2008年01月07日

ジャーマン+雨 38点(100点満点中)

それともカール・ゴッチは超大物ではないかな?
公式サイト

インディーズ映画コンペにて得た賞金50万円を元に製作され、何故か配給会社の目に留まって公開される事となった、横浜聡子監督の初劇場公開作品。

山下敦弘によるインディーズ作品に主演した事で知られる野嵜好美が主演している本作、彼女が演じる主人公・よし子を中心に、各々のトラウマを共通言語として世界が描かれていく。

のだが、内容よりも先にまず気にかかるのが撮影と編集の稚拙さだ。視覚的インパクトを要点としている作品において、特にファーストシーンは人目を惹きつつ自然に作品世界へと観客を導入する事が要求されるにも拘らず、調理実習室(?)から始まる映像構成がいきなり素人が遊びで撮った映像の様で面食らわされ、続いての"よし子"の登場に至っては、インパクトどころかフェードイン気味にいつの間にやら登場してしまい、まず顔が見えない状態から始まるのは良いとして、では何故彼女が笑われているのか、体型や動きなどで表現してくれない事には通じない段階ながら、これといった特徴的な印象も与えられず、遂に顔が見えるに至ってもまた、顔に視点を誘導する工夫もなく散漫な画面構成で顔を出してしまい、顔自体もゴリラーマンと呼ばれる程のブサイクでもないから尚更である。

最初からそうしただらしのない映像を見せられてスッカリ気持ちを萎えさせられてしまうも、ユルく作り込まれたキャラクター達による脱力感溢れるグダグダなやりとりで物語を展開させる狙い自体はそれなりに成功しており、彼女らが向かっている先に興味を持たされる事もまた確かだ。

ちょっとした小道具や動作、言葉遣いといった小ネタを駆使し、各局面でのリアクションにディフォルメされたリアルをシュールに重点を置いて持ち込む事で、それぞれ単独で見れば面白いと思える箇所はそこかしこにあるが、全体的に見た場合、よし子の友人である"まき"(藤岡鈴音)がよし子を見る、彼女視点から物語を始めながら、いつの間にやらよし子視点に転換してそちらばかりになるなど、構成面での不確かな曖昧さによって、作品世界への没入や人物への感情移入が阻害されがちとなり、散漫で締まりのない印象となってしまっている。

これは作り手の中にある迷い、あるいは方向性を決めかねているために、それがそのまま投影されているのだとは想像に難くない。殺したと思った父親がやっぱり生きているといった無駄に救いを与えてしまう展開からもそれは見て取れる。

クライマックスにおける段階的なオチの一つとして用いられているダイビング場面にて、いざスタートしてから落ちるまでを、よし子が手前でマンホールが奥にある最初の画角から動かさずにそのままワンカットで見せてしまった方が格段のインパクトとなって笑えるものを、駆け出した途中でカットを切り換えてしまったため面白さは大幅減だ。切り換える前も後も、撮り方の狙いとしては悪くなかっただけに、どちらかに固定すべきだったろう。

その直後に暗転状態で行われる、更なるオチとなる会話のやりとりは充分に面白いが、そのまま終わっていればいいものをイメージ映像的な世界を更に続けてしまうのは明らかに蛇足だ。狙いとしては、落書きシーンで見せられた、よし子一人だけのイメージ世界的な映像に対して、ラストに全員が参加してのそれを配置する事で、内的世界の解放や広がりを表現したかったのだろうが、この描写はつまるところどちらもテンポを停滞させてしまっているので、無い方が良かっただろう。

似た様な無計画(的に見える)イメージシーンとして、体育館でのドッジボール場面が存在するが、これもまた、よし子というキャラクターを笑いと共に表現する一端は確かに担っているものの、リアルと仕込みの境界があからさまなために、意図が充分に果たされたとは考えられない。

またこれは作品内容とは無関係だが、撮影日数を考慮しても現実問題として50万円でこの規模の作品を製作する事は不可能だ。もちろん出演者やスタッフが無給どころか持ち出しのボランティアなら成立するが、流石にそれはないだろう。仮に一人につき1日1万円の人件費がかかったとして、10人いれば10万円、半値としても5万円が最低限毎日必要とされるのだ。もちろん金が必要なのは人材だけではない。

そんな、どう考えても無理がある予算額を殊更に強調するなど、一介のインディーズ作品に対する恣意性の強い持ち上げ様からは、業界内における種々の大人の事情がプンプンと匂うもので、監督本人の人となり、そして本作の劇場公開を押し進めた大元は誰かなど併せ考えれば、どういう事かおおよその想像はつく。

などとどうでもいい事に考えを巡らすといった、程度の低い楽しみはある程度得られはするが、作品的には友人知人でもない限り特に望んで鑑賞する程の出来ではない。自己責任で。



tsubuanco at 17:50│Comments(2)TrackBack(2)clip!映画 

トラックバックURL

この記事へのトラックバック

1. 【2008-63】ジャーマン+雨  [ ダディャーナザン!ナズェミデルンディス!! ]   2008年03月18日 00:42
1 人気ブログランキングの順位は? 不細工 わがまま ひとりぼっち 林よし子 16才 大人も子供もドイツ人も 嘘もホントも 何もかもごちゃまぜのこの場所で よし子は よし子のやり方で 世界に触れんと手を伸ばす! よし子は歌う。 トラウマなんてくそくら....
2. 「愛の予感」「ジャーマン+雨」映画館レビュー 静と動  [ 長江将史〜てれすどん2号 まだ見ぬ未来へ ]   2008年04月10日 14:28
セリフがないもんで、登場人物の動きや表情から、その行動の意味を想像しようとする。

この記事へのコメント

1. Posted by 涙目   2008年01月24日 23:27
「50万円を元に」ってことだから、それが全予算ではないでしょう
まさか50万円でこの規模の映画が撮れるとは正常な社会人なら思いますまい
だからこの表記はありなんじゃないでしょうか
それとも私の知らないところで殊更アピールされてるのかな

上映後トークショーのある時に見たのですが、野嵜好美も横浜監督もいい人そうだった
野嵜好美は「道」「彼女が歌う理由」と見てきたので、実物みれてよかったです
山下監督がこの作品を見て泣いたのは
「酔っ払っていたからかな」だそうです

「作り手の中にある迷い」「散漫で締まりのない印象」というのはわかる気がします
期待してたより面白くなかったんですよね
「ゴリラーマン」が好きなところとか横浜監督には好感が持てるので、これから期待しています

「どういう事かおおよその想像はつく」
これは是非書いてほしかった
今回は読んでいてドキドキしました
2. Posted by つぶあんこ   2008年01月25日 17:52
オラもなんだかワクワクしてきたぞ

この記事にコメントする

名前:
URL:
  情報を記憶: 評価: 顔   
 
 
 
Comments