2008年01月02日

ヒルズ・ハブ・アイズ 83点(100点満点中)08-001

恐怖奇形人間
公式サイト

『エルム街の悪夢』などで知られるウェス・クレイヴン監督による1977年作品『サランドラ(原題は『THE HILLS HAVE EYES』)』を、『ハイテンション』のアレクサンドル・アジャ監督によりリメイク

田舎のフリークス家族が旅人を惨殺し喰らう、『悪魔のいけにえ』あたりから始まる旅人受難系ホラー・スプラッタ映画に属する一作品であり、核実験とその被害者を扱った事によるタブー的な話題性のみが先行し、実際の内容は単に悪趣味なだけで退屈極まりない凡作だった旧作だが、デリケートな題材を低俗かつ悪趣味に扱った姿勢そのものには意義があり、近年でも『クライモリ』あたりにその影響が見て取れるなど、ホラー映画史を語る上で外せない一本である事もまた確かだ。

決して出来は良くないがアイディア自体には光るものがあった旧作、それをホラー、スプラッタ映画としての見せ方盛り上げ方をよく心得ているマニア監督が手がけた今回、ストーリーやキャラクターがほぼ同じながらも、ダウナーテンポの旧作とはうって変わってハイテンションな殺戮バトルを堪能すべく仕上がっているのは当然の成行きであり、的確な人選と評価出来る。

今回、表層的な印象においてまず政治思想色が強くなっている事がまず目につき、それは冒頭およびラストのテロップでも殊更に強調されているが、それがそのまま作り手の主張であると考えるのは軽率だろう。

これが日本であれば間違いなく、プロ市民団体による悪質な威力業務妨害によって潰されてしまうと容易に想像出来る、あくまでもデリケートな題材だからこそ、敢えてそちら側の人間に迎合する様なリベラル的思想を前面被せておいて、本質から目を逸らす事が目的なのではと考えた方が、実際の内容と併せ考えるに自然だ。

ベトナム戦争期の枯葉剤批判を彷彿とさせる、タイトルロールにおける冒頭のドキュメント風映像と演出に始まり、米軍や米政府を頭から悪と欺瞞に完全に位置づけておき、主人公一家の父は元警官で民主党支持者を嫌い、母は敬虔すぎるキリスト教信者と、保守系アメリカ人のステロタイプを戯画化したキャラクターを設定し、彼らが"国の被害者"から無惨にも"復讐"されて尚、軍や政府はその事実を隠蔽する、といった、あまりにわかりやすい構図が用いられており、アメリカ国歌や国旗の使い方も含め、こうした表面的な部分しか目に入らず大喜びする左巻き連中の姿もまた容易に想像出来る。

だが一方で、襲う側あるいは勝ち残る者のキャラクター設定および描写に注視すれば、当初ヘタレ気味に描写されており、パターンに倣えば真っ先に殺されるような娘婿(メガネ)が、あっさり主義主張を転向してタカ派急先鋒となり、"国の被害者"と話し合うどころか全身に返り血を浴びた殺戮マシーンと化すに至っては、リベラルな夢想的平和主義者をシニカルに揶揄した、意図的な展開である事は明らかだ。

一家を襲うフリークス達にしても、説明としてはあくまでも"可哀想な被害者"である事をいちいち強調しつつも、やっている事は単なる自分勝手な蛮行に過ぎず、これは先述した様な現実社会における、被害者や弱者である事を錦の御旗に暴走し自らが不当な特権階級と化す、人権団体を始めとするプロ市民達を、文字通りモンスター化して嘲笑する意図がありありと見て取れるものだ。

被害者だからと言って何をしても許されるわけではないとストレートに突きつけているのが、車椅子の水頭症フリークスの自分勝手な言い分とその末路に象徴されており、極めて痛快ではあるものの、最期を直接的な映像として見せてくれなかったのは物足りない(旧作もだが犬が大活躍しすぎなのはシュールで楽しい)。

そうした意図はさておき、受難型ホラーの基本として、まず襲われる側の人物描写それぞれをわかりやすく行っておいて、しかもそいつらがことごとく頭が悪く性格も歪んだ奴らばかりとする事で、一人ずつ惨殺されていく事にショックはあれど憐憫はなくむしろ楽しく、その一方で襲う側もまた理不尽に描き続ける事で、どちらが殺されても気持ちよく楽しい、と観客に感じさせる狙いが徹底されているのが素晴らしい。

重要な見どころであるスプラッタ、ゴア描写も、先述の水頭症の最期こそは不満だが、それ以外はダイレクトに死に様やられ様を見せつける演出、映像が徹底しており、たとえ自殺でも豪快に頭部を吹き飛ばしてくれるなど、サービスは満点。遠慮なく奇形人間をモンスター扱いするあたりもまた、楳図かずおや永井豪的テイストを感じられ頼もしい限り。

もう一方の見どころ足り得るエロ描写においても、直接的に大事なところを見せるまでは至らないが、美女を襲う場合殺すより先に当然臨む行為を逃げずに描き、襲われる少女(金髪ビッチ)の苦悶をその事後にまでも丹念に追い、襲う側の愚かしさと容赦のなさもコミカル気味に見せて、存分に盛り上げている。『ハイテンション』と違って美人を使っているのも有り難い(『LOST』の妊婦役)。

赤ん坊の母親がフリークスに乳を吸われる場面もまた、倒錯しすぎたフェティシズムが全開で、下手に見せるよりもエロくなっているのが見事。そしてこの、無謀な長旅に赤ん坊を連れてくるという有り得ないバカ母がブチ殺されるのも、キャラ描写で生じた悪感情が昇華されるカタルシスとして最高だ。

ただ、フリークス集団側が全員"家族"であると観客に理解させるだけの説明が弱く、ガススタンド親父が誰かの関係者という事くらいしかわからないのは、坑道だけでなくゴーストタウンをも舞台とし、複数の家とそこに点在するフリークス達を見せてしまった事や、リーダー格となる怪物をラスボスとしてインパクトを与えるために出番を限定した事で、集団としての各々の位置づけが不明瞭となった事が原因だろう。

その辺りをもう少し上手く描けていれば、バカ健常家族vsキチガイ障害家族のユニーク構図がより明確となり面白さが増しただろうし、赤ずきんの少女の役回りももっと活きてきただろうだけに、勿体ない話である。

アジャ監督の、場面場面の見せ楽しませ方を重視するあまり、ストーリー的な流れや構成が疎かになりがちな傾向は、『ハイテンション』とさほど変わらずな模様だ。

だが、デリケートな題材を悪趣味に暴走させる狙いと、見せかけの政治思想プロパガンダが変容していく皮肉、その二つが相乗効果を起こして奇妙な独自性を生み出した、もはや旧作などどうでも良くなる傑作ホラーに仕上がっているのだから、これは楽しまなければ損だ。

グロ描写が苦手な人、政治的に偏向しており且つ物事の表層的な面しか目に入らない人らには向かないが、そうでなければ不快と快感をコントロールされる楽しみを味わえる事受け合いだ。興味があるなら是非。


蛇足:
本作の様な、核の被害者を怪物、悪役扱いする作品は日本でも、有名なウルトラセブン12話『遊星より愛をこめて』の他にもいくらでもあり、『ゴジラ』などはそのまま究極であり、『ゴジラ対メガロ』に至ってはもう何が何やらである。同じウルトラセブン内でも、ギエロン星獣が登場する『超兵器R-1号』の方が、そのカラーはむしろ強い。

作品をマトモに観もせず製作意図の理解すら行えない、乏しい知能と理性の持ち主の分際で、人類の文化と表現の自由を蹂躙し己の利益とする人権ヤクザどもなど、百害あって一利無しのクズ以下の存在でしかないと断言し心の底から軽蔑する。むしろコイツらが封印されてしまえ。




tsubuanco at 16:18│Comments(2)TrackBack(2)clip!映画 

トラックバックURL

この記事へのトラックバック

1. (゚o゚)♪THE HILLS HAVE EYES 1&2  [ 仮 なんや ]   2008年03月04日 02:10
ヒルズハブアイズです。丘に目です。見られているようです。 昔の同タイトル映画のリメイクらしい。 核のせいで変異したクレイジーゴナクレイージー奇形人間様(北斗の拳のあべしの顔)たちが、セクター16っていう砂漠と丘しかない場所にキャンピングカーで迷い込ん...
2. (゚o゚)♪THE HILLS HAVE EYES 1&2  [ 仮 なんや ]   2008年03月04日 02:14
ヒルズハブアイズです。丘に目です。見られているようです。 昔の同タイトル映画のリメイクらしい。 核のせいで変異したクレイジーゴナクレイージー奇形人間様(北斗の拳のあべしの顔)たちが、セクター16っていう砂漠と丘しかない場所にキャンピングカーで迷い込ん...

この記事へのコメント

1. Posted by 力薬   2008年01月14日 13:18
蛇足には全く頷いてしまいました。何かにつけてアニメやゲームや映画に責任を擦り付けるメディアや輩も同罪に思います。

本編はおっぱいに関しては谷間アピールのみで寂しかったです(笑)
ルビーの本編における中立的な存在の役回り(本編ではおそらく最もマトモかと)が彼女の最期を唯一切なく感じました

政治関連はあまり深く考えてはなかったからかなかなか楽しめたと思います。ホラーで久々に鑑賞後感良かったですし…
2. Posted by つぶあんこ   2008年01月14日 19:52
ルビーの悲劇性にスポットを当てたりすると、更に楳図かずおっぽくなる様な気がします。

この記事にコメントする

名前:
URL:
  情報を記憶: 評価: 顔   
 
 
 
Comments