2008年01月30日

魁!!男塾 16点(100点満点中)

「これは映画、映画のロケーションじゃ」
公式サイト

宮下あきら原作の同名漫画を、アクション俳優坂口拓の監督・脚本により実写映画化。TVアニメ放送当時の1988年に公開された劇場版に次いでの二度目の映画化となるが、完全オリジナルストーリーだったアニメ映画版とは異なり、原作初期エピソードを中心とした内容となっている。

宮下あきらのデビュー作として人気を博しながら不慮の事態により打切り封印となった『私立極道高校』のセルフリメイク的企画として、ネタをヤクザ学校から右翼学校に変更して始まった原作漫画は、日本男児の生き様を極限までディフォルメして描写し、それをベースとしてのドタバタギャグと、己の誇りや仲間のために笑って命を投げ出す男達による熱く燃える人情と根性の格闘バトル劇との、笑いと燃えの両輪でストーリーを展開させる、全ての宮下作品に共通するスタイルの集大成とも言うべきものであり、何事も気合いで押し通す力技を時にギャグとしてのネタやオチに用いながらも、描かれている燃えシチュエーションと主張そのものは人間の本能に訴えかける真っ当なものであり、作風としては絵柄は全く異なれど島本和彦にも一部共通する、独特のヒーロー像を追求し続けているところに、宮下作品の面白さは存在する。

醒めた眼で見れば有り得ないおかしな奇行でしかない珍妙さや、燃えを強調するあまりにエスカレートしすぎる友情や根性論などを突っ込んで笑いものにする、という楽しみ方も当然ながらにあるが、それはあくまでも表層的な傍流の一観点に過ぎず、その様にツッコミつつも、紙面で行われている熱き男達の戦いや死を恐れぬ勇壮さに憧れ魂を揺さぶられ、お気に入りキャラクターの活躍にワクワクし、死亡や復活に一喜一憂するなど、まず本道として楽しんで且つあらゆる観点での楽しみ方を行えてこそ、作品を語るに値するものであり、偏った一面的な見方しか行えないながらその自覚なしに、「どうみてもありえない行動その他を、異様に濃い絵柄とセリフで押し通してしまう、ちょっとイタ寒い世界観こそが愛されているのだ」などとわかったつもりになっているに至っては、宮下作品で共通して卑下、侮蔑の対称となっている、物事の上っ面しか見えずに刹那的な享楽に明け暮れる、愚かな現代の日本人像そのままでしかなく、あまりに滑稽だ。

何よりもまず、登場人物達のカッコ良さがカッコ良く描けているからこそギャグやツッコミが娯楽として成立するのだとは、言うまでもない基本的大前提であり、これは男塾に限らず、『北斗の拳』など多くの人気バトル漫画に共通する一般常識だ。

実際に、天挑五輪編までは上述の燃えとギャグおよびツッコミのバランスが完璧な形で取れていたからこそ、作品の質はどんどん高くなり人気も持続していたのだが、続く七牙冥界闘編にてこのバランスが崩れ、ツッコミを意識しすぎた作劇と展開に走り出してしまった途端に、面白さも人気も急下降して結局連載打切りとなってしまった事実から見ても、それは明白な真理と断言出来る。

話を映画に戻すと、今回の映画化にあたって坂口拓は、そうした絶妙なバランスを再現したいと志向していた事は少なからず見て取れ、また、原作と違和感のないビジュアルやデザインを可能な限り再現すべく試みているなど、好意的に捉えられる部分もいくつか存在はする。これは坂口が原作のファンだからこその救いだろう。

登場人物達、特に照英が演じる富樫はソックリで、桃や秀麻呂、あるいは松尾や田沢らもコスプレ的ではあるもののビジュアル的な再現性は高い。声は太すぎだが鬼ヒゲ(菅田俊)の日本兵コスチュームを自主規制せずにそのまま採用した挑戦心も頼もしい。

のだが本作、どう考えても予算が無さすぎる事が画面からありありと伝わってくる、作りの安っぽさが全編を支配している事もまた確かで、特に前半の主な舞台となる男塾の校庭にて、人物達の背後に絶えずカラフルに塗装されたスベリ台や雲梯が映り込んでしまっており、明らかに廃校となった小学校を使って撮影しているとバレバレで、CGで消すなどの予算が無いのならせめてアングルで見えない様にするなどの手間をかける時間すらなかったのかなどと、見ていて寂しくなってしまう有様だ。

後半エピソードとなる驚邏大四凶殺においても、大凶殺が大凶殺に減らされている事に関しては後述するとして、セットを組む予算すらないのか原作における奇想天外な闘場の再現はならず、適当な洞窟や適当な平地で戦うのみでは、原作の面白さを再現出来よう筈も無い。唯一再現された断崖宙乱関においても、飛燕の鳥人拳と富樫の根性との対比やそこから生まれる戦いのドラマは再現出来ておらず、最大の見せ場である昇龍風が省略されてしまっては物足りないにも程がある。

ラストバトルのアクションも、伊達の蛇轍槍をCGで表現する予算がない事を始めとして、中途半端で締まりのない画面構成に終始しては、どうなるのか知っている原作ファンでなくともその攻防にハラハラする事も出来ず、プライド的なガチンコバトルに至っては、完全に観客が求めているものと乖離してしまっている。

実際に当てるアクションが売りというが、その事が効果的に画面に現われているならともかく、「どうだ当てているぞ凄いだろう」と言わんばかりのこれ見よがしな映像からは、アクションの燃えやカタルシスは得られるものではない。そもそも実際に当てずとも当てている以上に迫力があり見栄えのする映像を撮るのが、アクション映像に求められる本来の技術やセンスであるのだから、作り手の自己満足に過ぎない。だったら刀や槍も本物を使って実際に斬り結んでみろと言いたくなる。

インパクトの強いキャラクターであるJと雷電を抹消する一方で、秀麻呂の存在をクローズアップして、ヘタレから大塾旗を掲揚するに至るまでの、男の成長ドラマを縦糸とする狙いは決して悪くはないが、その描写、展開がブツ切りの中途半端でしかなく、笑う事も感情移入して燃える事も出来ないため、懲罰房などの無駄に冗長で流れを停滞させるエピソードを入れるくらいなら、Jと雷電のバトルを見せてくれた方が余程マシだと思わされる結果となっている。

平田薫演じる女子高生と富樫のエピソードなども、女を出さないと企画が通らないなどの事情は理解出来つつも、唐突に挿まれてオチきらないままに適当に終わるのでは、これまた流れを止める邪魔となっているだけであり、上手く話に絡められなかったのは脚本の甘さによるものだ。

原作の真意を理解しているセンスある作り手が金と手間暇をかけて忠実に再現するだけで、とんでもなく面白い娯楽作が出来上がる筈が、センスと金と技術と時間があまりにも不足しすぎた製作事情により、月曜ドラマランド以下の芸能人かくし芸大会レベルの出来に終わってしまったのは、あまりにコンテンツの無駄遣いだ。

そして、本作が作られた事により、もっとまともな環境で男塾が映像化される希望が少なくとも10年は無くなった事が、何よりも悔やまれる事態だろう。

バカバカしさを斜めから嘲笑して楽しむ、表層的なものの見方で満足出来る類いの人種であれば、本作の出来の悪さを笑いものにする、志の低い楽しみは得られるだろうが、本当に原作が好きな読者なら、自らを真空殲風衝で消し去ってしまいたい程に残念な気持ちでいっぱいになってしまう事は間違いない。

原作ファンなら一応は要チェックだろうが、何一つ期待せず「悪い予感がしてきたのう」と臨んでも尚ガッカリに備えるだけの気合いと根性が求められる本作、男試しとでも思うしかないか。



tsubuanco at 17:50│Comments(12)TrackBack(7)clip!映画 

トラックバックURL

この記事へのトラックバック

1. 【映画】魁!!男塾  [ 新!やさぐれ日記 ]   2008年01月30日 20:09
■動機 これを機にプチ同窓会でも開こうかと ■感想 富樫に笑った。声も姿もイメージ通り過ぎw ■満足度 ★★★★☆☆☆ そこそこ ■あらすじ 没落したヤクザの組長の息子である秀麻呂(尾上寛之)は、男気を鍛えるために男塾に無理やり入塾させられてしまう。そこ...
2. 【2008-20】魁!!男塾 BE A MAN! SAMURAI SCHOOL  [ ダディャーナザン!ナズェミデルンディス!! ]   2008年02月03日 13:39
2 人気ブログランキングの順位は? 男塾の教科書に 死という文字はあっても 敗北という文字はない 男に成れ。 ひとつ!!男は質素を旨とすべし! ひとつ!!男は忠節を尽くすべし! ひとつ!!男は武勇を尊ぶべし!
3. 真・映画日記『魁!!男塾』  [            ]   2008年02月16日 18:48
JUGEMテーマ:映画 1月28日(月)◆699日目◆ 終業後、新宿へ。 歌舞伎町にある「シネマとうきゅう」で『魁!!男塾』を見る。 客が意外と少ない。 30人もいなかったのでは。 80年代半ばに「週刊少年ジャンプ」にて一世風靡した漫画「魁!男塾」の実写映画版。 ...
4. 実写版「魁!!男塾」試写会観てきました(´Д`)  [ りんたろうの☆きときと日記☆ ]   2008年02月17日 16:23
☆「魁!!男塾」 監督:坂口拓 出演:坂口拓、照英、尾上寛之、山田親太朗、田中哲司、与座嘉秋、榊英雄、中島知子、菅田俊、麿赤兒、平田薫、矢沢心、つじあやの ナレーション:千葉繁 日本男子の魂と武士道精神を継承し、真の男を育てるための私塾「男塾」。 今年もまた、...
5. 民明書房って何処にあるんですか?  [ 炸熱??歌キチ、愛をうたう?? ]   2008年02月25日 04:10
原作をリアルタイムで読んでいた世代だ。 タイトルどおり男臭い作品で、女性のキャラが全くと言っていいほど登場しない。 油風呂、驚邏大四凶殺、喝魂旗 面白かったなあ?? 燃えたなあ?? 嵌ったなあ?? あの熱い戦いの数々を実写化するという これは楽しみだ!
6. 棚上げレビュー  [ 今宵、映画検索。 ]   2008年03月21日 13:33
世の中に映画ブログというものがいっぱいありまして、私のブログもそう呼ばれてるようなので、どれどれよそのブログはどんなもんじゃろうかと色々覗いてみました。が、はっきり言ってたいていは駄ブログですね。私のブログもちょっと変わったテーマで映画を集めて紹介してる....
7. [映画]魁!!男塾  [ お父さん、すいませんしてるかねえ ]   2008年05月04日 20:41
キン肉マン、キャプテン翼、北斗の拳、ウイングマン、流れ星銀牙、ドラゴンボール、聖闘士星矢、シティーハンター、ついでにとんちんかん…。 ぼくがジャンプを読んでいたころは、600万部を超える超人気漫画雑誌のジャンプでした。 その一翼を担うマンガの実写化ですが、

この記事へのコメント

1. Posted by 関東の貴   2008年01月29日 20:17
つぶあんこさん、本当にいろんな原作を知ってますね‥‥。。ひひょーのM氏のレビューは最近やけにあっさりした印象を受けるので、なんだか拍子抜けです。
2. Posted by      2008年01月30日 11:18
前田さんのこと、余程きらいなんですね。たまに叩いてますが
3. Posted by みかん。   2008年01月30日 15:10
このサイトの映画感想は黎明期から拝見させて頂いてますが
今回の感想は本当にフェアで、
単に原作に通暁しているというのみならず
原作を一方的な価値観に偏る事なく総合的に捉え、
構造的に理解し、
頭だけではなく魂で共感している者でなければ
書くことのできないものだと思います。

今までさまざまな男塾感想を読んできましたが、
当感想は百本の薔薇を凝集して作り出された
1滴の精油のような、百人分の感想にも勝る
内容の奥深さと多様さ、的確さがあると思います。

正直、原作レイプというレベルですらない
ハリウッド版ドラゴンボールの感想が
今から楽しみでなりません。

(スパイダーマン3の例があるので、
このサイトでは逆に高得点をつけそうですが…)
4. Posted by つぶあんこ   2008年01月30日 15:55
ボケに突っ込んであげるのは礼儀ですからねえ。そもそもツッコミ目的以外で「どうみてもありえない感想や解釈を、稚拙な文章で押し通した気になっている、かなりイタ寒い自称批評こそが愛されている」あのサイトを見てる人っているんですかね(笑

実写ドラゴンボールは意図的に情報をシャットしてますので、どんなものになるかいろんな意味で楽しみです。
5. Posted by 天の道を往き総てを司る男   2008年01月30日 17:38
みかん。さんがスパイダーマン3に
触れたのでお聞きしたいのですが
つぶあんこさんはスパイダーマン3を
神作品だと評価されていますが
スパイダーマン2はどのように
評価されていますか?

私はスパイダーマン2のほうが
好きなんですけど
6. Posted by 力薬   2008年01月30日 23:40
坂口拓主演ということでは地獄甲子園を思い起こします。本編はともかく坂口氏は印象に残ったので本作も楽しみにしてましたが、ビデオ待ちお許し下さい。
出来の悪さを笑い物にといえば、私はMUSASHIやガンドレスをそうした見方で楽しんでしまい申し訳ないです。

M氏の批評は、ライト+不慣れな物言いの私が言ったり書きそうな『感想』を『批評』として書くものかと呆れを通り越しむしろ恐ろしくなった記憶があります。
7. Posted by グンジョウ   2008年02月01日 03:21
ここを知ってから映画を観る目が変わり以前より鑑賞時の面白味が増しました、深く感謝しています
男塾に関しては全く同感です
8. Posted by つぶあんこ   2008年02月01日 17:42
スパ3が神なら2は界王神ですかね。

ガンドレスは出来が悪い以前に出来てませんでしたから(笑

ま、言いっ放しで無責任なブログですが。
10. Posted by 咲太郎   2008年02月25日 04:00
男試しに行って来ました。
相当酷い出来を予測して行ったので
ガックリと崩れ落ちることはなかったです。

に、しても第三凶殺だけは納得行きませんでしたが・・・・・・。

昭英ではなく照英では?
11. Posted by つぶあんこ   2008年02月25日 11:35
ご指摘ありがとうございます。修正しました。
12. Posted by ケータロス   2008年02月26日 03:16
お初です。
原作大好きなマニア野郎でしたので、鑑賞してきました。
序盤は面白かった!!
アニメやゲームで鬼ヒゲや卍丸の声を務めた千葉繁のナレーションが、マニア心を揺さぶられましたww

しかし後半は…_| ̄|○
せめてカンフーハッスル以上にぶっ飛んで欲しかった。
リアルファイトを描くなら、ホーリーランドや軍鶏などの方が素材的にも合うでしょうに…。ドラマ版ホーリーランドのバトルシーンは、非常良かったですよ。

序盤は楽しめましたが、後半に行くにつれてテンションが下がってしまい、ソレがとてつもなく残念ですわ。
ただ、原作レイプまで行ってないのが、唯一の救いですな(´Д` )
13. Posted by つぶあんこ   2008年02月28日 11:06
ホーリーランド、ヤンキーバトルと異種格闘の融合を見事に体現した、傑作ドラマですよね。

この記事にコメントする

名前:
URL:
  情報を記憶: 評価: 顔   
 
 
 
Comments