2007年12月28日

ブラック・スネーク・モーン 51点(100点満点中)

とんでもないおサセがやってきた
公式サイト

サミュエル・L・ジャクソン演じるオヤジが、クリスティナ・リッチ演じる色情狂ビッチを鎖で縛って監禁する、と、何だかエロそうな内容しか伝わらない予告は、具体的な方向性がよく見えない事で却って興味を惹く、久々に出来のいい予告を見せてもらえたと感じられるものだったが、肝心の本編はそこから高められた期待を凌駕する程ではなかったのが残念。

だがそれでも、クリスティナ・リッチが見せる、半裸や全裸のセックスキチガイ演技は、日本人好みなカワイイ系の顔、過去作と比べすっかりシェイプアップされたナイスバディによって観客の目を大いに惹き付け、それだけでも充分に見どころ足り得ているのは流石。

沸き上がる性欲に耐えきれず黒人少年を逆レイプするまでの、サスペンスフルな映像構成では、その演技と捉え方が真に迫っているだけに、勢い良くドアが開けられ少年が引きずり込まれるロングショットのシュールさが、オチとして効いている。オマケにクリスティナのおっぱいも拝めて一石二鳥だ。

大型車を背後に道の真ん中を歩き続けるタイトル画面と、大型車に煽られ路肩へと避けるラストを対比させ、"変わった様で変わっていない様でやっぱり変わった"と表現する構成も面白い。

だが逆に、主人公の背後から銃を構えたヒロインの彼氏がピンボケで現われるショットなど、そのシュールさが展開の緊張感を帳消しにしてしまっている映像も存在し、必ずしも狙い通りとはいかなかった模様。

本作は宗教的見地によって人間関係の可能性を様々に描いて見せる事が狙いであり、主人公においてそれが物理的に象徴されているのがヒーターの存在である。

別れた妻による「坊主憎けりゃ袈裟まで憎い」的台詞で言及されたヒーターは、主人公にとっては妻との別れを象徴づける存在として、彼を見えない鎖で縛り続ける事となり、そのヒーターを、ヒロインを拘束する鎖の基部とする事で、元妻の様に逃げられてしまわない、新しい絆にしたいとの意志を表現している。

つまるところ彼の行いは、妻に"必要とされなくなった"己の存在確認を、女性を救う事で行おうとしているに過ぎず、自分のためにしている事である、までは、ありがちな人物描写でありいいとして、問題は彼にその自覚がない事だ。

ヒロインの態度が軟化し、むしろ主人公を受け入れてしまう流れもまた、結局のところ無自覚なストックホルム症候群でしかなく、スーパーのシーンなどで表現される様に、自分に問題があるのは他者のせいで心が傷ついているからとし、主人公とヒロイン、ヒロインと彼氏など、単なる共依存による自己満足に過ぎない関係を、まるでハッピーエンドかの様に見せられる内容からは、作り手の思想の浅さが透けて見える様だ。

そうした人間の弱さ、愚かさをシニカルに自嘲、冷笑するといった描写や方向性であればまだしも、そのままストレートに"人と繋がる事の大切さ"を訴えかけられても、失笑する他ない。

先述の妻の「坊主憎けりゃ〜」的思考は主人公も同様で、それを表現するのにカインとアベルの兄弟殺しを語らせるなど、宗教的なテーマ、主張を言葉でそのまま述べさせるくだりが多すぎ、まるで基督系カルト宗教の啓蒙映画の様な、偽善臭がプンプンする作りが、出演者の演技や魅力を大いにスポイルしてしまっているのが勿体ないばかりだ。

性的暴行を行わない『完全なる飼育』とでも言うべき本作、宗教や占い、スピリチュアル(笑)に疑問を抱かない、荻上直子の『めがね』に騙される様な、おめでたい単純思考の持ち主であれば感動出来るかもしれないが、普通に理性的な思考が行える大人にとっては、表層的で底の浅いテーマは受け入れ難いだろう。

とは言え、ファンならずとも、クリスティナ・リッチの新境地とも言うべき捨て身の演技には一見の価値があり、観ておいても損はしない一品である事も確かなのだから困る。自己責任で。



tsubuanco at 17:29│Comments(3)TrackBack(4)clip!映画 

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この記事へのコメント

1. Posted by 爽泉   2007年12月21日 19:37
予告編を見て「完全なる飼育」みたいな話だと思っていましたが、見事にだまされました。
2. Posted by つぶあんこ   2007年12月23日 15:19
メンタル的には『完全なる飼育』ですけどね。
3. Posted by わとそん   2008年10月23日 21:54
 WOWOWで見ました。
 十分面白かったけどなあ。
 登場人物たちのそれぞれのかかわりやみちゆきを楽しめばいいのに、変に善悪とかにこだわって見ちゃうから偽善だのなんだの妙な感じ方になっちゃったのじゃないでしょうか。
 ま、一番の見所はやっぱクリスティナ・リッチのホットなビジュアルと演技でしょうね。その点でもシニカルな視点からの作品にしたら、かえってそのエロい魅力は浮いてしまったのでは。
 変に作品の深みとやらを求めるより、適度にウェットなこのような作りの中でその魅力を味わえて個人的にはよかったのではと思いました。

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