2008年01月12日

ピューと吹く! ジャガー THE MOVIE 31点(100点満点中)

がっかりイリュージョン1800円
公式サイト

『セクシーコマンドー外伝 すごいよ!! マサルさん』にて独特の脱力シュールギャグが大受けしブレイクしたうすた京介の最新作、週刊少年ジャンプでさりげなく長期連載中の同名漫画を何を血迷ったか実写映画化

今までにないタイプのギャグ漫画を引っさげて登場する漫画家は少なからず存在するが、結局のところ出だしのインパクトのみが引き出しの全てである事を露呈しながら消えていく一発屋がそのほとんどを占める、寿命と賞味期限の短さがギャグ漫画界の常であり、その中において、デビューから10年以上が経過し、作風の基本的な方向性は変わらないままで尚、一向にマンネリ化せずに読者を魅了し続けている本原作は、作者のセンスが一流以上である事を如実に表しているものだ。そしてキャリアと共に画力と表現力が更に洗練され続けているのだから素晴らしい。

シュールなボケに対するツッコミという漫才的なギャグ展開と、ボケに突っ込まずに更にボケを重ねて暴走、あるいはツッコミがボケに取って代わって収拾がつかなくなる、などのギャグパターンを様々に絡み合わせ、歪んだ世界で歪んだキャラクターが繰り広げる、ダラダラとドタバタの緩急を駆使した"うすたワールド"が原作の魅力そのものである。

のだから、うすた作品を映像化する場合、その独特の世界観を理解出来ていない事にはまず、作る意味すら希薄となる事は言うまでもないのだが、本作の作り手がそれを行えていたかと鑑みれば、どうにも肯定しがたい結果となっているのが実情。

確かに、ジャガー、ハマー、影千代先輩、セガール、ビリー、あるいはジュライのメンバーなど、ビジュアル的な面において、原作のキャラクターをそのまま実写化したかの様に再現されている、見た目でのインパクトは強烈で、特にジャガーのデザインを敢えて漫画そのままにする事で、シュールな空気を実写ドラマの世界に持ち込む事には成功していると言える。

板尾創路の影千代先輩も、藤子絵をパロッた原作絵とは全く違うのに何故かソックリに見えてしまう、実写化ならではの不可思議な現象がシュールさを更に増しており、このあたりは企画ネタとして成功していると感じられる。

また、ふえ科教室のセットにおける壁の貼り紙や、冒頭に意味もなく原作そのままのスタイルで登場するユニばあさんなど、原作で使われていたビジュアルを極めて忠実にそのまま再現している箇所もそこかしこに目に付き、デザインや美術、造形的な面においては、原作ファンに対するサービスと感じられる小ネタは満載である。着ぐるみで再現されたハミィも、大きすぎる気はするものの、別に出さなくても話は成立するのにわざわざ造形した事は評価に値するし、「大きいーっ!」と観客がピヨ彦的に突っ込むのも面白さのうちだと好意的に捉える事も可能だ。

のだが、そうしたハードとしての"見た目"の再現度の高さ、出来の良さに比して、ソフト面であるストーリーやキャラクター描写においては、原作の面白さを全く理解出来ていないとしか思えないだけでなく、映画スタッフによって改変、追加された新しい要素もまた、原作を超える、あるいは原作に代わる面白さを見出せる事もない、センスと志の低さが顕著な惨状を呈している。

まずキャラクター的な面において、原作キャラクターの持っていた特徴、個性が意味もなく変えられてしかも描写不足なため、ただそこにいるだけ、ただお話に沿って動かされているだけ、としか感じられない状態となっており、それで楽しめるわけがないのだ。高菜(高橋真唯)などは明らかにその犠牲者であり、映画を見て彼女を"面白いキャラ"と思う人がいるとは思えない。

ジャガーが一度も笛を吹かず、ピヨ彦が何の葛藤もなく笛を吹く、これが原作とは根本的に異なるキャラクター描写の究極だが、ではそうなる事で作品が面白くなっていたかといえば全くそんな事はなく、むしろピヨ彦がギタリストに憧れていたのにふえ科に入れられてしまう序盤の描写とは乖離し、作品としての一貫性すらなくなっている有様だ。

そうした、映画スタッフの自己主張オナニーとしか思えない理由で原作を壊した事で原作の面白さは消え、代わる新しい面白さも生まれないだけでなく、誰も望んでいない東映Vシネのごとき不快な暴力描写を延々見せられるに至っては、がっかりを通り越して怒りすら覚える程。うすたワールドにおいての拷問や暴力とは、シュールギャグによる精神的苦痛であるとの、最低限の理解すらないのだから困る。

セガールの登場から始まるファーストシーンにおいて、暗転画面にてクチャクチャと咀嚼音のみを聞かせていきなり観客を不快にさせた事からも、スタッフの品のなさ、センスの悪さ、観客が望んでいるものとの乖離は、実は最初から露呈していたのだ。

原作では"変な歌詞"がギャグパターンのひとつであり、それを再現しようとしているものの、漫画では文字として表示され、じっくり読んで時には読み返して、その意味のわからなさを感じて笑う事が出来る様になっているのだが、映画では普通に歌として歌われ、あまつさえテロップすら出ないために、まず正確に聞き取る事すら困難なため、"歌詞の面白さ"を感じる段階まで至りきれないのだ。

この様に、漫画と映画という異なるメディアの差異における移行作業が、作り手の理解と認識の甘さにより失敗している部分があまりに多く、観客を楽しませるためにはどうすればいいのか、という最低限の気遣いすら感じられない。

だがそれでも、序盤においては表層的なビジュアルの再現度に誤魔化され、ジャガーの初演奏シーンにおける演出テンポの悪さもまた、その場面内での気まずさを表現するための意図的なものと思わされていたのだが、実はそうではなく単に全編通してテンポが悪いだけだったと途中で気づいた頃にはもうどうしようもない。

とにかく見た目の面白さと内容の(悪い意味での)つまらなさのギャップが激しすぎる本作、恥ずかしいコスプレ劇を真顔で演じきってくれた要潤をはじめとする出演者には賞賛を送りたいが、脚本家と監督には侮蔑と軽蔑しか感じない、残念な失敗作に終わっている。むしろ全編を蛙男商会のアニメで通した方が面白くなっただろう。

ただし繰り返すがビジュアル的な楽しみはそれなりに得られるので、映画を見に行く必要はないがパンフだけ買って帰って見て楽しむプレイはオススメする。

原作ファンしか興味を持たない作品なのに原作ファンであるほど不快になる出来なので、レンタル待ちで充分だ。自己責任で。



tsubuanco at 15:24│Comments(7)TrackBack(8)clip!映画 

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この記事へのコメント

1. Posted by まる   2008年01月14日 16:11
初めまして♪
いつも更新を楽しみにして覗いてます|ω・*
ジャガーさん観に行かなくて良かった…
なまじビジュアル面がすごいせいで本格的な「がっかり」を期待することもできませんしね…
2. Posted by sheep   2008年01月14日 18:55
あまりの完成度の高さに「ふえROCK」を追求してしまうところでした。拾いはジャガーさんのライブくらいでしょうか。

原作がどれほど面白くても「映画はそれだけで通用するもの作れよ」という自分としては、製作者に猛省を促したところです。
いや、促さないから二度と映画作るな、といったとこでしょうか。
3. Posted by つぶあんこ   2008年01月15日 17:48
ビジュアルムックなどを見てニヤニヤしているのが、一番幸せな楽しみ方ではないかと。
4. Posted by     2008年01月18日 21:57
がっかりイリュージョン、というわけですか・・・
5. Posted by 健太郎   2008年01月27日 20:40
2 こんばんは。

私は笑いのツボが合わなかったのか全く笑えませんでした。
まるで作中の「新曲を出すたびにファンが減るバンド」かオギヤハギのコントのようでした。
6. Posted by つぶあんこ   2008年01月29日 10:37
笑えないのが標準でしょう。
奇しくも劇中での、期待に背き続けるジュライにガッカリして去っていくファン達の図が、この映画の観客のガッカリとシンクロしてしまっているかと。
7. Posted by ガンヘッド♪   2008年02月05日 00:55
こんちは〜♪

ああ、オイラが感じた怒りと批判が
つぶあんこさんの記事にちゃんと言葉
で表されてる!(T▽T)
嬉しくてちと涙ぐんでしまいました。

やっぱりこれってリアルながっかり
イリュージョンですかねぇ。(^^ゞ
ポスターに「面白くはねぇよ。」って
書いてあったらちょっとは救われた
のに・・・(T-T)

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