2008年01月20日

シルク 31点(100点満点中)

非常階段の丸顔な方
公式サイト

日本では『海の上のピアニスト』の原作者として知られるイタリアの作家、アレッサンドロ・バリッコの短編小説『絹』を、カナダ・フランス・イタリア・イギリス・日本の共同製作にて映画化。監督は『レッド・バイオリン』などで知られるフランソワ・ジラール。

だがしかし、作品の最初の舞台となる田舎街における登場人物達の会話が全て英語で行われ、マイケル・ピットやキーラ・ナイトレイといった出演者らからも、今現在話が進んでいる場所がまさかフランスだとは、一体誰が気づけるのだろう。実在の地域を舞台としているならそこから認識する事も可能だが、何せ架空の街なのでそれも不可能だ。

主人公が日本へ向かい始めるあたりから辛うじて、ひたすら陸路を辿っており、語られる実在の地名などから、「フランスの話だったのか?」とようやくわかってくるのは、作り手の狙いでは決して無いだろう。別にフランスではなくイギリスやオーストリアだと思っていても本筋には大して問題はないとはいえ、この"伝え方の不味さ"自体が大問題だ。その不味さはこの事だけでなくあらゆる部分に表出し、作品の完成度を大いに貶めている。

終盤で畳み掛ける様に明らかになっていく"衝撃の真実"が、そこに至るまでの人物達の動向や描写などの収束点である事は明白だが、肝心なのはそのオチだけではなく、それが判明した時に今までの事象心象が全て一つに繋がるべく、あらゆる描写が印象的に観客に認識されていて初めて、物語構成の面白さを味わえ、結末が示すエモーションに感情を動かされる事となるとは言うまでもないが、本作ではそうした"過程"における表現があまりにも浅い、あるいはそもそも無いため、残念ながら感動には辿り得ない。

架空の街を舞台としている事からも、ある程度の時代性は反映しつつあくまでも寓話として作られている事は原作の段階から必然ではあるが、その狙いを感じさせるにはあくまでも人間の心理自体はリアルに共感、あるいは納得出来るものとして描かない事には、全てが絵空事の作り話では大前提が成立しないのだ。

特に、本作のWヒロインの片翼として、ある意味でキーラ・ナイトレイを超える扱いである芦名星演じる"少女(には日本人の目からは無理があるが)"は黙して語らず、その所作や表情によって心情を表現し、そうなり得て必然な段取りを見せておかない事には通じるわけがないものを、主人公視点を中心とする事にこだわりすぎたためか、必要最低限の描写すら明らかに不足で、そうなるのがお決まりのパターンなのだからそういう事なのだと、観客が好意的に勝手に理解してあげないといけないのでは、文字通りお話にならない。

日本に来る度に主人公が受ける印象が段階的に変化していき、同じく故郷に帰還する度に、妻の様子がまた段階的に変化していく、それを主人公の主観を通じて伝えられる事で、その変化が主人公が変わっているためなのか、主人公だけが双方の土地で過ごす時間に遅れがあるために取り残されている事で感じる違和感なのか、との混乱、あるいは混淆を観客に感じさせる狙いも、描写不足によって狙い通りに果たされているとは考えられない。

人物の心情だけでなく、繰り返す長旅が当時として如何に困難な道程であったかが、あまりにアッサリとしたダイジェストの往復描写からは伝わり辛く、そうした基盤、バックボーンが薄弱な事で、心情描写に説得力がなくなる、悪循環に陥っているのだ。

ただ、日本の文化や風俗、時代性にリアルさが欠けているのは、フランスの舞台が架空の街であるのと同様に、寓話として事象ではなく心象、情感を最優先とし、そちらに合わせた描写とする意図によるもので、それ自体は、最高級の絹を作り出す世界の果てにある未知の民族を実際に目の当たりにした、当時の西洋人が受けた印象をカリカチュアライズして表現しているものとして、必然として意義あるものであり、これにツッコミを入れるのは作品の方向性を見誤っている。

日本が舞台となり、芦名星だけではなく役所広司や中谷美紀、本郷奏多ら日本人俳優が出演する洋画大作、なるフレコミから一般に期待される、『ラストサムライ』や『ブラックレイン』の様なわかりやすい娯楽作品ではなく、かといって『バベル』にも類する様な、本来の方向性である寓話としてのエモーションも弱いのでは、もうキーラ・ナイトレイと芦名星による東西貧乳競演くらいしか見どころはないと言っても決して過言ではない。

のだが、芦名星の乳首が見えるのはほんの1カットで濡れ場は無し、キーラはベッドシーンが何度もあるが暗くてせっかくの乳首も薄ボンヤリとしか見えず、それをだけを期待して観に行った場合、そもそもガッカリおっぱいな上に更なるガッカリを味わう事となるので要注意だ。

出演者のファンなら一応、といったところか。自己責任で。


tsubuanco at 17:49│Comments(3)TrackBack(28)clip!映画 

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この記事へのコメント

1. Posted by ほんやら堂   2008年02月25日 21:45
そもそも題名の「シルク」って肌の美しさを言っていた筈ですね.

その割にはあまりそれを連想させるシーンがなかったみたいです.

原作者や監督の思いこみが,観客(特に日本の)に届いたのかが気になる映画でした.
2. Posted by つぶあんこ   2008年02月28日 11:02
劇中と同じく、思いが果たされる事はない様な。
3. Posted by kimion20002000   2009年01月08日 21:29
この作品の日本側プロデューサーは、酒井園子さんとおっしゃる国際派でありながら元日本で映画のバイヤーをやっておられた方の、初プロデュースなんですね。
彼女自身の、ご先祖も、絹の関係で日本に同時期に尋ねてこられたりしていたようなんです。

http://www.hollywood-ch.com/report/interview_silk.html

インタヴュー読みましたが、余計になんだかなぁ、という印象です。

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