2008年02月03日

KIDS 50点(100点満点中)

自分で自分を持ち上げられないのと同じですよ
公式サイト

乙一原作の短編小説『傷 -KIZ/KIDS-』を原作に、同じく乙一作品『きみにしか聞こえない』も手がけた荻島達也監督により映画化。

タイトルのダブルミーニングである「傷」が省略された今回の映画版だが、小学生の話だった原作から、玉木宏と小池徹平を主演とする事により年齢が大幅に引き上げられ、とても"子供達の話"ではなくなったにも拘らず、『KIDS』の方が残されているがまず引っかかる。

親子関係をもメインテーマのひとつとしているため、日本語での「子供」である事に間違いはないにせよ、やはり重要なのは身体および心の傷、あるいいは二人のキズナの方だろうに、どうにも名づけセンスに違和感を抱かされるものだ。

そして先述の通り主人公の年齢が全く変わっている事から起因し、物語自体の構造や人物設定、ストーリーの方向性までもが、原作とはほぼ別物に大きく変えられており、原作とは切り離して鑑賞、評価するのが正しい臨み方だろう。

さて本作、導入部や機点に挿入される玉木宏のモノローグ、ナレーションからも、基本的には彼・タケオの視点を中心とし、彼の主観を通じてのアサト(小池徹平)やシホ(栗山千秋)とのドラマが描かれていくのは、アサトとシホが秘めている謎が少しずつ明らかになっていく全体的な構図としては最適ではあるものの、途中からアサトやシホの主観に視点を振る局面が増えてくる事で、狙いが散漫となって登場人物と観客の認識している情報に差異が生じてきてしまうのは残念なところ。

何よりも、三人のメイン人物が、単なる店員と客の関係から親しい友人へと変化していく過程があまりに乱暴、唐突なのは、人間関係によって癒されあるいは深められてていく心の傷を描くための物語としては致命的だ。

いきなりシホが二人の怪我の治療をしている場面に飛ぶなど、まるで当初から仲良しだったかと誤解を与えてしまい、その前段での店内の描写と明らかに齟齬がある。その間こそを丁寧に描かない事にはお話が始まらないのだ。

公園の補修を通じて親交を深めると共に、観客に対しても人間性をわかりやすく見せる様な場面は用意してあるのだから、何故肝心な端緒を省略したのか甚だ疑問だ。

各々が抱える過去の真相が、一人の保護司(泉谷しげる)の口からペラペラと語られるのみというのも、劇中で「アンタに守秘義務は無いのか」「そんなもんねーよ」とギャグで避けるにはあまりに説明的すぎ、単なる便利な説明キャラでしかないのは安易すぎる。

アサトの本当の真相が明らかとなる面会室シーンでは、互いに向き合ったまま動かない状態での言葉のやり取りによって、少しずつ明かされていく救いの無い内容から空気の変化とアサトの心情変化を表現する事が求められるながら、母親(斉藤由貴)によるオーバーアクト気味のサイコ演技の恐ろしさを、アサトを演じる小池が受け止め切れていたか、あるいは演出や撮影でフォロー出来ていたかが問題となるが、対面している事、仕切りの透明板に互いの顔が映りこむ事などを、演出や画面構成に活かしていたとは思えない、単なる切り替えしの繰り返しに終始しているため、本来生じる筈の、希望から絶望への大きな転落感を表現し切れていないのではないか。

橋上での大事故シーンを横移動ショットで地獄絵図の絵巻物のごとくワンカットで見せる映像において、被害者役エキストラの演技の大仰さやシチュエーションの不自然さが、スローになる事で更に強調されてしまう弊害を省みずにそのまま使っているなど、わかりやすさを目指すあまりか却って狙いが通じにくくなっている部分が多く感じられる。

他人の傷や病気を自分に移動出来る心優しきエスパー、という設定は極めてありがちながら、吹き溜まりの街で心に傷を抱える逃避者達が寄り添う人間模様や、肉体的な傷の癒しと心の傷の癒しとの相似と乖離によるドラマ展開、親子間の心情や感情の皮肉と、それらから生まれていく一番大切なもの、と、エモーションを中心としたストーリー自体は面白く、また、タイプの異なるイケメン二人のビジュアルをキャラクターに投影させた人物設定と演技、および原作よりも高感度が大幅アップしているシホを演じた栗山千秋の、特徴的な口をマスクで隠す事で顕著となった眼力の美しさなど好キャスティングと、企画そのものは決して悪くないどころかむしろ魅力的なだけに、脚本と演出の詰めの甘さが勿体ない。

また、重要ファクターである傷の表現が、特殊メイクとCGを駆使してほとんど違和感のない様に作り込まれている、特撮技術の確かさも、ありえないお話にリアリティを与える役割を果たしているなど、評価出来る部分は決して少なくは無い。

メイン3人のファンならばビジュアル的な魅力は堪能出来、傷を見せる名目でやたらと服を脱ぐ男二人を鑑賞する分には満足だろうが、全体的な完成度にはあまり期待せずに臨むべきか。別物と割り切れない原作ファンには全くオススメしない。


蛇足:
かつて『スケバン刑事』にて、受刑者である母親のために戦っていた斉藤由貴が、本作では"受刑者である母親"を演じているのは、意図的なキャスティングだろうか。そう言えば一方通行な親子愛の設定も似通っている。





tsubuanco at 16:25│Comments(5)TrackBack(12)clip!映画 

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1. 『KIDS』  [ 唐揚げ大好き! ]   2008年02月03日 18:45
  『KIDS』   純粋だから、分かち合える傷がある。   ■ある日、街にやってきたばかりの内気な青年アサトは、とあるダイナーでタケオと出会う。工場で働くタケオは傷害の前科を持ち、夢も希望もないすさんだ生活を送っていた。対照的な2人は、チンピラに絡ま
2. 【KIDS】  [ 日々のつぶやき ]   2008年02月06日 11:46
監督:荻島達也 出演:小池徹平、玉木宏、栗山千明、泉谷しげる、斉藤由貴 乙一の原作「傷」 はかなり以前に読みました。 ものすごく短い短編で、これを二時間の映画化・・原作はとても好きで泣きましたけど、あまりにも切なくて読み返したことないです。 原作とは
3.  K I D S  [ ★Shaberiba ★ ]   2008年02月06日 17:54
傷の深さも痛みも。2人で割れば はんぶんこ・・。
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☆サービスポイントが180ポイントを超えたので、久し振りに安いレイトショーではなくて、公開日の第一回目上映のMOVIX昭島に『KIDS』を観に行きました。 いつもの娘っ子と行ったのですが、二人で観ても、まだもう一回タダで観れるんだよね〜^^ 明日にでも、...
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この記事へのコメント

1. Posted by BAKABON   2008年02月09日 14:49
脱ぎ・・・はぁはぁ
じゃあ観ようかな(笑)

でもまんまと引っかかるのは悔しいんだよな
2. Posted by つぶあんこ   2008年02月11日 17:56
乳首見えまくりですよ。
3. Posted by BAKABON   2008年02月12日 03:55
最高ですね(笑)
4. Posted by kimion20002000   2008年12月24日 19:42
だいぶん前からなんだけど、齋藤由貴って、壊れちゃってる役柄専門みたくなってきたなあ、と思います。
5. Posted by つぶあんこ   2009年01月06日 15:57
リアルで壊れてる人っぽいですしねえ。

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