2008年01月18日

28週後... 51点(100点満点中)

1週間後またここに来てくれ、本物を味わわせてやろう。
公式サイト

感染パニック映画『28日後…』の続編。前作監督のダニー・ボイルは製作にまわり、今回はフアン・カルロス・フレスナディージョが監督を務める。

本シリーズ、よくゾンビ映画と称される事が多く、実際に過去のゾンビ映画からのオマージュと見られる要素もいくつか散見されはするが、どちらかといえば『処刑軍団ザップ』『2000人の狂人』などのキチガイパニック映画や、『シーバーズ』『クレイジーズ』ら感染パニック映画に属する作品であり、これらのジャンルは親戚の様な間柄ではあるが混同してはいけない。

ビデオ撮り丸出しの安い画質に始まり、超低予算の小規模作品である事が画面からありありと伝わってきた前作『28日後』だったが、それが予想外のヒットで世界を駆け巡った上で作られた今回は、配給がFOXサーチライトから20世紀FOXにランクアップした事が象徴している通り、予算も規模も大幅にスケールアップし、大作映画として製作されるはこびとなった。

これによって、この種の作品に欠かせない、荒廃した都市の風景や、襲い来る感染者、逃げ惑う人々、応戦する軍隊など、存分に広い画角でスクリーンに映し出す事が可能となり、その圧倒的な物量や迫力、リアル感によって観客を魅了出来るのが、大作化による強みである。

だがその一方で、観客層のターゲットをより広範囲とする必要性、あるいは出資者を納得させる説得力が、予算が増えるに従って要求されていく事もまた確かで、本作もその例に漏れず、小規模ならではのテーマや表現を行えていた前作に比べ、その毒気は大幅減となり、一般向けホラーパニック映画としての普遍的な娯楽性を追及する方向へと変えられている。

感染者をゾンビやモンスターではなく、あくまでも"発狂し暴走した人間"とする事で、それを殺す事の意味合いをより背徳的な行為とし、感染していない人間側の欲望によって起こる争いや殺戮の方をむしろクローズアップして、人間の業や愚かしさこそが実は最大の脅威となる展開に代表される、様々なアイロニーによって社会を戯画化していた事が前作最大の特徴であったが、その様に主張やテーマを展開に対し自然なかたちで内包させる工夫が、今回は非常に甘く感じられてしまう。

軍隊が頼もしい味方とはならないのは前作と同様だが、その軍がとる行動が、事態を悪化させて物語を盛り上げようとする作り手の目的が最優先されて、あからさまにご都合主義、ツッコミどころとなっているのでは、表現による年齢制限とは逆に子供騙しでしかない。

仮住居の管理を任されている父親がフリーパスIDを所持していると説明しただけで、民間用だけでなく軍拠点の奥にまで入り込めてしまう理由とするのはあまりに乱暴すぎる。単なる自然災害ではなく絶滅の危機を抱えて油断ならない状況で、その元凶に関わる場所に研究とは無関係な民間人が入れるわけがないだろう。

感染の可能性がある生存者を収容してその可能性を検証している最中に、見張りも監視カメラも用意せずに侵入者が暴れても誰も気づかず、軍施設のど真ん中をウロウロしている父親は何故かいつまでたっても発見されず、兵士はあきらかに様子のおかしい男を見ても何も考えずにすれ違おうとして襲われる、と、国家の危機が継続中にも拘らず危機感のなさすぎる有様には、いったいどこの平和ボケ国民だと呆れ返る他ない。

つまるところ米軍批判をやりたいとの思惑はわかりやすすぎるほどにストレートにバレバレだが、それを説得力や必然性として物語展開の裏に潜ませる事を放棄し、誰が見ても突っ込んでしまうレベルのバカ集団としか表現出来ていないのは、作り手の知能程度が作中で描かれているバカと同レベルだからだとしか考えられない。

前作と同じ時間に別の場所で起こっていた出来事として、本作のメインになる家族の父と母が経験した恐怖を見せる序盤の展開は、今回から観ても意味が通じる様にとの配慮や、必死で逃げる父親をカメラが追うその背景から、全力疾走の感染者達が次々に現れ父親に向けて迫りくる映像など、圧倒的な迫力と恐怖と絶望を一気に味わわせる映像によって、観客をいきなり作品世界へと引きずり込む効果を大いに果たしている。

そのシーンにて、(他人の)子供を救おうとした母親は感染者に追い詰められ、一人で逃げた父親だけが何とか逃げ延びる、平時のヒューマニズムを踏みにじる皮肉な展開も面白く、これが発端として本筋のパニックへと繋がってくる、といった風に、導入部の出来はよく、ためにこれから始まる本筋に対する期待が高まりすぎてしまう事も、皮肉ながら本作にとっては不幸だったのかもしれない。

その後の展開にて、母親には抗体があったから感染しても発症しない、という事実が明らかになるが、感染者は発症していない人間を選んで襲っているのに、母親はあの絶望的状況からどうやって助かったのかが完全スルーのままで話を進められて納得出来るわけがないだろう。

見捨てられて死んだと思っていた方が実は無事に生きており、見捨てて助かった方が発症してしまう、までの皮肉構図自体はいいものの、見捨てた事に対する罪悪感と、見捨てられた事に対する絶望、だが生きてまた出会えた時に生じる両者の感情とそのギャップ、などのドラマが特に描かれる事なく、話を早く感染パニックに進めたいとの作り手の思惑ばかりが前に出て、結局母親は殺されておしまいで父親は発症しておしまい、では、何のための導入部か、何のための家族設定か、何も考えていないとしか思えない底の浅さだ。

遺伝子的に似ている息子にも抗体があるかもしれない、とする事で、辛うじてキャラクター間につながりを持たせてはいるが、それもただ子供が中心となって逃走する話にしたいためでしかないと丸わかりで、結局のところ抗体はどうでもよくなってしまい、父や母に対する思いが展開に絡むこともなく、軍隊側も途中までは尺を割いて描いていながら結局どうでもよくなってしまう、と、本当にドラマというものが全くないのだからどうしようもない。

ロバート・ロドリゲスの『プラネット・テラー』の様に、確信的にツッコミどころを詰め込んで笑わせる方向の作品ではなく、真面目に怖がらせてハラハラさせて社会派のテーマを伝えたい作品としては、脚本の練りが足らなさすぎる

視覚的な見どころとなるパニック場面にしても、近年の同種映画にありがちな、画面真っ暗で寄りすぎブレすぎカット割りすぎで何がなにやら全然わからない上に、更に照明をチカチカ点滅させているのだから、本当にわからないだけで怒りさえ覚える程だ。観客が癲癇で倒れるのは自己責任だが。

どこかの提灯記事に「この臨場感はホラー版『ボーン・アルティメイタム』だ」などと書かれていたが、『ボーン』の激しく細かく動かしつつも何をどうしているのかが手に取るようにわかってドキドキハラハラさせられる、天才的な映像構成センスとは月とスッポンであり、一緒にするのはあまりに失礼すぎる。

ただし暗い場面ではわけがわからないものの(ほとんどが暗い場面だが)、先にあげた冒頭部での全力疾走シーンの様に、明るく開けた野外における感染者がらみの映像には、いくつか飛び抜けて面白い見どころが存在する。それは後半、草原で大量の感染者達が襲いくる一連の展開に詰め込まれ、ここまでのイライラはかなり解消される。

まず地平線の向こうから少しずつ見えてくる感染者の群れを捉える映像にワクワクさせられ、過去には『デモンズ』、最近では『プラネット・テラー』などで行われ定番ネタになりつつある、ローターブレードによる一斉切り刻みシーンを、あらゆる角度から執拗にカットを切り換えて時間をかけて見せてくれるに至っては拍手ものだ。何故このテンションを他の部分に活かせないのか。

と、ストーリーやドラマ、全体的な映像作りには難が多すぎて評価に値しないものの、一部のシチュエーションに飛び抜けた面白さがあるために、駄作と切り捨ててしまうのが勿体ない作品ではある。姉を演じるイモージェン・プーツの、スクリーン栄えする美貌も大きな見どころだ。

ジャンル好きならとりあえずチェックしてアレコレと突っ込むのも楽しみの一つだろうが、それは作り手の本意ではないだろう。興味があれば一応、という程度か。



tsubuanco at 23:43│Comments(2)TrackBack(12)clip!映画 

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この記事へのコメント

1. Posted by CRZ   2008年01月24日 23:32
本文にもありましたが米軍批判というかあまりにも融通がきかなすぎるところが強調されていた気がします。
ゾンビが車を押さないとか車を運転しないとか考えないのかなあ。

正直チカチカするシーンが前回に比べて多すぎました。ホラーのボーンアルティメイタムとはどの口がいったんでしょうかねw
2. Posted by つぶあんこ   2008年01月25日 17:55
よく言われる「軍は国民を守らない」を、まんまベタに強調してるのが寒々しいですよね。日教組御用達の啓蒙映画かと。

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