2008年01月21日

ネガティブハッピー・チェーンソーエッヂ 13点(100点満点中)08-020

死ぬ気になれば何でも出来ると人は言うが、何も出来ないから死ぬのだ。
公式サイト

『NHKにようこそ!』で知られる引きこもりライトノベル作家、滝本竜彦のデビュー作を、2002年のラジオドラマ版に続き実写映画化。監督はモバイル配信ドラマ『チキン☆デカ(国産)』の北村拓司。

リアル引きこもりによって書かれた引きこもりラノベである『NHK〜』は、当の引きこもりの心情や願望をリアルに描いた事で日本中の引きこもりオタクの共感を得てヒットした、ある意味有害図書だったが、本原作もまた、10代の(内的・外的共に)引きこもりオタクに概ね共通する、己の甘えや甘さからくる苦悩や欲望の痛々しさを、その事に自覚のないスタンスによって書かれており、真っ当に生きている人間が読むとその痛々しさに情けなくなって涙が出てくる内容に終始しているもので、これに共感出来る大人は少し自分を見つめ直した方がいい。

自分の事しか考えておらず、全ての都合が自分のために動いてくれて当然と思っているからこそ、そうはならない現実に眼を背けて己の内にて縮小再生産を繰り返す事しか出来ないのが、現代日本における引きこもりの大半だが、本作の主人公もまた自分の願望や欲望を適える事を最優先に他者との関係を進め、あるいは物語構造そのものが、主人公の見ているものしか存在しない描写に終始し、主人公以外の登場人物に、主人公にとって必要とされる以外の背景や歴史が存在せず、それは主人公そのものにまで及んでおり、人物も世界もストーリーも全てが上辺だけの狭窄したものでしかないのは、原作者の肥大した自我に対し、実際の引き出しがあまりに少なすぎる事に起因するものだ。

そうした、一般的な普遍性や発展性が何もないどころか、題材そのものに対する深い考察や自省すらない作品を映画化して、面白いものになるわけがない。

それでも、美少女と怪人のアニメ的な格闘場面を、アニメ的、あるいはまた違ったスタイリッシュな映像にて再現などすれば、視覚的な娯楽要素になり得るし、あるいは若者の内的世界における自己拘泥や葛藤などを、エモーショナルな演出や作劇にて描いていけば、独特な観点による青春ドラマとして成立する事も可能だった筈だ。

だが今回の映画版、まずアクションシーンにおいては、ポールの上に降り立つヒロインや、水面から飛び立つヒロインなど、一部カットにあからさまにアニメを意識した映像が用意されているなど、作り手の狙いとするところは理解出来つつも、それが実際にアニメーション的な映像構成として仕上がっているかと言えば厳しく、例えばチェーンソーブレードの腹に手をついて回転ジャンプするヒロインを捉えたカットにて、手のアップからフルショットへとズームバックするタイミングやスピード、最終的な構図などをもっと突き詰めれば、かなり気持ちのいい映像が出来上がる筈なのに、どうにも散漫で狙いの絞りきれていない、CGの無駄遣いとしか思えない映像でしかないのは、一重に作り手の映像的なセンスの弱さに尽き、結局のところアクションシーンからバトルの迫力や緊張感を存分に得られる事はない。

それでも関めぐみは自ら吊られるなど頑張ってはいると思うが、その苦労は残念ながら報われたとは言い難い。女子高生には見えない、無理があるキャスティングや、あって当たり前のバトル時のパンチラもないなど、大人の力関係が見え見えで呆れもするが、それは彼女自身の問題ではないだろう。

そもそも予算がないのかバトルシーン自体の尺が非常に短いため、バトルの"動"とドラマの"静"による緩急のギャップにて物語のテンポを構成する事すら出来ていない。

それによって、"静"パートとなる、主人公がグダグダと悩み続け、悩んでいる自分に酔って更に悩み続けるドラマ部分の冗長さはより強まり、引きこもりの甘えに満ちた自分大好きな自殺願望(でも能動的には死ねないヘタレの極みw)などに興味も共感も無い一般の観客は、退屈極まりない時間を与えられるハメとなっている。

ストーリー展開もまた、都合よく都合悪く進む、ためにするシチュエーション設定ばかりで、今現在寮に済んでいるのに、親が北海道に家を建てただけで何故学校を辞めてまで引っ越さなければいけないのか、などのツッコミどころはスルーして悩み続け、あるいはそれが主人公の心情内にて、友人やヒロインと離れなければいけなくなる事に対する苦悩と、己自身のポジショニングや自己陶酔との葛藤によって事態が推移するなど何もなく、主人公にとって都合の悪い出来事を都合よく持ってきただけにすぎないなど、あまりにも底が浅すぎおて話にならない。

出演者のファンや特撮ヒロインアクション好きなら、とりあえずは要チェックかもしれないが、レンタル待ちで充分だろう。自己責任で。

原作信者の引きこもり達は映画館になど行かないだろうに、有料ネット配信など閉じた世界で公開しておけば良かったものを、劇場公開した意味がそもそも不明だ(笑



tsubuanco at 17:24│Comments(10)TrackBack(10)clip!映画 

トラックバックURL

この記事へのトラックバック

1. 【映画】ネガティブハッピー・チェーンソーエッヂ  [ 新!やさぐれ日記 ]   2008年01月22日 22:48
■動機 「な行」強化月間&復活(?)の市原隼人 ■感想 バカ映画なのか真面目映画なのか・・・ ■満足度 ★★★☆☆☆☆ あんまり ■あらすじ 目的もなく平凡な日々を送る高校生の陽介(市原隼人)は、謎めいた制服の美少女、絵理(関めぐみ)と出会う。彼女はチェ...
2. ネガティブハッピー・チェーンソーエッヂ  [ 空想俳人日記 ]   2008年01月22日 22:59
先立たれ 孤独に向かって お仕置きよ   イントロいきなりの時代劇風に一瞬、映画館を間違えたか、なあんて、おマジにややビビッた私でしたが、イントロの最後が、まさかの2001年宇宙の旅であることに、こいつは大袈裟な奴やなあ、と笑いをこめて、大丈夫「ネガ...
3. ネガティブハッピー・チェーンソーエッヂ<試写会>  [ お萌えば遠くに来たもんだ! ]   2008年01月23日 03:26
観てきました。 <スペースFS汐留> 監督:北村拓司 脚本:小林弘利 CGプロデューサー:豊嶋勇作 原作:滝本竜彦 平凡な高校生の陽介は、ある晩日々の閉塞感から万引をするがすぐに店員に見つかり、自転車に乗って逃げ出す。そのまま公園に来た陽介は、そこでひとり...
4. 『ネガティブハッピー・チェーンソーエッヂ』  [ アンディの日記 シネマ版 ]   2008年01月23日 14:22
笑い度[:ラッキー:][:ラッキー:]          2008/01/19公開  (公式サイト) 感動度[:ハート:][:ハート:] 泣き度[:悲しい:] 青春度[:よつばのクローバー:][:よつばのクローバー:][:よつばのクローバー:] 満足度[:星:][:星:][:星:][:星:]    【監督】北...
5. ネガティブハッピー・チェーンソーエッヂ  [ 佐藤秀の徒然\{?。?}/ワカリマシェン ]   2008年01月24日 23:42
なぜか高校青春ラブストーリーにはまりそう。前回が「桜」なら、こちらは「月」と「雪」。風流2倍、いや実は1.65倍なのだけれど。ちなみにこの写真はキル・ビルとは無関係。滝本竜彦原作、北村拓司監督、市原隼人、関めぐみ主演。
6. ネガティブハッピー・チェーンソーエッヂ&織田裕二結婚続報  [ アートの片隅で ]   2008年01月26日 14:12
「ネガティブハッピー・チェーンソーエッヂ」の試写会に行って来ました。 ウオーターボーイーズ2の市原隼人と「恋空」の三浦春馬が出ているので、絶対に観たいと言っていた息子と一緒に観に行って来ました。
7. 【2008-14】ネガティブハッピー・チェーンソーエッヂ NEGATIVE HAPPY CHAIN SAW EDGE  [ ダディャーナザン!ナズェミデルンディス!! ]   2008年01月31日 23:19
2 人気ブログランキングの順位は? 誰でも一度は死にたがる・・・なんとなく
8. 青春の輝き  [ 炸熱??歌キチ、愛をうたう?? ]   2008年02月04日 05:22
記事にするのが大分遅くなりましたが この作品が今年の初劇場映画鑑賞でした 観に行ったのは1月22日のこと 雪の結晶 夜空に舞う淡雪 唸るチェーンソー 少年と謎の美少女の出会い 空から舞い降りてきたチェーンソーを手にした謎の男 少女...
9. 『ネガティブハッピー・チェーンソーエッヂ』@新宿ジョイシネマ  [ 映画な日々。読書な日々。 ]   2008年02月09日 00:52
寮生活をする高校生、山本陽介は自分の人生に漠然とした不安を感じていた。バイク事故で死んだ親友の能登は自分とは全く違っていた。能登のことを思い出す度、「自分も何かしなくては」と悶々としていた。ある日の夕方、公園で何かを見上げる制服姿の美少女を見かける。そこ
10. 「ネガティブハッピー・チェーンソーエッヂ」観てきました♪  [ りんたろうの☆きときと日記☆ ]   2008年02月17日 17:05
☆「ネガティブハッピー・チェーンソーエッヂ」 監督:北村拓司 出演:市原隼人、関めぐみ、浅利陽介、三浦春馬、野波麻帆、板尾創路、堀井茶渡、坂田直貴、佐藤佐吉、木口亜矢、村田綾子、田中萌、大久保綾乃 家族と離れ寮生活をする高校生・山本陽介は親友の能登がバイク...

この記事へのコメント

1. Posted by 中津   2008年01月23日 14:57
なんでこうも人を蔑むような文章を平気で書けるんですかね。友達いないんでしょうね!!
2. Posted by つぶあんこ   2008年01月24日 17:20
そういうアンタが「友達いないんでしょうね!!」と人を蔑むような文章を平気で書いてるじゃないですか(笑

やっぱり「自分だけは特別」ですか?(笑
6. Posted by 力薬   2008年01月27日 22:08
原作はギブアップながら予告編を目にかかり『リアル鬼ごっこの余興』としてある意味期待してしまいました…
まあ個人的な尺度では『らきすた』並に酷かったです
ニッチもサッチもいかぬという事では同じような原作の「恋空」の映画を先日勢いで見たらホントにまともになってたのでそんな期待を抱いたので残念でした。

何だかヒロイン絡みの事象はKanonの舞ルートを連想しました。いろんな意味で「狙った」んでしょうか…
7. Posted by つぶあんこ   2008年01月29日 10:37
著者の引き出しがエロゲメインなんでしょう。
8. Posted by 咲太郎   2008年02月04日 05:18
野波麻帆の寮母さんが個人的に好きでした
ホント作り方次第では、もっと面白いものが出来たかもしれませんね

あ、上から4行目
ノベルがラノベになってますよ

後下から三つ目の段落(長文)の

ストーリー展開もまた、都合よく都合悪く進む、ためにするシチュエーション設定ばかりで、



都合よく都合悪く進むためのシチュエーション設定

にした方が意味が通じるのではないでしょうか?

つい気になったので、気に障ったらすいません。
9. Posted by つぶあんこ   2008年02月04日 17:46
ラノベはライトノベルの略です。

「ためにするシチュエーション」とは、目的と手段が混同されている、あるいは入れ替わっているという意味の、独立した言葉です。
10. Posted by ノルウェーまだ〜む   2008年02月13日 12:16
こんにちは!
つぶあんこさんの辛口レビューを読んでから行ったので、かなり期待せずが良かったのか、そこそこ観られました。
同世代の高2の娘は、結構良かったといっていましたよ。
彼女もようやくチェーンソー男を倒したところなので〜
11. Posted by つぶあんこ   2008年02月14日 17:40
あまり観る前に本文読まない方がいいかも…
12. Posted by rhforever   2009年03月27日 21:30
ま、内容に関してはあえて反論しません。塚、おっしゃるように自分を見つめ直そうかなとw。

ただ、関めぐみにだけはもう少し温かい目をいただいても。
 確かに年齢的にきついキャストかもしれませんが、自分的にはブレザーの制服にタータンチェックのマフラーってのがちょっと壺でしたので。
 美貌なわりに実に不遇だなというのが思いです。(この作品といいドラゴンボールのチョイ役といい)
13. Posted by つぶあんこ   2009年03月31日 16:14
関めぐみって飯田圭織の偽者にしか見えません

この記事にコメントする

名前:
URL:
  情報を記憶: 評価: 顔   
 
 
 
Comments