2008年03月08日

風の外側 40点(100点満点中)

少しは外に出て世間の風に当たれば?
監督公式

奥田瑛二監督作の第四弾。前作『長い散歩』では、本人、妻(安藤和津)、娘(安藤サクラ)と一家総出で脚本製作を行ったが、今回はそのメンバーが出演者として総お目見えしている。

監督の奥田瑛二、前作でも幼女を全裸に剥き、その姿をストレート映し出すといった具合に、年齢を問わず女性の裸体にこだわりを見せる姿勢が、映画だけでなく写真や絵画などでも通して提示され続けてきた。

そして今回も、自身の娘が女優デビューにして主演し、更に劇中で裸体を披露するという、リアルエスパー魔美のごとき父娘関係が話題性となっている。の筈が、服を脱いで全裸になるカットでは、画面手前にわざとらしく遮蔽物を配置して見えなくし、次のカットでは背面のみでオシマイと、自分の娘だからと"手加減"している事が瞭然で呆れてしまう。

もっとも、そのシチュエーションが置かれているクライマックスに至る以前に既に、母親安藤和津の劣化コピーにしか見えない彼女を、美少女ヒロイン役で起用している時点で、親バカ極まりないのだが。

合唱部の活動としての歌唱シーンが重要な見せ場のひとつとなる本作において、歌っている時の顔つきが魚にしか見えないのは致命的だ。夢に向かうヒロインが立っている舞台上から、彼女の顔をアップで大きく映し、視線の先として夢を失くした男が客席で行う愚行を切り替えして見せ、それに対する彼女の反応を、自身と男の双方への解答として、歌と表情で表現する狙いが込められている、作品テーマのひとつである"夢"に対する主人公二人の落差が一箇所に交錯して悲劇を生むクライマックスシーンも、変顔ではそもそも伝わらない。

ヒロインとソロの座を争う同部員を演じる岡本奈月の方が明らかに可愛い時点で、完全なキャスティングミスだろう。そして岡本奈月が演じる役どころも、当初は仲のいい友人として一緒に下校していたが、ソロパート選別がきっかけで距離が生まれるという関係変化はいいとしても、彼女がそれに対してどう考えていたのかがあまりに描写不足なため不明瞭で、ヒロインが復帰した際に唐突に憎まれ役的なセリフを言い、その事がその場かぎりに終わって後に続かず、結局最後は都合よく消えてオシマイでは、キャラクターとしての立ち位置も描写も、あまりに中途半端に尽きる。当然ながら、ヒロインが彼女に対しどう考え心情的にどう決着づけるのかも中途半端に終わるため、主人公二人の出自によるネガティブ思考というギミックも、物語の必然として活かされきったとは思えない。

その、二人の出自が明らかになっていく展開も、あまりに唐突すぎ、作為臭さばかりが前に出てしまうのは問題だ。一応は、「だから鉄砲玉に」「だからソロになれない」と自虐的になるシンクロを見せようとしているが、構図として成功しているとは感じられない。

だが、この種の題材を大きく取り上げた作品の常として、やたらと「歴史認識が〜」「強制連行が〜」などと、完全に物語から脱線した押し付けがましいプロパガンダとはならず、むしろ逆に、出自やコンプレックスを自分が駄目な事の言い訳に利用している主人公達の思いを、それは単なる逃避であると言い切り、自分が良くなるためには何にこだわるべきかと告げる方向性は、映画に偏向政治思想を持ち込まない姿勢を素直に評価出来る。

昼間から飲んだくれている親父を印象付けたり、ヤクザを人間のクズとして美化せず愚かしく描くなども同様に、出来はともかく"現実"を描こうとする、作り手の矜持が強く感じ取れるものだ。

そうして"差別"という要素を綺麗事として用いないながら、実際に監督自身が自分の娘をエコヒイキしているのが本作なのであって、この起用も、現実として人間は決して平等ではないのだから、拗ねたり嫉妬しても仕方ないのだとの、痛烈なメッセージと受け取る事も可能だ。

ファーストシーン、チンピラ役のあまりに陳腐な演技、演出にクラクラさせられながらも、カバンが海に落ちた後に男がどうするか、との展開では少し斜め上の意表を突いて、ヒロインの戸惑いや驚きと観客のそれを同期させようとする狙いは少なからず成功しているだろうが、チンピラと男が仲間である事を、観客としていつ認識すればいいのかの、決め手となる段が不明瞭なため、作劇の狙いが絞りきれていないと感じられるのは問題。

狭い路地や裏道、坂道を好んで設定し構図を決めているのは、これまでと同様であり監督の好みによるものだろうが、どうにも大林信彦のデッドコピー臭が感じられ、独自の雰囲気を出せているとは思えない。一方、主人公二人の"距離感"や"格差・落差"を視覚的に表現する事を意図した、横並びのツーショット構図の多用は効果的で、坂道や立ち座りを絡めて二人の心情や関係性を観客に伝える事に成功していると言える。

本来伝えたかったもの、描きたかったものは確かに感じ取れるが、監督の親バカに起因する様々な破綻や齟齬がその魅力を大きく減じてしまっている、残念な一作。逆に言えば、その点を慮って観れば、見るべきところは多々あるのだが。

蛇足:
柴俊夫、高橋英樹、黒澤年雄、松本幸四郎、ビートたけしらの娘達の様に、父親に似てしまったからビジュアルに問題がある七光り娘は大勢いるが、母親に似ているのに残念というのは珍しくはないか。少なくとも鼻が父親に似なかったのは幸い。

巨乳熟女かたせ梨乃のエロフェロモンに定年はないのだろうか。



tsubuanco at 17:14│Comments(0)TrackBack(2)clip!映画 

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