2007年12月30日

ルイスと未来泥棒(3D版) 86点(100点満点中)

流星号応答せよ、流星号、来たな〜
公式サイト

ディズニー本社製
作による、昨年の『ライアンを探せ!』に続くフルCGによるアニメーション映画。今回は飛び出す3D映画として製作されている事が大きな特色だが、今後CGアニメ映画はピクサーに任せる方針となり、本作が最終作らしい。

そうした事情も絡んでか、今回は製作に『トイ・ストーリー』や『カーズ』の監督であるジョン・ラセターが大きく関わり、ピクサー的なカラーが色濃くなっている事で、前作『ライアン〜』と比べても、作品としての完成度が大きく高まっているのは嬉しい。

とは言え、ストーリーや設定にどこかで見た様な匂いがプンプンするあたりはディズニー本社作品らしさがそのまま残っており、今回は『ドラえもん』+『キテレツ大百科』と言ったところか。人間の無自覚な無配慮とそれによって生じたネガティブな感情が事件の根底にあるあたりも、何だか藤子的な匂いが感じられもする。

が、天才はキチガイと紙一重であると極端にディフォルメ、戯画化したサイコキャラクター達のブラック、シニカルさは日本の娯楽作品では表現しづらいもので、それを堂々と面白おかしく見せつけ、奇妙な感覚に陥らせてくれるのは素直に楽しく、本作の独自性は、時間ギミックやテーマより、むしろそちらにあるとの見方も可能だ。

先に現代編で見せておいた、枝葉のお遊びと思わせる脇キャラクター描写が、未来での展開を経て現代へ回帰した時、二つの時代を繋ぐ要素であった事が明確となり、テーマである未来志向を示しつつ感動させるといった、さりげなく伏線を張りつつ、キャラクター描写単独でも楽しませる、脚本構成は上手い。

主人公の発明狂ぶりと、ルームメイトであるウーブの愚鈍な偏執性とを同時に描写し、観客に明確に印象付けておく、基盤となる導入部も出来がよく、その時に作っていた機械もまた、その場における主人公の性格説明と、ドタバタコメディとしての材料だけでなく、後の展開でストーリーの意味を表現する要素として再登場するなど、人物、事物にことごとく意味を持たせて二つの時代を繋ぎ合わせる手法が、ありとあらゆる顛末に用いられ、それに気づく楽しさが与えられている。

過去に拘泥して堕落した人間が、過去へ戻って悪事を働き、太古から恐竜を連れてくると、徹底して"後ろ向き"な愚行に終始させ、テーマである未来志向の素晴らしさを強調する、陰と陽の対比を用いた対立構造もまた、わかりやすく練られたものと評価できる。その恐竜が、チャッカリ家族の一員に紛れている密かなオチも笑える。

だが一方では、未来志向を強調するあまりに、母親が誰かなどどうでもいい、と結論づけてしまう割り切りは乱暴すぎ、過去があったからこそ未来がある事実と、過去に囚われず未来を目指す理想との齟齬を、実感として埋め切れていなかった感もあり、当初に主人公がこだわる"過去"を、敵役同様にもう少し瑣末な失敗にとどめておいた方が、その違和感は軽減されたのではとも思われる。

CGアニメーション映像としては、3D映画として製作されている割には、大砲で発射されるあれこれなど、真正面に向けて飛び出してくれば楽しそうなシチュエーションを、何故か横向きに発射するにとどめているなど、充分に3D映像である意義を楽しみきれないのが勿体ないが、描かれている人物、事物の各々の立体感や質感は、3Dで見る事でリアル感が強まり、鏡面の映り込み、特にタイムマシンのキャノピーに見られる、透明な曲面における反射の美しさは、3D映像化されて大幅にアップしており、目を奪われる。

未来世界の風景をタイムマシンで飛行して見せていく場面などもまた、アトラクション的楽しさが3Dの質感によって増量されており、2D鑑賞では味わえない見所となっている。

子供をメインとした家族向け娯楽映画として、時間ギミック、キャラクター、テーマ性が上手く絡み合い、子供と大人のどちららの目線からでも楽しめ感動できる、良質の一本である事は間違いなく、可能であれば3Dでの鑑賞が望ましいが、2Dでも充分に楽しめる内容と評価出来る。

先述の製作事情によりピクサー好きも必見。興味があれば観て損はないだろう。


蛇足:
胸にポケットのある子守ロボットが『ロボッツ』に登場しそうなデザインなのは、ラセター参加によるお遊びか。


tsubuanco at 15:13│Comments(4)TrackBack(22)clip!映画 

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この記事へのコメント

1. Posted by はっち   2007年12月29日 06:40
おじゃまします〜♪

流星号って・・・あんこさん、幾つ・・・(^_^;)

メガネ愛用者には、メガネONメガネ辛かった・・・あんなの無しで3D楽しまれへんのかなぁ・・・
2. Posted by つぶあんこ   2007年12月30日 22:34
当時はまだ生まれてませんけどね。でも『冒険ガボテン島』とか、久松文雄は結構好きです。
3. Posted by はこ   2008年03月06日 20:03
普通に面白かった、でもドリスと未来の主人公宅が『DOCTOR・WHO』というBBCドラマと被り過ぎで何かもにょりました(´ω`)
あっちも未来の話だったし。
4. Posted by つぶあんこ   2008年03月10日 17:34
未来描写の定型パターンは、何も特定作品に限ったものではないでしょう。

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