2007年12月31日

茶々 -天涯の貴妃- 5点(100点満点中)

勝俣と西村知美の旦那と桃太郎と…
公式サイト 公式ブログ

主演に宝塚出身の和央ようかを迎え、井上靖の歴史小説『淀どの日記』を原作とした東映時代劇映画

映画や大河ドラマなどで、井上靖の歴史小説が映像化されるに際しては、大抵において原作からかけ離れてオリジナルに近い展開となってしまう事が多いが、今回も同様に、浅井長政の敗北に始まって大坂城落城で終わる大枠以外は、エピソードも人物動向もほぼオリジナルに大幅改変されていると言ってよく、これならわざわざ金を払って原作クレジットを入れる必要性はないとすら思われる程だ。

たとえ原作と違っていても、これはこれで面白いと思える様に作り変えられているのならむしろ大歓迎だが、本作、単なるあらすじのダイジェスト無理のある創作描写の羅列に終始した、大河ドラマの総集編番組以上に駆け足で食い散らかされただけに終わっているのが実情。

そのため、歴史の流れに翻弄され、あるいは自ら歴史を動かしていく主人公・茶々を始めとする登場人物達の、各局面における行動原理の裏づけとなる心情変遷やそれを支える基盤が全くと言っていい程に描かれておらず、ゆえに誰に対しても感情移入を行えず、また歴史を客観視するにしてはあまりに拙速すぎる、どうにも楽しめない結果に。

茶々が床にある秀吉を刺そうとする場面において、浅井の滅亡に関わり柴田を滅ぼした秀吉に対する憎しみの情と、母の遺言である「生きよ」の言葉との狭間で苦悩し、生きる事を決意するまでは構わないとして、では秀吉に対する憎しみがどの様に解消され、愛する様になり豊臣家に固執するに至ったのかは全く描かれておらず、ただそういう事になっているからそうなのだと、無理から話を進めているに過ぎない。

そうして、淀殿に対する観客の事前知識や固定概念におんぶするばかりで、本作ならではの新解釈による、独自の淀殿像を作って見せようとの工夫が、特に内面的描写においてあまりに希薄なため、甲冑姿で家康の本陣に乗り込んだりと、唐突過ぎて面食らう様なトンデモ展開に対して説得力を与える事が出来ず、単に珍妙な場面としか映らない事で、劇中の盛り上がりとは真逆に観客を失笑させる結果としかなっていない。

おそらくは、その様に出来の悪すぎる脚本が先にあったせいで、撮る前から大ゴケ駄作と東映幹部以外の誰からも判断され、主演女優がいつまでたっても決まらないなどという、大作映画としてありえない状況に陥ったのであろう事は、想像に難くない。

そうして難航したであろうキャスティングの結果、特に主人公三姉妹において、誰が見ても首を傾げる有様である事もまた、作品世界に観客を導入しづらい要因となっている。

茶々の少女時代から始まる物語において、菅野莉央演じる少女茶々、清水萌々子演じる少女はつ、そして山田夏海演じる少女小督と、文字通りの美少女三姉妹の、特に小督の完璧な美少女ぶりは、決して多くない出番において、観客に対し強烈な印象を与え、それが却って後の不幸を生むとは大いなる皮肉だ。(余談だが、昨年同時期公開の東映映画『大奥』にて風車売りの美少女を演じ、少ない出番で強力なインパクトを与えていたのも、この山田夏海だ)

菅野莉央が成長して和央ようかになるのは、目力の強い印象が(残念ながら少し離れ気味な事も含め)似ている事もあって、ある程度スムーズに受け入れられ、清水萌々子が富田靖子に成長するのも、共に整った顔立ちによって違和感は特にない。

問題は小督だ。三姉妹の末っ子である彼女が、大人になって再登場したら何故か寺島しのぶに成り果てているのは、笑わせようとの狙いとしか考えられない。

和央ようか、富田靖子、寺島しのぶ、の三者を並べてみれば、とりあえず美醜はさておき誰が見ても寺島が末妹とは思わないだろう。実年齢では確かに正しい順で並んではいるが、芸能人は見た目こそが重要とは言うまでもなく、そんな当たり前の事を全く考えずに行われたとしか思えないキャスティングは、せめて富田と寺島を入れ替えればまだマシなのに、それすらしない時点で、真面目に作品を作る気があるのかさえ疑われる。

大人になって劣化する子役俳優を揶揄しているパロディとでも考えれば面白いだろうが、実際には、茶々が大人になった小督と再会した時の台詞が、「美しくなって…」と、明らかに天然でやっているのだから困り果てる。鼻と口の距離が長すぎて、どう見てもゴリラーマン姉ちゃん(本名:池戸美穂)な顔の一体どこが美しいのか。

合戦シーンでは無駄に血飛沫が乱れ飛び、まるで極道映画の様相を呈して苦笑させられるも、伏見桃山城を改造した実物大とミニチュアを使い分けた大坂城の映像や、真田幸村(黄川田将也)を始めとする武将の装束の再現度などは意外と高く、だからこそ、もう少し真面目に作れなかったものか、あるいは逆に、かつての『真田幸村の謀略』ら、ぶっ飛び東映時代劇の様にハイテンションな娯楽に徹する事が出来なかったものかと残念でならない。

正統派の歴史劇にも、トンデモ時代劇にもなりきれず、主演女優のビジュアル同様に中途半端極まりない出来に終わった本作、キャスティングが難航した時点でお蔵入りにするのが唯一の正解だったと思えてならない。

合戦シーンの映像には劇場で鑑賞する楽しみこそあれ、それ以外に見るべきところが無さすぎるため、出演者の大ファンでもなければ、興味があってもTV待ちで充分か、自己責任で。



tsubuanco at 11:35│Comments(0)TrackBack(10)clip!映画 

トラックバックURL

この記事へのトラックバック

1. 【2007-190】CHACHA 茶々 天涯の貴妃(おんな)  [ ダディャーナザン!ナズェミデルンディス!! ]   2007年12月28日 00:32
3 人気ブログランキングの順位は? 戦国乱世 一人の女が、天下に挑む。 織田信長の血を受け継ぎ、 豊臣秀吉に深く愛され、 徳川家康に最も恐れられた。 女が仕掛ける、血脈の戦い。 女は、負ける戦をしてはならぬもの。
2. 茶々 天涯の貴妃(おんな)  [ 空想俳人日記 ]   2007年12月28日 22:43
負け戦 男の傲慢 包み勝つ   井上靖原作の「淀どの日記」。そして、元宝塚歌劇団宙組の男役トップスター和央ようかの横顔がアップのポスター。この2点で、「茶々 天涯の貴妃(おんな)」を観る決断をしました。  ところで、この2点がなんと。。。彼女、身長17...
3. 『茶々 天涯の貴妃(おんな)』2007・12・24に観ました  [ 映画と秋葉原と日記 ]   2007年12月29日 23:01
『茶々 天涯の貴妃(おんな)』 公式HPはこちら ←クリック ●あらすじ 巨大なお城の周りの武家屋敷は全て火の海。その様子を天守閣から見ていた女が居た。 彼女は織田信長の妹、お市の方と小谷城の城主、浅井長政との間に生まれた三姉妹(茶々、はつ、小督)の
4. 茶々 天涯の貴妃(おんな)  [ 八ちゃんの日常空間 ]   2008年01月05日 00:51
それでも美月ちゃんを応援します…
5. 茶々天涯の貴妃■オーラのない主演女優で東映城落城?  [ 映画と出会う・世界が変わる ]   2008年01月07日 00:12
年末に放映される大河ドラマ総集編のような薄味作品。「AVP2」が、ほとんど知られていない俳優を使って印象に残らない魅力のない人物を描いたが、それに対してこの「茶々天涯の貴妃」は知名度の高い俳優を並べて全く印象に残らない魅力ない人物を描いている。この二つ...
6. 『茶々 天涯の貴妃』  [ 唐揚げ大好き! ]   2008年01月07日 08:08
  『茶々 天涯の貴妃』   信長の血を受け継ぎ、  秀吉に深く愛され、   家康がもっとも恐れた女   この時代の戦国絵巻って結構好きです。 織田信長に始まり豊臣秀吉、徳永家康に至るまで・・・。 群雄割拠って奴ですか。 ドラマになりやすいですね。  
7. 「茶々天涯の貴妃」は何故、つまらないのか?  [ 映画と出会う・世界が変わる ]   2008年01月09日 00:55
7日の日記で「茶々」の和央ようかのことを「乏しい表情で魅力なし」と、ファンが読むと激怒するようなことを書いたが、もともと和央ようかとは、その程度のスターではない。ウィキペディアによると「持ち前の甘いマスクに、長身を生かした迫力ある舞台姿でトップスターと...
8. 「茶々 天涯の貴妃」(2007・日本)  [ MY HIDEOUT〜私の隠れ家〜 ]   2008年01月10日 09:12
只今、公開中です。監督・・・橋本一原作・・・井上靖『淀どの日記』(角川文庫刊)出演・・・和央ようか、寺島しのぶ、富田靖子、高島礼子、余貴美子、原田美枝子、吉野公佳、平岳大、中丸新将、高橋長英、近藤公園、中林大樹、黄川田将也、メイサツキ、谷村美月、松重豊、...
9. 【映画】茶々 天涯の貴妃  [ 新!やさぐれ日記 ]   2008年01月15日 20:58
■動機 通院後の時間潰し(3時間) ■感想 期待していなかった分面白かった。 ■満足度 ★★★★☆☆☆ そこそこ ■あらすじ 浅井長政を父に、持ち織田信長の妹であるお市の方を母に持つ茶々(和央ようか)。豊臣秀吉の側室にて、豊臣秀頼の生母であるこの女性が、...
10. 真・映画日記(2)『茶々-天涯の貴姫〈おんな〉』  [            ]   2008年01月19日 03:37
JUGEMテーマ:映画 (1から) で、さっき金券ショップで買ったチケットの中には『茶々-天涯の貴姫〈おんな〉』がある。 「上野東急」の近くにある「上野スタームービー」で見られるが、 せっかくなので行ったことがない映画館で見ることに。 雑誌「ぴあ」で調べて、...

この記事にコメントする

名前:
URL:
  情報を記憶: 評価: 顔   
 
 
 
Comments