2008年02月28日

全然大丈夫 2点(100点満点中)

全然+肯定は誤用ではない
公式サイト

劇団大人計画とのコラボレーション等で知る人ぞ知る映像作家・藤田容介による、初の劇場用長編映画であり、若手個性派俳優として近年認知されつつある荒川良々の初主演映画でもある。

三木聡や萩上直子、あるいは当の大人計画の松尾スズキなど、ユルい脱力や癒しの空気を全編通して醸し、各所に小ネタを散りばめ、個性的な俳優達のキャラを活かしたやりとりで魅せる、そうした類いの映画が近年やたらと多産されており、先に挙げたクリエイター達によるそれは、思想的な事はさておきネタづくりや演出、映像のセンスが多分に見て取れるもので、魅力的な出演者の魅力を引き出し、観客を飽きさせない娯楽性が充分に織り込まれ、作家性を際立たせている。

上辺を見れば、そうした諸作家による諸作品と似た傾向にある本作だが、作り手のセンスが大きく及ばないためか、魅力的な出演者の魅力を大して活かせず、観客を飽き飽きさせる自己満足作品に終わっている。

この種の作品は何より、ユルい空気から感じられる自然体をベースとし、脱力やシュールなネタによってクスリと笑わせる小ネタやキャラクター描写との、ギャップと融合のバランスが何より大切であり、それを管理出来るかどうかも作り手のセンスにかかっている。

本作の場合、ウクレレ演奏によるスローライフ(笑)調BGMに代表される様に、ユルさ、癒しの空気を全編に漂わせようとしている事は明白であり、無理をせず自分らしく生きる尊さを、ストーリー展開から伝えようとしている事も同様。だが、木村佳乃演じるヒロインの、いっぱいいっぱいな状態を表現する際の、あまりに不自然で恣意的な動作演出や、オバケ屋敷ギミックによる驚かせなど、その"自然体"が上辺だけの作為に他ならないと露呈させてしまう、あからさまに押し付けがましいクドい演出や作劇が目立ち、バランスを完全に破綻させている。

テレビ画面内に登場するリポーターの髪型など、笑わせようと必死な事が瞭然な、痛々しく寒々しい滑りまくったギャグの羅列も致命的だ。総じて本作からは、人の感情を動かそうとの思いではなく、作っている自分達ばかりが楽しんでいるだけの、レベルの低いマスターベーション臭ばかりが漂って来、そんな底の浅さに同調出来るレベルの人間にしか笑う事は出来ないだろう。

ぬぼーっとしたビジュアルと朴訥な台詞回しが魅力の荒川良々を主演に起用した狙いは面白いが、彼に感情的な行動をさせたり台詞を発せさせたりしては、単に感情表現演技が苦手な大根役者の棒読みとしか映らず、本来の魅力を引き出すどころか持ち味を損ねているだけで可哀相すぎる。

大きな事件が起こらない、平凡な日常の中の発見、なるありがちな方向性も間違ってはいないが、その平凡さを実は平凡でないと表現しなければ、本当に平凡で退屈なだけに終わってしまう。本作はまさにそれに尽き、先述のウクレレBGMの単調さ(似た様な曲ばかり)が、その退屈を更に押し進めており、狙いは完全に逆効果だ。

何より、主人公自身の口から早々に、「憩うの。憩いまくりたいの」などとテーマを言わせてしまっては台無しだ。この時点で観る意味すら無くなったと言って過言ではなく、事実その通りなのだからどうしようもない。

主人公とその友人(岡田義徳)とのやりとりにおいて、「人は中身だ」と言っている主人公が実は、女性の外見イメージから中身を勝手に決めつけていると描き、それこそが人を外見で判断しているのでは、と、無自覚な欺瞞を提示する場面を前段としたにも拘らず、顔に大きなアザがある男(ココリコ田中)の人物描写とヒロインの関係性において、その顔のアザが特段の意味を持たないのであれば、それはヒロインが"人を見た目で判断しない人"である表現と意図しながら、その実作り手こそが一番人を見た目で判断しているではないかと気づかされるに至り、作為、欺瞞、語り口の下手さが顕著となっているのは、大いなる皮肉だ。

少しだけ登場する鳥居みゆきのキャラクターや、エレベーターからゾンビが登場するドッキリ映像など、ところどころに笑える箇所は無くは無いが、そうした面白どころはクロースアップせずスルーし、ダラダラと退屈なギャグばかりを延々繰り返されては、楽しめよう筈もない。

チラシやポスターなどで気になる存在となっている、顔が荒川良々で首から下は怪物のフィギュアなどの造形物は総じて出来が異様に良く、商品化されれば買いたいくらいだが、それがストーリーに活かされる事はなく、小ネタとしても、半魚人フィギュアの口から粘液がドロドロと滴り落ちるギミックが、「産ませてよ!」の剽窃じみているなど、やはりセンスのない使い様でガッカリだ。

脱力癒しムービーのムーブメントに安易に乗っかっただけの、センスも才能も感じられない、俳優の魅力を使い潰した、あまりに悲惨な凡作でしかない。何の説明もなく根岸季衣が途中から消える中途半端さも気持ち悪い。

出演者のファンとしても(鳥居みゆきファン以外)ガッカリするだけなので、特段に鑑賞の必要はない。



tsubuanco at 16:49│Comments(0)TrackBack(2)clip!映画 

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1. 全然大丈夫 (2008)  [ 白ブタさん ]   2008年02月29日 01:38
あの大仏さんに似た(?)、荒川良々主演の『全然大丈夫』を見てきました{%新芽webry%}
2. 【2008-49】全然大丈夫  [ ダディャーナザン!ナズェミデルンディス!! ]   2008年03月04日 23:22
3 人気ブログランキングの順位は? 憩いまくりたい人々に贈る、 恋のユル騒ぎムービー 勝たないでシアワセになる方法、教えます

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