2008年01月22日

Mr.ビーン カンヌで大迷惑?! 26点(100点満点中)

海岸での撮影は合法行為
公式サイト

1990年代にイギリスで放送され、日本では当初NHKの深夜枠で不定期にひっそり放送されながらも口コミでブームとなった、ローワン・アトキンソン主演によるコメディTVシリーズの、1997年に公開された『ビーン』に続き10年ぶりの復活となる劇場版二作目

オリジナルであるTVシリーズの面白さは、チャップリンのサイレント映画を彷彿とさせる、動作や状況変化など視覚要素によって笑わせる、老若男女人種を問わないタイプの笑いと、英国コメディらしいブラックな毒やアイロニーで笑わせるタイプの、主として二種のギャグが混淆し、それが短時間に詰め込まれる事で、ボケにボケを重ね重ねてどんどん笑わせていく、そうしたところにあった。

のだが、調子に乗って世界向けに作られた前作映画は、事もあろうに主人公ビーンにペラペラと喋らせて観客をドッチラケさせ、英国的シニカルな笑いを大幅に減らして程度の低い笑いに終始し、時間が長くなった事でテンポが悪くなってダラダラすると、早く帰りたくて仕方ない苦痛の時間を味わわされる完全な失敗作となってしまい、多くのファンの期待を裏切ったものだった。

そして今回、前作最大の問題だった"喋りすぎ"こそは、イギリス人であるビーンが単身フランスへと旅立つストーリーとする事で、逆にコミュニケーション不全をギャグとしてしまうべく設定されており安心出来たものの、それ以外の長編映画化における問題点は残されたままとなり、どうにも笑えない結果に。

ビーン自身のヘンテコな動きや表情は、一歩間違えば単なるキチガイとしか見えなくなってしまう、絶妙なバランスの上で表現されていたものを、本作ではハンディカムによる自分撮り映像にて、彼の変顔が大スクリーンにてアップで執拗に映し出される事でこのバランスは崩れ、タダの気持ち悪いオッサンにしか感じられなくなってしまっている。これがまず致命的だ。

そして、本来は他人に対して容赦なく、子供でも自分の都合で意図的にヒドい目に合わせてしまうなどのブラックな方向性のギャグが全く登場せず、やたらと子供に優しい普通の英国紳士になってしまっては面白くなるわけがない。特にビーンの意図しない愚行によって大変な目にあってしまった少年に対する、いちいち優しい行動が空回りするなどという、あまりにも偽善的なギャグ展開にはウンザリで笑えもしない。

女性絡みでは辛うじて、それまでフランス語のみで話していた事でビーンとの会話が成立しなかったヒロインが、ビーンがイギリス人と知った途端に流暢な英語を話し出す、なる、英語圏人から見たフランス人を揶揄する展開からは、本来のブラックさの片鱗が感じられもしたが、それはビーン自身が面白い事で面白くなる、作品の本質からは外れているだろう。

同様に、作り手の自己満足自己陶酔的な"映画祭映画"をアイロニカルに戯画化して笑わせる、終盤の展開もまた確かに面白くはあるものの、劇中のスクリーンに映される映画の内容や監督の描写が面白いのであって、ビーンが面白いわけではないのが問題だ。

ずっと自分で撮影していたビデオ映像が伏線となってクライマックスに至る、長編ならではの構成の妙などもあるがしかし、結局のところビーン以外における部分での面白さはいくつもあれど、ビーンが面白い部分がほとんど無いのだ。これでは本末転倒にすぎる。

何より、ビーンが行う行動のいちいちで、ネタ振りらしき事が始まった時点で、そのオチまで簡単に予想出来てしまい案の定その通りにしかならないのでは笑えるわけもない。あまりに捻りが無さ過ぎる。

頑張って面白かったビーンを挙げてみれば、フランス国内にて英語しか知らないビーンが「ウィ(はい)」と「ノン(いいえ)」のみでコミュニケーションを交わしつつ、感謝の言葉だけは何故か「グラーシアス」とスペイン語で話してしまう、といった、今回のストーリーを活かした言語絡みのいくつかくらいで、素人の宴会芸レベルでしかないオペラの口パクを長々と見せられるあたり、寒すぎて悲しくなってしまう程だ。

前作映画と比べればあまり喋らないだけマシながら、ギャグのレベルはむしろ退化しており、箸が転んでもおかしい年頃の幼児とボケ老人でもないと笑う事は難しい有様だ。実際、それなりに観客が入っていた劇場ながら笑い声はほぼ皆無で、ただ一人オツムの幸せそうな人が周囲の迷惑も省みず、ドリフ大爆笑の笑い声インサートのごとき騒音を振り撒いていただけの、非常にお寒い状況に終わっていた。エンドロールの後にも映像はあるが、これまたネタ振りとオチが予想通りなのでサッサと帰って構わない

Mr.ビーンで笑いたいなら、オリジナルTVシリーズの録画を観ている方が余程、時間も金もかからずしかも圧倒的に面白いので、劇場版は無かったものと考えておいて何ら問題ないだろう。TV放送されても無理に観る必要は無い。自己責任で。

蛇足:
邦題の尻に付いている「?!」の記号、通常の表記なら「!?」とするのが慣例なのだが、意図的なのかバカなのかどちらだろう。『敬愛なるベートーヴェン』といった存在しない日本語を捏造して恥ずかしいと思わない、日本の配給会社のレベルを見ても、どうも後者のような気が。


tsubuanco at 14:45│Comments(5)TrackBack(13)clip!映画 

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この記事へのコメント

1. Posted by 黒猫   2008年01月23日 03:34
ボロクソで吹いたwww

ビーンは子供の頃親がビデオ借りてきたモナリザのババアを消したりするやつ見てクソ笑った気がするがあれは映画だったのかな?

今見たらまた感想が違うんだろうなぁと思うな
2. Posted by ノルウェーまだ〜む   2008年01月24日 00:16
つぶあんこさん、こんばんわ〜
かなり手厳しいレビューですが、私もなかなかどうして同感です。
やはりテレビシリーズのあのぶっ飛んだところが、懐かしくなっちゃいますよね。
もともとモンティーパイソンから始まって、イギリス人の笑いは、いまひとつなじめないというのが本音です。
3. Posted by つぶあんこ   2008年01月24日 17:15
面白かった深夜番組がゴールデン進出すると、途端に薄味になってつまらなくなる現象と同じでしょうね。
4. Posted by さゆり   2008年01月25日 04:12
笑った私はおつむが弱いのかな…(;_;)
5. Posted by つぶあんこ   2008年01月25日 17:57
笑える方が幸せに決まってます。

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