2008年02月21日

エリザベス:ゴールデン・エイジ 47点(100点満点中)

もうひとりは美ぼうの23歳 メアリー・スチュアート!
公式サイト

大英帝国の権勢を築いた女王・エリザベス1世の若き日を描いた、1998年の英映画『エリザベス』から約9年ぶりに、スタッフ・キャストをほぼそのまま引き継いだ続編として、前作から30年後の1580年代後半を舞台に、50代後半のエリザベス女王の人間像に迫る、コスチューム・プレイ映画。

前作の終盤で処刑されたメアリー・オブ・ギーズの娘であるメアリー・スチュワートとの、正統な王位継承権を巡る陰謀と、そこから繋がるスペイン無敵艦隊とのアルマダ海戦を、史実としてのストーリーベースとし、その時局における女王個人のドラマとして、廷臣ウォルター・ローリーと女官ベスとの三角関係めいた恋愛ドラマが平行して展開される本作、為政者あるいは支配者としての顔と、平凡な愛を求める一女性としての顔の両側面を併せ持つ人物像を描こうとしている製作意図は前作と同様ながら、それが比較的バランスよく描かれていた前作とは異なり、残念ながらどちらの側も半端に食い散らかした印象に終わってしまっている。

まず恋愛を主軸とするドラマ面において、女王とベスの擬似レズビアン的でもある蜜月関係が、序盤から丹念に描かれている事で、ローリーの登場によってその関係が少しずつ壊れていく悲劇性が高まる狙いは果たされており、両者の衣装の色合いを近似させるなど、同じ名前で且つ寵愛されていた史実を、年齢差のビジュアルをも用いて効果的に提示しているのは良しとしても、一方のローリーの描写が浅く、少なくとも映画を見ている限りではワイルドなプレイボーイ海賊としか描かれておらず、女王やベスが本気で夢中になるに至る流れが『タイタニック』並に陳腐にすぎる。逆にローリーが女王に知られる危険を冒してまでベスに近づいた必然性も不明瞭だ。

また、ローリーとベスの関係が判明するのは史実ではアルマダ海戦後だが、本作では海戦前に女王に知られてしまい三者の関係が壊れながらも、いざ海戦となればローリーは普通に軍の一員として活躍しており、チグハグで流れが一致しない印象となっているのは、ドラマを盛り上げる順番を無理から変えて失敗した一例と言える。女王自身が私掠船に掠奪許可証を与えてスペイン船を襲わせていた史実をなかった事にしている無理矢理さも違和感の元だ。

歴史ドラマの面においても、前半から中盤にかけてのメインとなるメアリー・スチュワートとの陰謀劇は、まず女王とメアリーとの良好な面での関係が全く描かれていないため、女王が処刑を躊躇する場面のクドすぎる演出と尺に必然性が感じられず、メアリー自身の顛末も自業自得としか思えず悲劇性が薄く、音楽で盛り上げようとしている処刑シーンも、狙い通りの効果はあげられていない。

この処刑の裏にスペインの意図的な誘導があった事は史実だが、本作において女王がその事を知って処刑に反対していたわけでもなく、あくまでも結果論としてそうだったのでは、余計にメアリーとの心的関係性の曖昧さも、女王の為政者としての能力も、よく描かれているとは言えないだろう。

後半のクライマックスとなるアルマダ海戦においても、女王が甲冑をまとい馬上で兵士を鼓舞するシチュエーションそのものは燃え要素が強く、演じるケイト・ブランシェットの熱演も感じられるが、彼女が乗っている馬が演説中に常にウロウロと落ち着きがなく動きっぱなしなため、貫禄や勇壮さどころかむしろ、自分の乗る馬すら制御出来ないダメ女王と捉えられてもおかしくはない、何とも締まりのない状況となっているのは困りものだ。

画面全部を覆う旗ごしにシルエットで人物の会話を見せ、その人物の移動に合わせてカメラを移動させて旗の後ろに一気に視界を広げて建造中の艦隊を見せるカットにて、除幕のイメージでワンカット内における視覚の急激な変化を印象づける映像は、除幕後に見せられる光景のスケール感を何倍にも増幅させる手法として秀逸であり、再び旗で画面を覆い、その旗にキリストが描かれている事で、カトリック原理主義者の偽善性を強調するなど、単なる視覚的な効果だけでなく観客の印象や感情をも操作し、スペインを本作における悪役として位置づける映像構成は大いに評価出来、その後イギリス領海に迫る無敵艦隊の迫力は期待を煽るものだ。

のだが、実際の戦闘場面は予算が無いのかあまりに中途半端で尺も短く、オマケに赤壁の戦いのごとく火をつけた自船を敵艦に突撃させたら何故か全艦隊が炎上といった、連環しているわけでも無いのにそんなバカなと誰でも突っ込みたくなる漫画的超展開には唖然である。映像的にも超寄りと超ロングばかりで中庸が無く、状況描写としての説得力に欠ける。

スペインのイザベル王女の存在が、当初より意味ありげにクローズアップされておきながら結局彼女が何かをする事は無く、思わせぶりのみに終わっているなどは、本作の中途半端さ、散漫さを象徴する事項と言えるだろうか。

歴史劇にも女王の人間像追求にも拠りきれずに終わってしまった本作、先述の無敵艦隊建造場面など、大スクリーンで見てこそ映える映像はいくらかあるにせよ、構成的な面では不満を残さざるを得ない。予告で感じられる勇ましさは期待せずに臨むべきか。



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23. 「エリザベス:ゴールデン・エイジ」  [ 心の栄養♪映画と英語のジョーク ]   2008年09月08日 08:57
1585年、女王としてイングランドを治めるエリザベス1世(ケイト・ブランシェット)。揺るぎない 信念で王の威厳を保っていたが、依然国内外でカトリックを信奉するものたちの謀略が渦巻いて いた。中でも、欧州全土をカトリックにする誓いを立てイングランドをも手中に収め...
24. 『エリザベス:ゴールデン・エイジ』を観たぞ〜!  [ おきらく楽天 映画生活 ]   2009年03月08日 22:22
『エリザベス:ゴールデン・エイジ』を観ました『エリザベス』のシェカール・カプール監督が、再びケイト・ブランシェットを主演に迎え、エリザベス女王の“黄金時代”に焦点当てた歴史大作です>>『エリザベス:ゴールデン・エイジ』関連原題: ELIZABETH:THEGOLDENAGEジ...

この記事へのコメント

1. Posted by 凛   2008年02月19日 16:44
タルカスとブラフォードはー
3. Posted by つぶあんこ   2008年02月21日 17:48
名前すら出ません。

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