2008年01月14日

銀色のシーズン 25点(100点満点中)

スゲー!スゲーよ多英!多英スゲー!
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底抜け邦画大作『LIMIT OF LOVE 海猿』の予想を超える大ヒットが記憶に新しい、羽住英一郎監督による最新作

監督の意図外での様々なしがらみが多分に感じられる『海猿』シリーズとは異なり、本作や『逆境ナイン』など"ヒットのご褒美"として作らせてもらえた作品においては、殊更な恋愛色を可能な限り控えめにし、本筋である"男の求道"をメインとしたがる(『逆境〜』は原作からしてそうだが)あたり、昨今の日本映画に出資者が求めている方向性とは明らかに乖離しており、そうした面で少なからずの苦悩があるのだろうとは想像に難くない。

そして本作、ご褒美作品とはいえ大ヒットの次作として、年明け第一弾の邦画大作として、過剰な期待と重責を担わされてしまい、画面からも伝わるあからさまなスポンサー色(ラストの競技シーン、滑り降りた主人公のバックにデカデカと映る「スーパードライ」は露骨過ぎる)を見るまでもなく、監督本来が志向していた事が、あらゆる横槍によって散々につぎはぎされ、結果として全てが中途半端で締りのない出来に至ってしまったのだろう。

とはいえ監督自身が備えているセンスや技量がさして高いわけではない事は、もっとも制約が少なかったであろう『逆境ナイン』が、原作に準拠した部分以外で面白いところがなかった事からも明白であり、そもそも『海猿』シリーズがヒットした事が全ての間違いの元にあるのだ。

主人公(瑛太)の自己克服ドラマを中心としながらも、何故か一人でやってきた結婚間近の女性(田中麗奈)、主人公とチームを組む二人のスキーヤー(玉山鉄二、青木崇高)そして町起こしに懸命になる人々、といった各要素がろくに絡み合わないどころか一つ一つのエピソードがロクに解決すらなされないままに中途半端に放り出されておしまいでは、何が何やらである。

特に中途半端感が強いのが玉山鉄二絡みのエピソードだろう。競技としてのスキーから"逃げた"過去を持つ事で、主人公と相似した構図を持たせておいて、その両者の克服のドラマにおいて相似あるいは対称の展開をさせてドラマを盛り上げるなどといった事には全くならず、思わせぶりに出てきた後輩(林剛史)は結局何もせずフェードアウトし、主人公のセリフひとつで納得しておしまいでは、単に話が横道に逸れただけで散漫な要素を増やしただけだ。

イエロージャケットが見た目の印象に残る青木崇高に至っては、特段の過去やドラマがあるわけでもなく、完全に存在意義はゼロである。一応は"川を渡る"というシチュエーションを用意してはいるが、その事がドラマに絡んでこないの玉山以上で、これなら玉山と青木を一人にまとめてシェイプアップさせた方が散漫な印象は軽減された筈だ。このあたり、キャスティングを優先させた事による弊害が顕著に現れた悪例だろう。

田中麗奈演じるヒロインも、後半に判明する"真相"そのものはいいとしても、では彼女はその事を自覚していたのかどうか、していたのなら何を考えての行動なのか、といった心理、動向の描写が皆無といっていい程で、あるいは事実を認めたくなくて逃避的に行動していたのだとすれば、その心理の歪みが前半部にて端々に現れ、観客に微妙に気づかせるなどの工夫がない事には、ドラマとしての構成足りえていない。

冒頭のスキー場面や雪崩誘発のギミックなど、荒唐無稽な世界観を標榜している事はよく伝わってくるが、そのためには人間の心理や動向そのものはリアルに共感、納得出来るものとして描かない事には、全てがありえないウソでは作品は成立しないのだ。本作はその点で完全にバランスが破綻している。少しも面白くない水道管破裂場面に無駄に尺を割いているあたりからも、そのバランス感覚の無さは顕著だ。

ただしその冒頭のスキー場面において、スタントによる実演を上下様々な角度から的確に捉え、更には主人公がジャンプ台を滑降する様を、ワンカットで視点を180度転換して回り込んで捉えるアニメ的な映像構成など特撮を絡めた映像のクオリティは高く、ヘタにウェットなストーリーなど入れず、ノリノリのテンションで通した方が、何も残らずとも楽しめるものは出来ただろう。

雪山の遠景を画面奥の背景とし、手前に同じく雪山の山肌を超接写で共に収め、その映像が横移動して主人公のスキーと足が映り込み、マクロの背景とミクロの被写体の双方を同時に見せる事で、舞台や題材などあらゆる要素を最初に提示するファーストカットが導入としては最適だった事もあって、序盤で少なからず抱かされた期待が、あっという間に消え去ってしまうのだから残念に尽きる。

そうした映像的な良さもまた後半には影を潜め、クライマックスであるはずのラストの競技場が、過去の映像としてTV画面越しに見せられるロケーションと違いがわからない(というか同じ場所なのだろう)に至っては、結局のところ序盤で見られたビジュアルのセンスは、本編監督ではなくスキーパートの撮影スタッフと特撮スタッフのセンスによるものだと判明し、やはりこの監督に大作を撮らせるのは間違いだと再確認させられる。

そのラスト競技に至る展開でも、主人公の滑降順になってからヒロインを競技場に運ぶシチュエーションが開始され、いつまでたっても主人公が登場しないという、『LIMIT OF LOVE 海猿』の電話告白シーンと同様の時間感覚のありえなさがツッコミどころとして気に係ってしまい、時間に追われるドキドキが逆効果になってしまうあたり、同監督らしいとえいばらしい(笑

序盤のスキー映像と、田中麗奈の雪山衣装効果による美しさと入浴シーン、および瑛太の見えそうで見えない入浴シーンくらいしか見どころのない、ダメな邦画大作の典型に終わっている。

TV待ちで充分。自己責任で。


余談:
精神的に未熟な10代の若者に町や国の期待を背おわせておいて調子に乗らせ、失敗したら手のひらを返す様にバッシングする、現実の現象に対する批判めいたものが感じられるのは気のせいではない筈。

大技に挑戦して失敗しリタイアした事を"やりきれなかった"悔いとし、クライマックスではやはり失敗するも立ち上がって完走し"やりきった"と解消させるなどは、今井メロに対するバッシングへの無理からなフォローとも邪推させられる。そう考えると競技前の調子の乗り方は成田童夢か。

あるいはフジが出資している事も併せ、里谷多英叩きに対する意趣返し的な意味合いすら感じられ、そうした作り手の思惑の押し付けによってストーリーが散漫となり、主人公達への共感や感情移入を阻害しているのだとしたら本末転倒だ。むしろそうした側面に特化した内容ならば面白かったかもしれないが。



tsubuanco at 17:26│Comments(1)TrackBack(15)clip!映画 

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1. Posted by 哲方   2008年01月16日 00:27
金だ金だと鼻息荒いのはスポンサーとおこぼれを期待しているマスコミと取り巻き位。
少なくとも有力外国選手の腕前と比べてから金金言えって…ね。

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