2008年02月15日

ALLDAYS 二丁目の朝日 1点(100点満点中)

やる時はやらないか
公式サイト

昭和ノスタルジー映画『ALWAYS 三丁目の夕日』の大ヒットに便乗し、赤線廃止に前後する年代の新宿二丁目を舞台とした、性風俗と同性愛を扱った人情ドラマ。

リアルな再現セットやCG合成によって当時を再現した大作『三丁目』に及ぶどころか、通常の単館系映画と比較してもあからさまに予算が無い事が顕著な本作、それを逆に活かしてチープさを味とする様な工夫があればいいのだが、残念ながらそうはいかなかった模様。

当時の風景の再現として、実際の当時の記録写真をそのまま場面転換の合間合間に挿入しているのは、時代性や実録性を強調する狙いはまだ伝わるものの、ストーリー展開にシンクロあるいはテーマやキャラクター性を暗喩するなどの写真選択がなされていればよかったが、特に意味もなく適当に羅列しているだけでは、何度も何度も写真ばかりを見せられているだけで飽きが来て退屈してしまうのは必然だろう。

当時の趣が残っている実景をメインの撮影場所とする狙いは、セットを組む予算の削減とリアルな空気を捉える事には成功しているものの、廃墟じみた主人公宅前など不自然な違和感を禁じ得ない光景や、クライマックスの舞台となる倉庫の様に悪い意味でのチープさが前面に出てしまうなど、全てが成功とは感じられない。

また、性癖が露見してしまった八百屋に貼られる中傷の貼り紙や、同じく赤線地帯におけるそれを殊更に見せようとする映像など、そんなものを剥がさないままあたかも何も貼られていないかの体で営業を続ける様からは、劇中で起こっている出来事が完全に恣意的な作り物であるとしか伝わらず、良くも悪くも何の感情も起こらずにシラケてしまうだけだ。

性風俗を扱った作品ながらあまりにも性描写がおざなりに尽き、特に中盤に見せられるレイプシーンなど、それがレイプの描写と説明されても首を傾げてしまう、要領を得ない中途半端な曖昧表現に終始しており、ストーリーの転機として重要な筈がそうであると観客に全く伝わっていない。狙いとしては意図的な抽象表現だったのだろうが、表現力が伴っていないため完全に失敗している。作り手のセンスのなさを如実に象徴する場面と言えよう。

主人公(三浦涼介)とヒロイン(谷桃子)をはじめとする人物達の動向、心情変化など全て、決められたお話に沿うだけの通り一遍なものに終始し、先述のレイプシーンの様な事象だけでなく心象表現も上辺のみで必然がなく、あれよあれよと勝手に話が進んで観客は置いてけぼりどころか付いて行く気も起こらない有様だ。

その"決められたお話"にしても、主人公がダンスが上手い事を序盤から幾度も見せておき、八百屋に「好きな人と踊れたらいいね」と言わせておいて、結局それらが伏線として展開に結びつく事がないなど有り得ない。何より偏見と戦う事と自分の性癖や職業に誇りを持つ事など、主張やテーマらしきものが全く周到されておらず、これではどうして二丁目が同性愛の街になったのかが全然わからないままだ。

そもそも性風俗や同性愛という題材に対する考証も解釈も感じられず、ただタイトルありきで無理から良く知らない題材を適当にコメディ風味で誤摩化そうとしているだけなのがバレバレであり、それでも作り手にコメディやパロディのセンスがあれば、表層的であれ深く考えずに笑って楽しむ事が出来るだろうし、例えば河崎実の様にチープさや脈絡のなさを逆に面白さや作家性に転化出来るほどの異才があれば別だが、残念ながら本作の作り手は悲しい程に凡人でしかなく、それに及ぶ筈もない。

新東宝映画的なオープニング映像と音楽によって最初に抱かされた淡い期待が、ことごとく打ち砕かれていき、観終わった後には後悔と自責しか残らない、この世に存在する価値があまりにも希薄な駄作。三浦涼介や谷桃子のファンであっても、本作を楽しむ事は困難だろう。全く期待せずにレンタル半額DAY利用で鑑賞してもまだ後悔する事請け合いだ。自己責任で。


蛇足:
劇場鑑賞時、予告編が終了していざ本編開始、の段でいきなり機械の故障か上映がストップし場内が明るくなって、「本日はありがとうございました云々」と自動アナウンスが流れ始めた事が一番の笑いどころだったというのがあまりにも虚しすぎる。いっその事そのまま帰っておけばよかったかも。



tsubuanco at 10:11│Comments(11)TrackBack(2)clip!映画 

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この記事へのコメント

1. Posted by 関東の貴   2008年02月14日 12:51
そのような映画がある事自体、こちらで初めて知りました。これまで「便乗モノで成功した作品」というモノは存在するのでしょうか?

私の劇場トラブル体験は、「トレジャープラネット」の回に劇場側の手違いで、同時期上映していた「デッドコースター」が始まってしまい、序盤の「おっぱい丸出しシーン」に差し掛かる直前に係員に止めてもらいました。子供たくさん来てるのに何見せる気だ(笑)
2. Posted by つぶあんこ   2008年02月14日 17:42
自分も別の映画の上映時間を調べるために劇場のサイトを見るまで知りませんでした(笑

知らないままの方がよかったかもですが。
3. Posted by よゆぽん   2008年02月14日 20:52
いつもどうもです。
いちおだいぶ前からチェックしてものです。
時間の関係でまだ観に行けてません。
゛上映トラブル゛を期待して来週観ます(笑)
4. Posted by 力薬   2008年02月14日 23:48
類似パッケージ(『ソードオブザファンタジー』、『トランスモーファー』、『パイパニック』あたり)コーナーにポツンと置かれてそうなタイトルですね…私も今始めて知りました。

このてのものはパッケージやチラシを見てニヤリとするに留めるのが最も楽しめるやり方でないかと思ってます。(但し『ナポレオン・ダイナマイト』などその他一部は除きます)
5. Posted by あいう   2008年02月15日 14:17
いつも拝見させてもらってます。
つぶあんこさんが色んな映画を見て下さって助かってます。
明らかな地雷映画なら最初からスルーしますが、
こういうのはたまに当たりがあるので。
つぶあんこさんが見る映画を選ぶ基準ってなんですか?
地雷臭がしてても踏んでみたりしますか?
6. Posted by つぶあんこ   2008年02月16日 11:53
こんなマイナー映画の記事に限ってコメントが沢山(笑

最近の便乗モノとしては『いかレスラー』や『日本以外全部沈没』あたりは成功していると思います、って両方河崎実ですな。

今後とも人柱ブログとしてご活用ください。

選択基準は行動範囲で上映してるかどうかと、行ける時間に上映してるかどうかです。
よほど興味のある作品なら多少無理してでも行きますが。

ちなみに本作の場合、近くまで来たのでどうせだからと、別の用事のついでに観たのが実情です。
7. Posted by くまさん   2008年02月16日 20:33
レンタル半額DAYワロタw
8. Posted by 羽無しティンカーベル   2008年02月18日 00:41
細かいですけど「おざなり」か「なおざり」か
どっちの意味で使ったのかわかりませんが、
おなざりになってますよ。
それともわざとですか?
9. Posted by つぶあんこ   2008年02月18日 19:28
ご指摘ありがとうございます。修正しました。

性描写だけにオナざりってですか。自分で確認すると自分の間違いは見落とすんですよね。文章に限らず。
10. Posted by 関東の貴   2008年02月18日 19:53
そのユーモアはどこから‥‥。映画のパンフで一番酷かったのは「フォーガットン」ですが。
http://pya.cc/pyaimg/pimg.php?imgid=15173
11. Posted by つぶあんこ   2008年02月21日 17:42
『敬愛なるベートーヴェン』とか、タイトル自体の日本語がおかしいよりはマシですがね。

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