ、イオングループだな。 {/hiyo_en2/}じゃあ、澄んだ空気が流れているのかしら。 {/kaeru_en4/}どうして? {/hiyo_en2/}だって、マイナスイオンでしょ。 {/kaeru_en4/}おもしろい連想するね、お前。 {/hiyo_en2/}マイナスイオンがみなぎって...
3. 真・映画日記『中国の植物学者の娘たち』  [            ]   2008年01月19日 03:33
JUGEMテーマ:映画 12月21日(金)◆661日目◆ ようやく体調万全。 今週はずっと苦しめられたね。 終業後、東銀座へ。 地下鉄出口6を出て、橋を渡ると「東劇」に到着。 「東劇」って松竹系の邦画をやっているイメージがあるけど、 中国映画は珍しい、というよ...
4. mini review 08299「中国の植物学者の娘たち」★★★★★★★★☆☆  [ サーカスな日々 ]   2008年12月26日 17:49
『小さな中国のお針子』のダイ・シージエ監督が、中国ではタブーとされる同性愛に挑んだ禁断の愛の物語。互いに孤独な境遇で生きてきた2人の娘が、心を寄せ合い愛を育んでゆく姿を幻想的な映像で紡ぐ。主演は、フランスと中国の血を引くミレーヌ・ジャンパノイと、『かちこみ...

この記事へのコメント

1. Posted by kimion20002000   2009年01月16日 23:05
はは。僕はこの映画にすごく甘い点をつけています。
僕は監督であるダイ・シ−ジエの奇妙な
デラシネ性に感情移入しているような気がします。
もちろん、もう枯れたオヤジのエロス性にこの軟弱な性描写が不思議とマッチしたのかもしれません(笑)

この記事にコメントする

名前:
URL:
  情報を記憶: 評価: 顔   
 
 
 
Comments